コミュニケーション能力欠如者達のドタバタ矯正物語
惜しい! なにかが足りない! そうではなく、何かが多すぎたか!?
そんな非常に惜しかった感が漂う作品
良作とは思う、しかし名作とは思えない 何処に問題が在ったのか
具体的には、家族の良さ といったモノを感じさせるシーンが短かったのではと思う
このゲームは長い、共通パートも個別パートも長い イベントが多いのだ
誰かが問題を起こす→円ウジウジする→誰かが励ます→円行動・解決・成長→誰かが問題を(略
そんなループを数回繰り返し共通パートが終わる 家族としての意識が芽生える
そして個別パートに、つまり円が誰か1人に嫁を選ぶということ、
言い換えれば他を捨てるってこと
この共通パートと個別パートの間に家族の良さを感じさせるシーンがもっと必要だったと思う
一応全員で遊園地に行くイベントも在るが、誰かを選ばなくてはならなかったし
その相手と遊ぶ描写すら殆どカットされていた
円が恐れる事は人とのコミュニケーションや孤独ではない、捨てられる事、そして誰かを捨てる事だ
このゲームでは終始『選ぶ事』と『社会性の獲得』に焦点を当ててきた
円は捨てられる悲しみを知っている そして選ぶことは他を捨てる事と理解してる
だからこそ終盤、彼は悩み苦しむ 家族と思える人を捨てるという現実に
ただ、個であったシーンが長く、家族としてのシーンが少ないため
プレイヤー側は選ぶ事に躊躇いが全く持って少ない
円の苦悩とプレイヤーの心理が噛み合っていない
人が何故、虚構である物語を見聞きして涙を流し、喜び、悲しみ、怒りを覚えるのか
それは端的にいって感情移入の成せる業
心を動かす作品はそれを上手く自然に観る者に対して行なっているのでしょう
名作・傑作としての構成要素の一つであり、肝となる資質なのかもしれません
プレイヤー側に円への感情移入をさせる為の手として、家族であるシーンが、
もっと家族をしてて欲しい、と思わせる場面がもっと在れば そう思います
個々のキャラは良いんだから、まったりとした日常シーンを数日描くだけでも違ったでしょうね
蛇足的な事も在った ななのえちぃシーンは要らない
小春やぷっちのえちぃシーンはサービスの一つにしても、ななはマイナス
永遠子とのエッチも異常 姉か母だと思ってる相手を普通に抱けるかいな?
そして最大の欠点は最後のハーレムエンド(トゥルーエンドかも?)
『選ぶ事』の獲得が円の成長の証の一つだ、単に嫁を1人に選ぶだけではない
自分の人生の選択肢を自分で責任を持って選び、主体的に生きるって事
作り手が今作に込めた想いの一つにも思えました
それなのに、ハーレムエンドつまり『選ばなかった』ってどういうことよ
あまりにも画竜点睛を欠く、というか最後の最後で根底から作品をひっくり返した感がある
エロゲだし気にすんな エロゲにそこまで求めんなよ と言われそうだがどうしても気になってしまう
真摯に作ってあっただけに余計そう思ってしまうんでしょうね
総評
丁寧に作ってはいる
本作のテーマは、コミュニケーション能力欠如者達の矯正物語と謂った処か
そのテーマをしっかりと、最後まで描いてはいる
作中、円が言った【人の間に生きている、文字通り『人間』だという事】
彼らは人間として生きる道を選び手に入れた その過程もちゃんと描いている
ただ、人を選ぶのは間違い無い 主人公円を許容できるか、できないかで評価は大きく変わるでしょう
デビュー作でいきなり難しいテーマ、珍しい主人公、ぶっとんだヒロインの設定等
もっと良くあるエロゲ、安全パイ的な、売れそうなエロゲに走らなかったのは評価できます
今後が楽しみなブランドっす
結局、2007年のエロゲで最も印象に残った作品になりました、私的に
良くも悪くも円君の力が大きかったかと
加筆・修正 2008.01.31