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lifefinishさんのハッピーライヴ ショウアップ!の長文感想

ユーザー
lifefinish
ゲーム
ハッピーライヴ ショウアップ!
ブランド
FAVORITE
得点
80
参照数
525

一言コメント

全√でキャラの可愛さを堪能出来る素晴らしい萌えゲーでした。ライヴというものを通してのキャラの成長や育まれる友情などもこの作品の見所です。……という無難な感想ばかり出てきますが、僕個人としてはかなり好きなゲームで言いたいことが纏まらないです。長文感想はルー、ペチカ、ソフィアについて少し。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まさにNew Generation! 素晴らしい作品でした。
それでも、やはり人と人との繋がりに重点を置くというシナリオの根底にあるものはしっかり受け継がれていたと思います。
高山大河さん……誰かの別名義かな? この方の作品は今後も追っていけたらなと思いました。
共通√で各キャラの個性や関係性を明確にし、個別√でそのキャラの掘り下げをしていくという基本的なことがしっかり出来ており、キャラの可愛さが際立つようなシナリオ運びがベテランライターのそれで驚きました。
SD担当のミズタマさんといい、いったいどこからこのような才能を発掘してくるのか……。
このサイトの感想をざっと流し見て、ソフィア√で感動して泣き出した僕が明らかに少数派なのは納得がいかないですし、この作品の良さを伝えられない自分の文章構成力の低さと語彙の少なさがただただ恨めしいばかりです……。


とりあえず一言感想で挙げた3キャラについて雑に思ったことを羅列。



・ルー
発達障害の特徴をよく捉えてるなぁという感想をTwitterでフォロワーさんが言っていて、まさにその通りだなぁと。
告白されてわけわかんなくなってるところとか、皆と足並みが揃わないこと(皆がそろってないのに勝手にご飯食べ始めたり)とか、まさにって感じです。
でも、このゲームの主人公、理解のある彼くんだから問題ないんですよね。
共通や他のヒロインの√では、いつも元気で空気を読まないムードメーカーとしていい役割を果たしているし本当によくできたキャラかと。
言葉を話せるようになるまでが遅かった話とか、孤児であり自分のルーツが分からないという不安と両親への期待に答えるために始めた芸で自分が楽しむことが目的にすり替わっていたと気づいた罪悪感で感情がぐちゃぐちゃになるところとか、マジで普通に生きてたら考えつかないし、キャラの設定がすっげぇよく考えられてるなぁって思いました。
あと、実は性格が正反対なルーとクラリスの関係性がなんかニヤニヤしちゃうぐらい好きですね。友達って色んな形があるんだなって。



・ペチカ
ソフィアを除くと個別で一番面白かった√です。
このキャラ、CVが僕の好きな声優さんの別名義なんですよね。きゃんきゃんうるさい演技をさせたら右に出る者はいない。……褒めてますよ?
閑話休題。
というかこのキャラ正直、主人公と劇的な出会いをしてるって意味では一番フラグ的に美味しいとこ持ってってるんですよね。ファーストインプレッションが泣いてる時にぶつかるとか、最後に勝つヒロインみたいじゃん。え、知らん?
共通で既に話は出ていますが、彼女の拠り所だった演劇部が解散し友達と大喧嘩して絶縁、ぼっちになって毎日後悔して泣いていたというなんとも可哀想なヒロインです。
自業自得感が強いけど、その友達も含めてお互いが性格上熱くなってしまうとパッと止まらないタイプなので遅かれ早かれどこかで大喧嘩していたのでは? と思う。
とまぁ、悪い言い方をすると口が悪くて短気でとどうしようもないキャラで普通なら嫌いになってるところなのですが、
内面が凄くナイーブで人間臭いっていうか、妙にリアリティがあって嫌いにはなれなかったんですよね。
共通でも個別でもこのキャラは他のヒロインに気を遣っててミスをフォローしたり、なんなら自分がいらぬ気を回したって気づいたらすぐに謝ったりフォローしたりできるいい子なんですよ。
そのくせ自分はチビで貧相な身体だから魅力はないだろうって感じで自己評価が低い。なんならライヴのチーム内でも自分は演技の才能はないって分かってて劣等感に苛まれてもおかしくないくせに、頼まれたからって衣装作りまでしちゃうし……その衣装作りの才能に気づいてないし……。
友達に会いに行くってなって、ずっとドキドキしてるとことか、いざ会ったら全然本音で話せなくて落ち込んじゃうとことか。
でもずっと謝りたくて自分の言った最低な言葉をずっと後悔して、ずっとずっとそのことで悪夢とか見ちゃってて……。

    ――守護らなきゃ、俺が――

ってなりそうでした。まぁ、なってませんが……。(でもやっぱり好きです。)
主人公がペチカの代わりに話をつけにいくシーン、ホントに大好きなんですよね。僕もあれぐらい人に想われたいわ。(乙女発言)
ずべこべのくだりも好き。赤ちゃん言葉で主人公を煽るところめっちゃ好き。(汽笛のくだりで)
あと……酒飲んでダル絡みしてる途中でなし崩し的に告白されちゃって素に戻るのとか、めっちゃエモかった。
√外でこのキャラの掘り下げがあったのもここ好きポイントの一つですね。ソフィア√で主人公の相談に乗るシーンとか特に。
「何者かになりたい」「何者にもなれない人生なんて、何の価値もないって、割と本気で思い込んでた」「誰にも知られていない、何者でもない人たちも、皆、平凡なりにそれぞれ楽しく生きてるってことが分かった」「そう思ったら、楽になった」
これを見て思うわけですよ、あぁこの子も僕たちと同じだって。もうずっと共感のいいねしちゃう。
あと、全部が全部筒抜けになってしまうソフィア√と対比になってるのか知らないですけど、この√だと主人公はペチカが友達に吐いた軽蔑されてもおかしくない暴言を追求しないし、ペチカは主人公が魔法使いだったころの過去を深く追求しないってお互いがちゃんと決めててそれを実行してるのが本当にエモい。そのくせこいつらお互いの気持ちが通じあってますからね。ちゃんと越えちゃいけないラインみたいなのがはっきりされててそれを守るカップルは長続きするってそれ一番言われてるから。
カップリング厨的にはこのゲームのベストカップルです。



・ソフィア
実質グランド√ですね。めちゃくちゃ長かった気がする。
元引きこもりの引っ込み思案だけど頑張りやな魔法初心者のちょっぴりオタクな女の子。(巨乳!!!)
ライヴ(全国大会)後の話がガッツリ描かれるので実質一人だけアフターだしやっぱセンターヒロインなんだな~って。
この子の√は(主人公の内面描写の多さや過去の清算的な意味合いから)主人公の√でもあるので、力の入り具合が段違いでした。
ソフィアと主人公はユニゾン現象で互いのことを分かりきっているが故に、お互いがその認識をすり合わせないままですれ違っていったというのが深いなと思いました。
その中で、お互いの認識や想いがずれているところから、話し合いなどを通してお互いが通じ合っていく過程を理屈(言葉通りの意味)と感情(好き嫌いや観念など)の両方から紐解いていったのが素晴らしいです。
これはこうだからこうだ。だからこうでなければならない。みたいな考えを理屈で理解させるか感情で理解させるか、僕はどちらも大切だと思っています。特にそこに色んな人が繋がり関わっているのならば。
ただの萌えゲーだと思って始めた作品で、何かに挫折した人間がもう一度立ち上がれるような、将来に迷う思春期の少年少女への未来への賛歌を見せられて、年甲斐もなく感動しちゃいました。



人と人との繋がりを重点に置き、挫折した人間がもう一度立ち上がり未来に向かうという使い古されたテーマは、有名なところでいうとまさにefと重なる部分もあり、その点だけで見てもソフィア√だけは別格だと思いました。
いつものフェイバリットじゃない……と敬遠せずに色んな人に手に取ってもらいたい作品でした。