キャラゲーだけでなくシナリオも楽しめた、ぶるくす以来の良作。
システム面は大満足。ころころとヒロインたちの表情が変わるいつものシステムもさることながら、今回から導入されたお気に入りボイスシステムが非常に仕事をしている。
OPの動画もいつもよりも力が入っているような感じも受けた。川上君と前田さんっぽい描写もあり、一周してからOPを見ると改めて知ることのできる側面もあった。笑顔を見せながら銃を構える寧々さんに撃たれたいと思ったのは他にもいるはず。このシーンで寧々さんが笑顔で泣いていたりしたらそれは物語の核心につくようなOPに変化するのかなぁとか考えたりした。
他人の感情が味覚を通じて感じてしまうため、できるだけ他人と関わらないように過ごしてきた主人公は心に穴が開いた状態になっていて、その穴を塞ぐように今まで寧々が集めてきた心の欠片を吸収してしまう。その吸収してしまった欠片を取り戻すためにその「心の穴」を塞ぐべく主人公とヒロインが奔走、その中で恋をしていくというのが大きな流れである。以下ゲームをプレイしながら書き留めた感想及び√終了後の総括を後述として書いている。
めぐる
主人公ヒロイン共に成長していくのがよく伺えた。初デートの時に能力に依存しまくって空回りしまくる主人公に残念さを感じたが後で能力について回収されてしかもそれが話の根幹になってきたのでまぁいっかという感じ。めぐるの親友の話はつい涙腺が緩んだ。アイルノーツにも主人公の元教え子を頑張って探して再開を果たすという話があったが(シャーリィ)それをちょっと改変してあと涙を誘うような展開にした感じか。上手い契約という設定の使い方だった。
めぐる√なのにめぐるがハンマーでバゴンバゴンバゴンバゴンされて銃でバンバン撃たれるのはどうなの?って感じはしましたが。暴走赤裸々発言は良かったですね。最後の展開は全√同じなのかな?
もうちょっと親友についての描写を付き合った後にも入れても良いのではないか?とも思ったがあえて入れないことで過去の失敗・トラウマから脱却・成長したという雰囲気を醸し出しているような気がする。まぁ見ようによっては薄情みたいな感じに捉えられなくもないがもしかしたら魔法の一環なのかもしれない(ということにしておく)。
憧子
海道がイケメン男前っぷりをいきなり発揮する。肥後さんは相談者Cのまま。
憧子のシーンのボイスは独特のエロさがある。遥そらと対極の位置にある感じ。ただ長いセリフには空隙が多くて(本当に感じてるのかな?)と少し不安になる。
めぐる√をやった後だと先輩がもの忘れっぽいところがしばしば親友の話と絡んで引っかかった。日記をつける辺りで一週間フレンズ。を思い出した。
過去を乗り越えていくっていうのがこのゲームのテーマになっているのかな?機械的に、そして最低限度の動きしかしない先輩を見続ける主人公の心が壊れそう。
アルプの時の記憶が抜けた後の先輩可愛すぎない??????
進路について何も触れられていなかったがまぁそういうお話なのかな。主人公の小さな魔法の使い道がめぐる√とは異なった使い方をされていたので他の√も違うんだろうなと気になっている。
アフターストーリーでも先輩についての描写はあんまりなく、主婦っぽいことをやってる程度しかわからない。結婚結婚言ってるんだからもうちょっと他に日常の描写があってもいいんじゃないか?と思った。
展開面に関しても、主人公の能力を心の壁をぶち壊すところで使い切るところで、なんかちょっと無理な展開があるなぁと感じた。
紬
見た目からは計り知れないその包容力が他の√と一線を画していてつい笑った。主人公の欠片の回収がこの√の方法でうまくいってしまったり紬の願い事がちょっとアレだったのはそういうコメディ調のような√にしたかったからなのだろうか?というか6章付近(遊園地デート前)、主人公の能力の描写が一切と言っていいほど無いのは正直ちょっと微妙な感じがした。複数ライターだからなんだろうけど。
付き合っていないのにデートというのも不思議な話ではあるが。ドチャ可愛いぞ紬だがお前ら吐かないでくれ。
挿入してから35クリック。この√の主人公はちょっと早漏らしい。
8章あたりからアカギの(人化した後の)成長が描かれそう。と思ったがそうではなく。人化直前まで行って人間的な感情を手にした為に生じた、人間としては未熟(つまり子供のような、素直になれない)だがそれでも成長したことによって初めて生じた葛藤のようなものをアカギが感じ、そして結局は紬(あと一応主人公)のために自らを犠牲にするというアカギの成長に、後半は主眼が置かれていた。
この√のメインは能力の使い方ではなく、新しく能力を獲得あるいは相殺してその結果生じた(主人公にとっての)非日常から、日常生活のなかでのありがたみを再確認するというシナリオになっている気がする。話の内容は章を追うごとにちょっとずつ重くなっていって、でアフターストーリーまで入れて物語が完結している、と感じた。少なくとも本編の終わり方は前の2√とは異なっていると感じた。
和奏
今までは軽く流れていたライブまでの練習に焦点があてられている。和奏は主人公の元クラスメイトだったが、仲が良いわけではなかったので幼馴染ということにはならなくて少し残念な感じがした。ボーイッシュな子がキスをせがむ様子は非常にそそるものがある。
滅茶苦茶キスをしたのになぜ主人公から告白されるのを避けているのかすっごい気になる。紬√とは対照的に、このような描写の時に主人公の能力のことが触れられていた。
まさかのライブムービーが流れてテンションが上がったんだぞいと思った直後公開告白でフラれる主人公が面白すぎる。ブレイブマン。
やっぱり恋の力ってすごいって思わせる√だった。いつものゆずみたいな√で安心。
寧々
共通で寧々のフラグをたてるところから可愛すぎる。反則。発情という設定に悩まされる様子をハイライトの亡くなった目を使って表現することでシリアス調から外しているように思えた。事あるごとに主人公の制服の裾を引っ張る仕草に小動物性を感じてたまらない。
先生は普通に主人公に寧々さんのお見舞いに行かせるが一人暮らしの女の元に男1人を寄越すことに何も疑問を抱かなかったのだろうか…?
好きな子はいじめたくなるという心理が働くみたいだがこの√の主人公はまさにそれである。
海道の恋愛はアイルノーツのテーマを彷彿とさせるものがあったが、告白しないところ、佳苗ちゃんのセリフから考えるにアイルノーツで表現できなかった部分を表現している気がした。作者自身そこらへんの話の進め方に不満があったのだろうか。
お悩み相談をしていく中で主人公が寧々さんに恋愛感情を持っていることを自覚していくお話。てか海道イケメンすぎるんだよな顔も性格も。
アンケートを書いているときに寧々さんと目が合うのは素晴らしい描写だった。そのまま海道の後押しや佳苗ちゃんの言葉があってか告白をする主人公には共感が持てた。寧々さんの応答も、普段軽く流すのと同じような日常的な反応で返すことによって平常心のようなものを保とうとしていたように表現したのは良いと思ったが、「え? なんですか?」は寧々さんが無意識に使っている言葉であり、主人公の告白シーンで2回それを連呼させたということから以前にもあった「え? なんですか?」が主人公(的)補正というよりも寧々さんが意図して行っているように見えてしまうのでちょっとだけ残念ではある。まぁ表現としてはかなり好きな方だったし別に気にならないというか意図的に寧々さんがすることもあると考えることもできるのでまぁ大丈夫だろう。
他のルートに比べると早めにシーンが来たので、付き合う前と付き合い始めた後で同じくらいのボリュームがありそうだなと期待できる。
乙女だ。嫉妬だ。寧々さんに嫉妬してもらえるとかこれは主人公大変ですね。事あるごとに寧々さんの子供らしさというかギャップが観測できるので最高ですね。憧子先輩√では寧々が学園内でキスするのをやめるように主人公に言っていたがこのルートでは積極的に(発情を抑えるという目的で)している。
付き合う前に寧々の願いである「離婚をなかったことにしたい」(正確には「離婚をなかったことにして、喧嘩をしない2人ともう一度やり直したい」)とうい願いを聞いた時点である程度先の展開は見えた。この部分がご都合主義になってしまうんじゃないかと少し心配したが、そこをちゃんとテーマとして、そして非常にシリアスな話として扱ってくれたので良かった。ただ、その願いがかなった後のことに関して主人公も寧々さんもあまり気にしていない(一応6-3あたりで主人公がなんとなく触れているが、寧々さんは「子供らしい願い」でまとめてしまっている)ということが実際にあり得るのだろうかとちょっと疑問だった(主人公は一度気にしたが、それを簡単にスルーして寧々に訊かなかった)。
嘘をついてごまかし通そうとするときに主人公の喜ぶことをたくさんしてくれるのすごい嬉しい。さらにその部分の演出で、「あーん」のくだりに寧々さんが前半一切頬を赤らめないため(「今までに経験したこと」、で多分夜のことを思い出してそこからは紅潮させている)、ちょっと無理してるんだろうなというのがなんとなく察せる。がんばる寧々さん。この流れがあるせいか、寧々が無意識に涙をしてしまうシーンに対しては共感してしまうものがある。
6-5七緒のボイスに1ヶ所不自然なところがある。
悲恋。少しでも一緒にいるために少し距離を置くというパラドックス。この手のものは他の作品にも見られるが、やはり相当な心の動揺がある。直後の「さよならです」という寧々のセリフも「別れ」というものを少なからず寧々が意識し、そして(深読みかもしれないが)覚悟もしている、ということを暗示しているように思えてくる。
主人公の味覚に異常が生じる(となんとなく考えられるシーン、食堂で海道と昼飯)辺りが主人公の体に異変が起きる伏線なのかな?と思ったがそんなことはなかった。このルートにおける憧子先輩の声は雰囲気を壊してしまう感じがして少しキツイ。ここから泣きっぱなし。秋田さんの誘いを断ったりすることから、これは寧々がいなくなった後の主人公たちの世界線の話の模様。
主人公が「もう終わりにしよう」と誤解する余地をもたせて言った時の寧々の反応から彼女なりの覚悟が伺えたが、両者が自分の気持ちに嘘をつけなくなり、短くも濃い恋人生活を選ぶことにしたことで、本物の愛を確かめることが出来た。最初(で最後)のデートでは寧々らしいデートであり、精いっぱい楽しもうとする空気、そして、その後の部室での笑顔での別れは非常に感涙した。寧々が消え、彼女に関する記憶及び出来事の改竄が行われても感覚が残っているというのはよくある話だったが、プリクラをみて胸が苦しくなる描写はやはりこうつらいものがあった。もう笑ってプリクラを撮れない。
無理な展開もなく、ありのままの現実を受け入れる、という形でありよかった。
RESTART後
寧々が記憶を持ってタイムリープし、そのまま成長していったときの世界線での話。
本編で主人公が「出会えば好きになる」と言っていたが再会後にすぐ思い出さなかったのはご都合主義でもなくそしてそこから話がまだ展開していく感じがしてよかった。記憶が残ったまま幼いころから人生をやり直すことの辛さが半端ない。本編での心の欠片を吸収する設定を上手いこと用いたのはとても良かった。
その後はいつものゆずソフトのような恋人同士のコメディ調のバカップルストーリーが進んでいき、本編における悲恋のなかでのデートでは描けなかった成分を補給しているように思えた。ローター目隠しオナニープレイを普通だと言い張る寧々さん可愛い。それだけではなく、同じような出来事が起きる中で寧々のみんなを幸せにしたいと思うが故に上手く決められなくて心に余裕がなくなっているという一種の心の穴(穴、というより問題と言った方が良いか)に対して、今度は主人公が今まで寧々に救われてきたお返しという形で立ち向かいそして感謝するという展開は、「オカ研だから」「心の欠片を集める必要があるから」という使命感から解放され、そして主人公と寧々が(タイムリープ前も含めて)付き合い、最初に比べて成長したことが非常によく感じられてそのままエンディングに入るため、最後まで飽きが来なかった。
この√では主人公の特殊能力が消えることはなかった。和奏√でも同様消えなかったが、「今後もうまくこの能力と付き合っていこう」みたいな形で収めている。
前2作がシナリオ的にちょっとアレだったので不安だったが今回は大当たりだった。良い意味で天神乱漫に戻ったように感じた。