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lunardさんの凍京NECROの長文感想

ユーザー
lunard
ゲーム
凍京NECRO
ブランド
NitroPlus
得点
100
参照数
1351

一言コメント

よくもまあ、ここまでやってくれたもんだ。また時代が変わって楽しみ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

体験版では最初の戦闘描写しかわからないので、また息切れしてシナリオは微妙なパターンかなと思っていたが、いい意味で期待を裏切られた。

■グラフィック・・・100
戦闘を半3Dアニメーション化しながら、いつものニトロらしい作りこみの細かい2D背景・メカは健在。3Dは少なくとも後期のPS2くらいの表現力があり、違和感はあまりなくプレイできた。ただし、1920x1080で画質のオプションを最高にしてプレイするには動作環境よりも1段上のグラフィック環境が必要かもしれない。ただ、自分はAPU(A10-7850K)で余裕だったのでそこまではハイスペックはいらないと思われる。
紙芝居だったエロゲに新しい可能性が見出されたという意味で奇作かもしれない。

■シナリオ・・・100
戦闘描写も凄かったが、その分シナリオが劣化しているような印象は少なくとも全くなかった。クリアまで25hくらいなので、極端に長くもなく、短くもなく。ご都合主義的な部分はあるが、自分がそれは大好きなのもあって点数には影響してません。伏線もほぼ違和感ないレベルまで回収して、本当に良くこのレベルで纏めてくるなあと思う。trueエンドが自分的に好きなのでおまけして+10で100。

■音楽・・・100
さすがのニトロ。よくマッチしていて引き込まれます。「Assemble」と「凍京レクイエム」がお気に入り。
Assemble大好きになってしまったので100.

以下、シナリオに関してネタバレ感想・考察↓

















































以下はネタバレです。(本作以外のも入ってます)

■個別シナリオについて
書くことが多すぎるのでそれぞれのルートやtrueのエンド自体の考察は気が向いたら加筆します。
・・・イリアって誰だったっけ。

■全体シナリオについて
プレイ中は戦闘描写や熱さに引き込まれていたが、終わってみて全体を通してみれば、プロット的には「I/O」に非常に良く似ている。(trueのサブコンの「わたしは、ここにいる。」で気づいた。)
どちらも主題は「死者の復活」と「ネットに偏在する人間以外の知性の具現化・成長」。

nitro+/5pbの最近のシュタゲやCHAOS;CHILD、凍京NECROは難しいプロットを、シナリオ以外の見せ場を作って惹きつけたり、文章以外の表現方法を用いて感覚的な理解を促すことで、(ある程度根気があれば)きちんと一般人にしっくりくるレベルまで落としこみ、きちんと一段上のエンターテイメントへ昇華している。

感覚に訴えかければ、例えばひぐらしをプレイしていながら単なるスプラッターゲームだと思っているような層にもプロットに目を向けさせられるのではないかと思うし、これはエロゲに金を払うかという意味以上に、業界に与えた影響という意味で彼らの大きな功績だと思う。本作をコンシュマー向けに出すのは非常に難しいと思うが、また別の作品としてでも期待したい。

その元プロットなったであろうEver17をはじめとしたInfinityシリーズにしろ、I/Oにしろ、もう10年以上前の作品だが、プロットは秀逸なもののそれ以外の論理破綻やキャラ崩壊、寒すぎる日常パート、唐突なライターの感覚の具現化描写(制作陣がついていけなくなった?)等のせいでかなり人を選ぶゲームになってしまっていた。(つまり料理しきれていない感があり、よっぽど好きでなければ飽きるかイミフでギブアップする。他人に話しても感動を共有できないしモドカシイ。)

これらの両方の時代を知っている人間としては、その感慨も入って本作もとても楽しませて頂いている。

■ハイウェイの描写
ネットを流れるデータの可視化について一般的なイメージがついたのは攻殻機動隊からだと個人的に思っているが、本作のハイウェイではそれがより視覚的に表現されていたのが嬉しかった。自分は普段も「制限時間付きで」ソースコードを読みつつネットの情報を調べて問題解決したりする機会があるが、コン・スーのハイウェイからのハッキングや、ラストのサブコンが必死に検索して対処方法を捻り出す様子が本当にそっくりで、非常に感情移入できた。(本職のシステムエンジニアさんとかだとさらに共感できるかも)

■true(サブコン)エンド
trueはサブコンが全部持ってくの、ずるいでしょーあれ。他のキャラやサブキャラも良い意味で立ちすぎていているので、イリアが「ああ、そういえばあなたいましたね」な感じなのがかわいそうすぎる。いや、人気が微妙なサブコンの販促とか、そういうのはわかってはいる。でもデモべのころからああいう良いご都合主義とか奇跡的な展開は大好きで、さらに上述のハイウェイの描写が自分の感覚にハマっていたので、すっかり気に入ってAssembleずっとラップで聴いてます。