妖精チョコを気に入るか否か。それが評価を二分する。気に入ってさえしまえば、こんな良いシナリオはない。
主人公たちが、恋愛に自分なりの理屈を持って真剣に臨むさまは、好感が持てる。
シナリオ上、主人公の性格が優柔不断なのは仕方ないにしても、共通パートの青臭過ぎる展開と意味不明なアタックチャンスシステム、もう少しブラッシュアップできそうな文章の冗長さ。こうしてあげつらってみると欠点は多い。
しかしそれらも、チョコの存在をそばに感じることさえ出来れば、ほとんど気にならない。
自称レディのやんちゃで可愛らしい妖精と共に暮らす。少々やんちゃの度が過ぎるのが玉にキズだけど、それすらも愛おしい。そんな子供に、何が悪いのか躾け、諭してあげるのだ。
ヒロインたちと交流していくなかで、時に彼女は、言葉の意味を教えろとねだってくる。夢とは、絆とは。人間になるために必死ですがりつく妖精に、その言葉の意味を教える、いや、一緒になって考える。そして一緒に成長していく。
彼女の悲痛な泣き声に視界が滲んだのは、ままならない人間の哀しさを感じたからかもしれない。彼女との別れに涙が零れたのは、他愛ないケンカがもう出来なくなる淋しさを感じたからかもしれない。消えた彼女に悪態をつくと、ますます溢れて止まらなかった。
それでも彼女は帰ってきた。人間になって。みんなから貰った思いを、その小さな胸いっぱいに抱えて。理屈なんて野暮なことは言わない。彼女が帰ってきた。ただ、それが嬉しい。こんなにもあったかい気持ちにさせてくれたのは、紛れもなくチョコなのだから。