ただの泣きゲーや普通の恋愛ものに留まらず、「生きること」「別れと向き合うこと」「それでも前を向くこと」といった普遍的なテーマを、優しく、時に残酷に描ききった作品。プレイ後には、温かくも少し切ない余韻が心に残り、何気ない日常のありがたさにふと気づかされる、そんな力を持った物語
『なないろリンカネーション』は、一見するとヒロインたちとのハートフルな日常やラブコメ要素が中心のエロゲに見えるが、実際は想像以上に骨太な物語と情感豊かなドラマが詰まった作品だった。人と霊の世界の狭間で揺れ動く“死”と“生”、そして“再生”をテーマに据えたシナリオは、穏やかで優しいタッチの中に、切なさや深い悲しみをしっかりと刻んでくる。
主人公は特殊な霊力を持ち、それをきっかけに祖父の跡を継いで「霊的なトラブル」を解決していくことになる。最初はコミカルな展開や個性的なキャラクターたちのやり取りに和まされるが、物語が進むにつれて、登場人物一人ひとりの過去や因縁が明らかになっていき、その重みに胸を打たれる。特にメインヒロインである琴莉ルートは、優しさと喪失、そして感動の物語として秀逸で、涙なしには語れない展開が待っている。
ビジュアル面も美しく、柔らかい色使いと温かみのあるキャラクターデザインが、作品全体の雰囲気にぴったり合っている。音楽も秀逸で、BGMは場面ごとの感情をしっかりと引き立て、エンディングまでの流れに深く浸らせてくれる。特に感動的なシーンで流れるピアノの旋律は、今でも耳に残るほど印象的だった。
加えて、ヒロインたちとの恋愛描写も丁寧に描かれており、単なる“攻略対象”ではなく、しっかりと物語を構成する重要な存在として描かれているのが好印象。それぞれのルートで異なるテーマがあり、どのルートにも明確な意味と感動が込められている。
全体として『なないろリンカネーション』は、ただの泣きゲーや普通の恋愛ものに留まらず、「生きること」「別れと向き合うこと」「それでも前を向くこと」といった普遍的なテーマを、優しく、時に残酷に描ききった作品だった。プレイ後には、温かくも少し切ない余韻が心に残り、何気ない日常のありがたさにふと気づかされる、そんな力を持った一本だ。