「音楽とは何か」「音楽に人生を捧げるとはどういうことか」を真正面から描いた作品です。単なるバンド活動の青春物語にとどまらず、音楽を通して人間の生き方や人生観を深く掘り下げた、非常に濃密なシナリオが展開されます。まさに「音楽で生きることの苦しみと歓び」をリアルに描き切った、異色のロックノベル
「MUSICUS」は、「音楽とは何か」「音楽に人生を捧げるとはどういうことか」を真正面から描いた作品です。単なるバンド活動の青春物語にとどまらず、音楽を通して人間の生き方や人生観を深く掘り下げた、非常に濃密なシナリオが展開されます。まさに「音楽で生きることの苦しみと歓び」をリアルに描き切った、異色のロックノベルです。
物語の主人公は、医者の家系に生まれたものの、将来に対する明確な目標もなく、周囲の期待に応えるだけの人生を送ってきた青年・叶内翔。ある日、音楽活動をしている友人に誘われたことで、彼は「音楽」という未知の世界に足を踏み入れることになります。ここから始まるのは、単なるバンド活動の物語ではなく、「音楽をやる意味」「音楽で生きることの代償」「音楽が持つ狂気と救済」を深く掘り下げていく重厚なストーリーです。
本作最大の魅力は、音楽に対するリアルすぎるまでの描写です。音楽で生きていくことの現実、音楽に全てを捧げる人間の業、そして音楽が人を狂わせる一方で人を救う――これらのテーマが徹底的に描き込まれています。特に、主人公やバンドメンバーが「音楽にのめり込んでいく様子」「音楽活動を続けることで人生が壊れていく様子」はあまりにも生々しく、プレイヤーはそのリアルさに息を呑むことになります。
ヒロインたちの描写も非常に印象的です。音楽に全てを捧げることに絶望しつつも、音楽しかできない自分に苦しむ者。夢を追い続けた結果、音楽によって全てを失った者。音楽を愛するがゆえに、音楽に裏切られた者――それぞれのキャラクターが音楽に対して抱える想いが非常にリアルで、プレイヤーは彼らの苦悩に深く共感せざるを得ません。特に終盤では、音楽への情熱と人間としての幸せの狭間で揺れ動くキャラクターたちの姿が、強烈な感情体験を生み出します。
また、音楽の描写も圧巻です。作中では実際にバンド楽曲が流れる場面があり、そのクオリティの高さに驚かされます。特にライブシーンでは、キャラクターたちの感情が音楽に乗せられ、プレイヤー自身もその熱狂に巻き込まれるような感覚を味わいます。まさに「音楽を体験するビジュアルノベル」と言っても過言ではありません。
そして本作の核心とも言えるテーマは、「音楽で生きることの覚悟と苦しみ」です。バンド活動を通して、自分の生き方を模索し、夢と現実の狭間で苦しみ続ける主人公たち。その中で「音楽は誰のためにあるのか」「音楽に人生を賭ける価値はあるのか」といった問いが何度も投げかけられます。プレイヤーはその問いに直面するたびに、音楽に生きることのリアルな代償を痛感させられます。
特に、終盤の展開は凄まじいものがあります。音楽に取り憑かれた者、音楽を捨てた者、音楽で全てを失った者――それぞれの人生が交差し、壮絶な結末へと向かっていきます。プレイヤーは、音楽が持つ「狂気」と「救済」の両面を目の当たりにし、「音楽とは何か」という問いを突きつけられ続けます。ラストシーンに至っては、まさに「音楽に生きる者の覚悟」を描き切った圧巻のエンディングとなっており、強烈な読後感を残すことでしょう。
総じて、「MUSICUS」は音楽をテーマとしたビジュアルノベルの中でも、群を抜いて生々しく、リアルな感情体験を提供する作品です。単なる青春バンドものではなく、「音楽と人間の関係」「音楽の持つ光と影」を徹底的に描き切った本作は、プレイヤーにとって非常に重く、そして忘れがたい体験となるはずです。
「音楽とは、人生を狂わせるものか」「音楽とは、救済そのものか」――その問いに対する答えを見つけるために、ぜひ本作をプレイしてほしいと思います。間違いなく、「音楽に生きる人間のリアル」を描き切った、エロゲの金字塔と言える作品です。