エロゲとしての面白さと、Key作品としての感動の両方をしっかり味わえる珠玉の作品
『リトルバスターズ!エクスタシー(EX)』は、原作の『リトルバスターズ!』をより深く掘り下げ、追加ルートとキャラクターの魅力を存分に味わえる作品である。基本的な舞台やテーマは変わらず、「友情」「青春」「成長」といったKeyらしい普遍的な感情が根底にあるが、EXではそれらに加えて、よりダークで重い展開や、倫理的な葛藤、人間の弱さと向き合う場面が増えている点が特徴だ。
特に追加された三人のヒロイン、沙耶、佳奈多、朱鷺戸のルートは、それぞれに独自の魅力とドラマを持っている。沙耶ルートはループ構造を用いたスリリングな展開で、プレイヤーに驚きと考察の余地を与える作りとなっている。一見ギャグ寄りの始まりから、死と生、記憶と後悔といった重いテーマへと着地するストーリー構成が見事で、Key作品らしい感情の振れ幅を強く感じた。
佳奈多ルートは日常の中にある孤独と救済を描き、静かな感動を与えてくれる。
朱鷺戸ルートはややシリアスなアクション要素を含みながらも、友情や信頼の意味を問いかける内容で、リトバスの世界観を壊すことなく新たな一面を見せてくれる。
また、EXは既存キャラクターのルートも細かく改修されており、特に葉留佳や鈴のルートでは演出の強化や追加シーンによって感情移入しやすくなっている。理樹という主人公の立ち位置もより明確になり、彼が仲間たちの心の支えとなり、同時に彼自身が支えられているという構造が物語をより立体的にしている。
リフレインに至るまでの積み重ねが、EXではより説得力をもって描かれており、終盤のカタルシスは本作最大の魅力の一つだろう。
総じて『リトルバスターズEX』は、原作を愛した人にとっては必携の一本であり、初見であっても青春群像劇として完成度の高い一作だと断言できる。追加ルートによって世界観が広がり、キャラクターの深みが増し、何より「リトルバスターズはやっぱり最高だ」と再確認させてくれる内容になっている。
エロゲとしての面白さと、Key作品としての感動の両方をしっかり味わえる珠玉の作品だ。