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lie7さんの創刻のアテリアルの長文感想

ユーザー
lie7
ゲーム
創刻のアテリアル
ブランド
エウシュリー
得点
80
参照数
2669

一言コメント

RPG→SLRGときての新しいシステムでの新作。どこに比重を置いて評価すべきか――。兎にも角にもその挑戦は満足いくものである。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一定のファンを獲得しているであろうエウシュリーの新作。
購入するユーザー、ファン層が各々何を目的で買うのかを考えたときに、まずはシステム第一であろうと思うので、そこを重点的に。

○システム的なお話

カード・ゲームと言われて何を思い出すだろうか。

コンシューマなら「カルドセプト」
ネットゲームなら「アルテイル」
アナログなら「マジック・ザ・ギャザリング」「遊戯王」

私個人がパっと浮かび、触ってきたものであり、そういった個人の経験も踏まえてカード・ゲームの醍醐味を考えたときに、
「収集」「構築」「戦略性」
の3点は外せないと思う。
レア・カードを得た喜び、強いカードを手に入れたときの興奮。
相手に合わせてデッキを組んだり、イニシアチブを獲れるようなコンボを考えたり――。
そしてバトルを開始して、運の要素も絡めながら一手一手を考えていくこと。
その3点から「創刻のアテリアル」にアプローチした時に、それらは満たされているようで満たされていない。

まず収集だが、戦いやドロップ・アイテム、錬成が主な入手手段――他にも仲間獲得時やイベント進行、周回ボーナス等々いろいろあるが――となる。
任意と既定が絡みつき、例えばガチャを回して~やパックを買って~等の対価を払っての一種のギャンブル性の要素がない点が少し残念である。
レア・カードきたー……などという高揚感は個人差はあれど無いに等しい。

次に構築という点に関して。
こちらは非常によくできていると思う。
カード・ゲームとして「強いカードばかりで組むことが必ずしも強いデッキというわけではない」という概念をきちんと受け継いでいる。
全部強いカード(高HP、高攻撃力)でデッキを組みましたーなんてした日には、きっと何1つ場に出せないままなぶり殺しである。
きちんと低コスト――必然的にレアリティの低いカード――を組み込まなければいけない点と、強いカードほど出すための下準備が必要な点は十分に考えられていたと思う。
(個人的な話だが初回プレイでコスト4以上を使った記憶がないくらいである――)

最後に戦略性についてだが、これは結局の所、どう高コストを出すか――という一点に最後は集約されるレベルになっていると思う。
敵リーダーのHPを削っていく算段なども考えるには考えるのだが、そこを必要に悩むわけでもなく――結局のところ相手の手札がどーだー、相手のカードはあれだからーうんたらに意識をほとんど向ける必要もない。
結局のところ、詰め将棋のように敵リーダーを削ったり、高コストを召喚してドヤっとするくらいである。
もちろん、一周目ならボス戦では十分に考えさせてくれるだろう(多分)
(……そんなにオート・プレイで誤魔化して進んでないはず……)
この流れで敵AIについてだが、ところどころおかしい部分あり。
ネタバレになってしまうが、奇数ダメージ無効のカードを奇数攻撃力3枚の前衛が延々殴り続けるとか……残念な部分もあり。

RPGのようなボス戦さえオートでクリア余裕とか、SRPGのようにキャラ強くして無双プレイなんて点もカード・ゲームらしく多少改善されているとは思います。

○シナリオ面について

無難な仕上がりを求めてください。
無難な文章を求めてください。
無難な展開を求めてください。
深い掘り下げなんて求めないでください。
個別ルートなんて求めないでください。
天使と悪魔で一応一度で二度おいしい2色パンぐらいの気持ちでいてください(全作と打って変わって和姦オンリーではないです)
随分俗世に溺れた悪魔が後ろの穴の心配をしますが気にしないでください。
このくらい箇条書きしておけば、よもやシナリオが楽しみで後々購入しましたなんて人はいるまい、と信じて記載しておきます。

○絵について

あれ、何かちょっとうまくなってね?
何故かそんな感じを受けました。

○で、結局のところ……

いつものエウシュリーです。
十分遊べるでしょうが、育成面は物足りない部分あり(前作で言うならマルウェン・ダブルセットでステ極めるぜ!なんて熱い育成はありません)
収集に力を注げる方歓迎(周回ボーナスがあるので多分全部のルートを攻略しないと100%には多分……)

兎にも角にも、新しい試みでここまで仕上げるのだから、十分です。
神殺しのフィナーレに最高のものを持ってきていただければ、もうそれで満足です。
早めの長文ゆえ、至らぬところは多いかと思いますが、ご了承ください。