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mafuterさんのLOVESICK PUPPIES -僕らは恋するために生まれてきた-の長文感想

ユーザー
mafuter
ゲーム
LOVESICK PUPPIES -僕らは恋するために生まれてきた-
ブランド
COSMIC CUTE
得点
93
参照数
900

一言コメント

人間的.酷いくらい好き.

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

幼馴染ゲーときいたので購入しプレイしてみたのだが,幼馴染みだけでなく,全部のキャラクター描写が濃い.
学園で重い罪を犯した空小路織絵が「相談室」のボランティアとして,主人公監督の下1か月間働くところから始まる.この頃の空小路は非常にトゲトゲしていてクラスでも浮いた存在であったが,主人公の住んでいる家(叔父が寮として一応経営をしている)に,どうしても住みたいと言い出す.さんざん空小路に引っ掻き回される主人公であるが,幼少期の反省からその理由を尋ねることをしなかった.
ここまではたまに見る話である.特徴的だったのは,雨の日の帰り道での,家族のことで悩み,泣く空小路に対しての主人公の行動,そしてその後にかけた声であった.ただの気休めのことでなく,かといって都合の良い言葉をかけるでもなく,自分自身と向き合わせるための言葉である.カリユという犬にまつわる主人公の過去の経験がしっかりと主人公を活き活きとさせていて素晴らしかった.


「ありもしない運命の分岐点を作って,自分を責めるな」
空小路ルートでの主人公の非常にキザなセリフであったが,非常に心身震えた.主人公に触れて,また家族に近づこうと思っていた矢先の両親の離婚で気の滅入った空小路との散歩中にも主人公が言おうとしていた言葉である.カリユの件から自分を見つめなおし,そして「相談室」で働いて様々な人に出会ってこなければ出てこない,そしてそこまで設定として考えなければ書けないセリフであろう.そのシーンの直前の,主人公の「ひどいことがあったら,それを何かのせいにして遠ざけたくなる」といった趣旨のこともかなり気に入っている.


他ルートもおいおい記していく.