なんでしょうねこれは・・・
ちょっと有り得ない出来だと思います。
自分の予想とシナリオの照合よりも、作者が提示する芸術にしか興味が無かったので、前編終了後、すぐに読みましたが、暇潰し編からは全く想像できないクオリティでした。
予想というものをやっていなかったので、驚きの連続でした。w
前編をやる前に、ダルい設定を延々と解説される下手テキストで構成されるゲームをやっていたので、このゲームのテキストの洗練され具合は最高に心地よかった。(まあ誤字はね・・・駄目ですけど)
シナリオも、自分なりの予想が無かったせいで(貧困な予想は一応ありました)、綿流し編の本編として読む事が出来、真シナリオとして一区切りの完結を見せてもらい、最高に満足です。
それにしても、一編の文章の中で様々な娯楽を入れつつ、ここまで完成させる事が出来るものなのでしょうか。
読み手の価値観の揺さぶり、読み手の願望への対応、一文、一文が高度なコミュニケーションとして成功の連続です。(この印象は私だけではないと思います)
一連の要素を頭の中で整理して文章に落とす、その後の推考は一プレイヤーにはわかりませんが、鮮度を保ちつつ読み物に仕上げるわけでしょう・・・。
自分は本読みなので、推理小説は勿論、著名な作品、受賞作品、海外の読み物も幅広く守備範囲ですが、この作品には、何の賞も贈られないのでしょうか?w
作者は過去に影響を受けたものとして「かまいたちの夜」などを挙げてますが、私はS・キングなどの作品に見られる、主人公の感情をしつこく追っていく心理描写や、人外の力に名前を与えて象徴化する手法を連想しました。
ひぐらしが気に入った人はキングの作品もオススメしますが、個人的な尺度ではひぐらしの方が上です。
それだけ、この作品のテキスト、シナリオの完成度には驚かされました。
賞をとりまくっている作家の作品と比べても、ここまでの娯楽は経験した事がなかった。
この目明し編では、立ち絵もすでに読み手の頭の中にあるものに頼っていて、場面転換を表す背景の差し替え、タイミングの良い音楽の挿入といったもの以外、前作よりさらに小説に近付いている気がしました。
立ち絵の登場が減っています。
テレビゲームならファミコンに例えられると思いますが、ジャンルとしての構成スキルが低いほど、集めてくるパーツの配置に執着し、全てに目が行き届くのだと思います。
この作品は、ミニマルな作品の典型的な成功例でしょう。
前作までも、立ち絵も造形はともかく切り替えのタイミングや利用の仕方は良かったです。
この作品は今から文章で食べるつもりの人がやるには酷ですね。w
その多くがモーツアルトを知ったサリエリになるでしょう。
まあ、それにはサリエリ級の才能が必要ですけど。
褒めすぎた気がしますが、残り3編、楽しみに読ませてもらいます。
ここまでは「真」の表現作品、生まれるべくして生まれ出た芸術だったので、本物へ贈る100点を献上しておきます。