ErogameScape -エロゲー批評空間-

lievremanさんの蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2 Ultimate Editionの長文感想

ユーザー
lievreman
ゲーム
蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2 Ultimate Edition
ブランド
sprite
得点
90
参照数
215

一言コメント

「蒼の彼方のフォーリズム」という作品に少しでも心を動かされた経験があるのなら、EXTRA2は間違いなくプレイする価値がある

長文感想

『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』は、みさき√の物語をより深く掘り下げたファン必見の作品であり、本編で描ききれなかった部分を丁寧に補完しつつ、みさきというキャラクターの魅力と成長を余すことなく描いている。特に、彼女の葛藤と再起、そしてそれを支える主人公や周囲の仲間たちとの関係性は、本編以上にドラマチックかつ熱量の高い展開になっており、感情移入しやすい構成になっているのが印象的だった。

本編では、みさきのルートにやや物足りなさを感じたユーザーも少なくないと思うが、EXTRA2ではその不満を払拭するかのように、彼女の過去や内面の弱さ、そして本気でフライングサーカスに向き合う姿勢がしっかりと描かれており、非常に満足度の高い読後感を得られた。とくに終盤の展開は、王道ながらも胸が熱くなる展開が連続し、スポ根的な熱さと青春の煌めきが絶妙に融合していた。

演出やシナリオの構成も丁寧で、テンポよく読み進められる一方、重要なシーンではしっかりと間を取って感情を溜めさせる工夫もされており、読み手の心に残るシーンが随所にある。また、既存のキャラクターたちの掛け合いやチームとの関わり方も、過去作の積み重ねがあるからこそより深く味わえる内容となっており、シリーズファンにとってはたまらない構成だった。

その一方で、EXTRA3やZweidといった続編の企画が中止されていることは非常に残念であり、この高まりきった感情をどこにぶつければいいのか戸惑うほどだ。このまま終わってしまうにはあまりにも惜しい完成度と可能性を感じさせるだけに、続編を望む声が多いのも納得できる。

個人的には、蒼の彼方のフォーリズム本編をプレイする際には、みさきルートを最後に選び、そのままEXTRA2へと進むことで、彼女の物語により一層の深みと連続性を持たせることができると思う。そうすることで、本編で芽生えた感情や課題がEXTRA2でしっかりと昇華され、物語としてもキャラクターとしても完成された印象を受けるはずだ。

また、みさきというキャラクターは、明るく元気な表の顔の裏に、自分の限界や挫折への恐れといった繊細な一面を持っている。そのギャップがEXTRA2では丁寧に描かれており、ただの明るいヒロインではない、ひとりの等身大の少女として強く印象に残る。彼女が再び空を飛ぶ決意をするまでの流れは、何度も読み返したくなるほど感動的で、読み終えた後には大きな余韻と満足感が残った。

全体として、EXTRA2は単なるファンディスクという枠にとどまらず、本編の一部として組み込んでも違和感のない完成度を持った作品だと感じる。むしろ、これがなければみさき√は不完全だったと言っても過言ではない。シリーズを通して彼女を見守ってきたからこそ味わえる感動があり、それがこの作品の最大の魅力となっている。

もし「蒼の彼方のフォーリズム」という作品に少しでも心を動かされた経験があるのなら、EXTRA2は間違いなくプレイする価値がある。これほどまでにキャラクターと真摯に向き合い、丁寧に物語を紡いだエロゲは希少であり、今後も長く語り継がれていくべき一作だと思う。