初の狂気ゲープレイデビュー作品。その分、衝撃も凄かった...あの狂気には見て魅かれるものがあった
『殻ノ少女』は、Innocent Greyが手掛けたミステリー・サスペンスアドベンチャーゲームであり、昭和30年代の日本を舞台に、連続猟奇殺人事件と人間ドラマを描いた作品です。
本作の魅力は、徹底的に作り込まれた重厚なストーリーと、プレイヤーを引き込む不気味で独特な雰囲気です。主人公である時坂玲人は、私立探偵として連続殺人事件の捜査に関わることになりますが、次々と起こる猟奇的な事件や、複雑に絡み合う人間関係が物語の緊張感を高めています。また、事件の背後にある「殻ノ少女」と呼ばれる少女・朽木冬子の存在が、物語全体に影を落とし、先の読めない展開にプレイヤーは終始惹きつけられることでしょう。
本作の特徴のひとつは、主人公が探偵であることを活かした「捜査パート」の存在です。証拠を集めたり関係者へ聞き込みを行いながら、事件解決を目指していきますが、プレイヤーの選択次第では展開が大きく変わり、バッドエンドへと直行することもあります。このシステムが、プレイヤー自身がまるで探偵になったかのような没入感を生み出しており、ゲームをより緊張感のあるものにしています。
また、本作は決して「ハッピーエンドだけの物語」ではありません。昭和の退廃的な空気感や、容赦のない残酷描写、犯人の異常性、そして救いのない展開など、プレイヤーに強烈なインパクトを残す要素が随所に散りばめられています。しかし、その中でもキャラクターたちの切ない想いや、事件の裏にある人間ドラマがしっかりと描かれており、ただの猟奇ホラーに終わらせない深みがあります。
ビジュアルや音楽面も非常に高水準で、特に背景やキャラクターデザインは美しく、作品のダークな雰囲気を際立たせています。BGMも場面ごとの不安感や緊張感を煽るものが多く、物語の重厚さをより一層際立たせています。
総じて、『殻ノ少女』は、一般的なミステリーやサスペンスADVでは物足りないと感じる方、または重厚でダークな物語が好きな方には非常に刺さる作品です。プレイ後には、心に深い余韻を残すことは間違いなく、衝撃の結末を見届けた際には、続編である『虚ノ少女』へと進まずにはいられなくなるでしょう。ミステリーADVの最高峰のひとつと言える名作です。