今遊んでも面白い
2016年春にプレイしました。
プレイしてはじめにまずなんといっても、タイトル画面に惹き込まれました。
薄暗い中に仄かに光る古いパソコンの画面、明るいようでどこか不気味な電子音の赤鼻のトナカイ。
どんなストーリーなのか予想もつかないながらも不吉な予感を抱かせる雰囲気がたまりません。
作品についてはとにかく”鬼畜”であるというだけで、詳しいことは知らずに遊んでいました。
ですが、はじめのうちは助教授の主人公とその教え子のいたって平凡な和気藹々としたシーンが続き、ここから本当にそんな鬼畜展開になるのか…?と半信半疑のまま進めました。
しかし事態は急展開、いきなりEDENという得体の知れない集団に訳のわからないままに巻き込まれ、何もできないままヒロインたちは蹂躙されていく。放心したままエンドを迎え、二週目、三週目とプレイしてもEDENは日常を当たり前のように壊していく。気づけば続きを読もうとクリックする手が止まりませんでした。
16年前の作品で当時のインターネットが大きく関わる作風ですが、作中のサイトデザイン等に懐かしさを覚えつつも新鮮に恐怖感を味わいながら楽しめました。
作中サイトの操作やBGMの使い方など、演出が良いですね。
それと葵役の北都南さんの演技が素晴らしかったです。
メインヒロインの葵が、お嬢様ながらも奇をてらわない普通の恋する女の子なのがとても可愛らしいです。
そんな彼女にも無意識にしたたかな面があったり、他のヒロインも主人公に見せないような内面があったりと、EDENという悪役以外にも人間の後ろ暗さがあるのが面白いです。
ヒロイン視点で主人公との思考のすれ違いやEDENに貶められる過程が分かるのも、よい。
紫苑について、一週目から彼が怪しいとは思っていましたが、進めて分かる彼の背景には驚きました。黒幕である紫苑がトリガーを引くことによって主人公の佐伯は苦しめられましたが、姉(兄)へのコンプレックスであったり、常識的な面とぶっとんだ思考と行動力のある面を合わせ持っていたり、ルートによっては愛した葵がEDENに人格を変えられてしまったことで愛想を尽かしたり、結構似た者同士なのではないかと思いました。倒錯しまくりの水代姉弟丼ルート好きです。
時代的に難しかったのかもしれませんが、紫苑が葵を奴隷にすることに成功したその後ももっと見たかったですね。
また、EDENが良い所の何一つない最後まで圧倒的な悪役なのが個人的にとても好みです。
ヒロイン達はEDENが関わらないEXTRAルートでしか幸せになれず、EDENが動き出したらもうどうしようもない無力感がいいですね。
本編の葵がEDENに拐われ、あの時葵と絡めた手を離さず家に呼んでいれば…!とバッドエンドに終わった次の周回で、葵を家に呼ぶ選択肢が増えてこれで救える!と進めて結局だめだったのにはもう笑ってしまいました。
そんな風に非常に楽しめたのですが、一人称ミスなどの脱字誤字が多いこと、ローシュタインの回廊の実験を行ったメンバーが次々と死亡したことの謎の未解決、主人公の元婚約者について意味深に触れておきながら殆ど語られていないことなど、気になることは多々あります。脱字誤字以外は敢えての演出かもしれませんが、正直やや消化不良です。
自販機でホットコーヒーを選んで買っていたキャラが後にコーヒーが苦手だと語っていたりして、設定について大きな破綻はないものの細かい綻びが気になります…。ゲームシステムも古いものなので快適とは言えません。
そういった細かい気になる部分もあるものの、総合的に大好きな作品です。作品を取り巻く冬の雰囲気が素敵です。クリスマスイブに再び遊びたいですね。