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leonidaskunさんのルートダブル -Before Crime * After Days-の長文感想

ユーザー
leonidaskun
ゲーム
ルートダブル -Before Crime * After Days-
ブランド
イエティ
得点
100
参照数
4684

一言コメント

「ようやく人生が面白くなってきたのに、こんなところで終わりたくない」

長文感想

ルートダブルの感想を書きます。
私のブログからの引用でネタバレはありません。
ちなみに初めて100点をつけました。これまでやってきたADVの中でNo.1です。



「人は謎のカタマリだよ」

ましろんの健気さは神の領域。



ルートダブル、ようやくグランドエンドまでたどり着きました。
プレイ時間は45時間程度。
CG枚数は差分なしで149枚。ムービーは13個。

最初に言ってしまいますが・・・これまでプレイしてきたADVゲームでNo.1です。
この記事を書いたあと批評空間様にも感想をUP予定ですが
初めて100点をつける予定です。いろいろすごすぎた。

少し長くなりそうですが感想を書きます。
シナリオに触れるようなネタバレはありませんが
全く前知識なしでプレイされたい方は注意してください。



<シナリオ・テキスト・ストーリー構成>

構成に関してはネタバレになってしまう可能性があるので控えめに。
シナリオは・・・うん、すごいわこれ。
広げた風呂敷をきちんとたたむ点においてはEver17同様完璧、
しかもルートダブルではそれだけにとどまらずキャラクターの心理面にも
深く細かく掘り下げていてすごく分かりやすかったです。

分かりやすいけどクドくないバランスも非常に良かったと思います。
一部の意見では同じ内容の話を複数の視点で見るので
作業感があるという話も耳にしますが僕は全く感じませんでしたね。

僕個人としては完璧な作品よりもどこか欠けた、もしくは余分なものがある
不完全な作品の方が好きになったり印象に残ったりすることが多いのですが
ことルートダブルに関しては「ここまできっちりやるとはほんとすげーや」という
感想がまず頭の中をめぐりました。
(E17よりもR11の方が個人的に好きというのもこの辺に起因しています)

で、それはなぜかというとガッチガチに、
微に細を穿って説明しているにもかかわらず
まだまだ考察の余地がたくさんあるからだと思います。
読むたびごとに「ああ、ここもあれとつながっているんだ!」という発見が目白押しで
終盤の展開も全く飽きることがありませんでした。
(ネタバレになってしまうので詳細はまた別のところで。スミマセヌ)



「答えは、『誰も残さない』」

この台詞が表示された瞬間も相当(´;ω;`)ブワッっとなったんですが
この言葉すらも後の伏線であり、僕のプレイした順番も良かった
(ノーマルエンドを全て終わらせてからグランドをプレイ)こともあって
本当に胸が詰まりました。泣きすぎて苦しくてのどが痛い。

あとでキャラクターのところでも書きますが、
それ単体では名台詞とは言えない何気ない言葉の中に
ものすごい多くの想いが込められていて、
それが前後の文章からもにじみ出ていてもうどうしようもなく心に響くんですよね。
特にましろとサリュが激ヤバです。あと母さんもすごいw

このあたりは原案のすごさもあると思いますが
ライターの月島さんの底力を見た気分です。
実は予習がてら月島さんのラノベ「emeth」も読んでみたのですが
これを遥かにしのぐテキストへの熱のこもりっぷりには本当に脱帽でした。
(余談ですがemethは、個人的には盛り上がりどころが来るまでに
 ちょっと長いのが残念だった気がします。)

原案の中澤さんのすごさがひしひしと伝わってくるのは
やはりそのシナリオの構成です。
体験版をプレイ済みだったので製品版は√Bから始めたのですが
√Bの終盤、どうして渡瀬が記憶を失ったのかが明かされるあたりは
もう鳥肌ぞぞぞーやら涙出るやら変な声出ちゃうやらでもうおかしくなりそうでした。

そしてその後の√C開幕。
ここでも衝撃の(まさかここでこの展開が来るとは
全く予想していなかったので本当に驚きました)
新事実が判明してもううわ、うわああああ。
√Cは他に比べて比較的短いのですが内容の充実度がハンパなく
あっという間に読み終えてしまいましたね。

で、最後の√D。ABCはそれぞれAfter Before Currentと時間を表していたので
次はどうなるんだろう・・・と思っていたらここで「√Double」とはたまげたなぁ。
神タイトゥルとはまさにこのことw
ついでに言えば作中で出てくるADやBCは
サブタイトルのBefore Crime * After Daysと関連していますし。
(もっといえば最終章の「アスタリスク」は真ん中の*ですよね?なにこれこわい)
さらにTipsでもBefore Crime * After Daysの詳細が出てきて
もうなんぞこの作りこみすごすぎ泣いた。

√DではここにきてSSS以外のもうひとつのシステムが出てきます。
内容はごく簡単なのですがシナリオと密接に関係しているので
ここではちょっと割愛します。ホントはここも語りまくりたいんですけどね。
というかルートダブルの最高の盛り上がりポイントがここなわけで。
システム上、これまでに読んだ文章をもう一度読んだりする場合もあるので
スキップも結構活用していくところではあるのですが
結局ほとんどスキップなしで読み直してしまいました。
同じ文章でも違う情報を得た後だと全然印象が変わってきますしね。
とてもじゃないけど僕にはスキップできませんでした。

そしてGRAND END。
最後の展開はEver17にも通ずるところがあるなぁと思いました。
身体能力的にはルートダブルのキャラの方が低いので
(必死でネタバレを避けようとしていますw)
一体どうするんだろうとは思っていましたが・・・うん、いいね!
最後の行動に移る前の展開が特に良かったと思います。
クッソダメだ、この辺もすごくいいところがあって語りたいんだけど
どうにも致命的ネタバレw

GRAND END後のエピローグも本当に良かったです。
実はまだ一部のエピソードを見ていないので
もしかしたらまだ違う展開があるのかもしれませんが・・・
ラストの1枚絵2種は最高ですなぁ。
そしてグランド終了後にEXTRAに追加される集合写真的な一枚絵。
もう、みけおう姉貴にひたすら感謝。最大限の感謝。



<キャラクター・CG>

メインとなるキャラが9(母さんも含めて10?)人もいるので
一人ずつの紹介はちょっと省略。
特に好きなキャラを紹介しましょう。



笠鷺渡瀬さん。もうね、大好きなの。かっこよすぎなの。
まずその名前がすごいです。
最後までプレイすれば分かりますが「天の川」で阻まれた織姫と「彦」星を
橋「渡」しする「かささぎ」ですよね。ああああ、もう意味深ってレベルじゃねーぞ。
「瀬」も川を意味していると思うし、もっと言えば最後のアレは・・・
もう考察という名の深読みがとまらねぇw

√Aで渡瀬兄貴はいろいろと不思議な現象に遭遇するわけだけど
そのあたりの説明も完璧にひとつ残らずやってくれましたね。
新垣さんの名演技も手伝って本当に素晴らしい主人公でした。すき。



もう一人の主人公、天川夏彦さん。熱い。めっちゃくちゃ熱いです。
特に√B中盤からのゲキアツNTHK兄貴の行動力と言動には・・・惚れてまうやろ!
ましろん、悠里さんとの関わりあいもすばらしいのですが
個人的にはサリュとのエピソードが大好き。
サリュとは対照的な位置に存在させているのに
相性ピッタリなのもニクイぜ・・・
あと、ショタ夏彦きゅんの口角めっちゃ歪めて笑ってる表情差分が最高ですw



ましろんこと鳥羽ましろさん。
体験版プレイ時まではそれほど好きなキャラではなかったのですが
製品版で一気に覚醒。√B後半からは一番好きなキャラになりました。
ましろんがいてくれたからこそここまでやってこれたんや。

ましろんのどの辺りが好きかという点についてはまた別の場所で。
ネタバレなしにはましろんの素晴らしさを語ることは出来ません。
さまざまな台詞やキャラもいいんだけど、
ミンゴスさんの演技がさらにそれを加速させています。
なんだろう、アニメ声に捉われない自然な演技がいいのかなぁ。



《ようやく人生が面白くなってきたのに、こんなところで終わりたくない》

サリュさん屈指の名台詞がこれ。
何も知らない人からしたら字面自体はすごくないかもしれないけど
この状況・このタイミングでサリュが言うととんでもない破壊力なんです。
「生きたい」と強く思うようになってからのサリュさんは
本当に頼もしく、そして可愛らしい。
ここまででもすでにサリュの魅力に惹かれていましたが
このシーンを見て一気に好きになりました。ましろんとサリュ、
どっちがいいかなんて選べない。

サリュはビジュアル的にもすごくいいのよね。
13歳なので小さいんだけどなんか二の腕とか色気があって柔らかそうで・・・
これはあれだな、「おいしそう」というのが一番適切な表現な気がするw



お母さんかわいすぎw

天川美夜子さん。
一見冷たそうな印象を受けるけど誰よりも夏彦を愛している。
夏彦に怒られた後、悠里に愚痴をこぼすところとか
かわいすぎてきゅんきゅんきたわ!

↑の一枚絵も本当に素敵な泣き笑い。
おおたか鳴海さんは他にもサブキャラ描いてるけど
どれもこれも良い仕事をしていて、今作で一気にファンになりました。

その他シリウス2人組、先生、宇喜多さん、車の人()
どのキャラも魅力がある・・・というかなんだろうみんなかっこいいんだよね。
信念が一貫しているし、それぞれいろんな過去や想いを背負って生きている。
そのあたりをきちんと集約して最後につなげてくる展開には
ただただ脱帽です。ありがとうありがとう。



<システム・BGM>

システムに関しては体験版感想記事か公式を参照してください。
特徴的なのはセンシズシンパシーシステムとRAMシステムですね。
単純だけど分岐自体は複雑かつ多岐にわたるので
自力での実績1000はなかなか大変そうです。
ノーマルもしくはTRUEエンドに到達すると
各ルートのAnswerコマンドが出てくるのである程度回収は楽になりますが
それでも数がハンパないので大変です。
(僕はグランド到達時でセンシズ分岐達成45%弱でした。
 なんというボリュームw)

UIや基本的なシステム面については体験版の問題点が
いくつか改善されているのでこれも公式の告知を参照してください。
口パクのズレを直して頂けたのが本当にありがたかったです。
後は良い分岐に入ったときはきゅぴぴーん(適当)という音が鳴るのが
個人的に良かったと思います。
初めからTRUEを目指していたので鳴らなかったらやり直していましたしw
高感度UP/DOWN時に数値が表示されるのも◎

体験版感想記事でも書いた
「オートプレイ時の音声とテキスト同期の分離」は残念ながら未実装。
ポテチ食べながらのプレイは断念しましたw
システム的に難しいことなのでしょうか?
これだけがちょっと不満だったかもです。

あ、あとこれはプレイスタイルにもよると思うんですが
セーブスロットが100でも足りなかったです・・・w
全部の分岐でセーブとってたらあっという間になくなったよ!

体験版プレイ時は今回もBGMは阿保さんなのかなーとか
思っていたんですが、どうやら違うみたいですね~。
スタッフロールで見逃しちゃったけどどれも素晴らしい楽曲群でした。

Ever17には「karma」という超絶名曲がありましたが
ルートダブルでそれに当たるのはやはり「The Brave Decision」
盛り上がりどころでかかるこの曲は
何度聴いても胸が熱く、そして喉が苦しくなります。
サントラにももちろん収録されていますが、
2ループ収録じゃないのだけが残念。

もうひとつの名曲はエレアコのジャカジャカ音が最高に心地よい
「Pose the Question in this World」
これがかかった時の心境はまさに「やべぇよやべぇよ・・・」一択。
後半のスネアスタタンスタタンのところも
本当にかっこよくてめっちゃ盛り上がりますなぁ。すき。

そしてやはり圧巻はグランドエンド曲「Rondo Carrousel」
とにかく直球で心をえぐるこの曲はラストの清涼感も合わさって
まさに最後を締めくくるにふさわしいエンディング曲。
ここで流さなきゃどこで流すんだってくらいのシンクロっぷりで
もうずっとボロボロボロボロ泣いてしまいました。



以上、少し長くなりましたがグランドエンド到達直後の正直な気持ちを
感想として書き綴りました。
あとはエロスケにてネタバレも含めた感想を・・・
と思いましたがひとまず先に実績コンプをしてきます。
なんだかんだで後5時間くらいはかかりそうです。
TIPSもまだ全然読めていないですしね。

原子炉のメルトダウンという今の日本にとって
あまりにクリティカルな内容だったため、
一時は開発すら断念せざるを得ない状況でしたが
こうやって無事発売され、そしてプレイできたことは本当に幸せでした。
しかもそれが(僕にとって)過去に類を見ない傑作だったとか・・・
製作者の方には本当、足を向けて寝られません。
ありがとうございます、ありがとうございます。
開発を再開したという告知が来たときは飛び上がって喜んだものですし、
応援してきた甲斐もありました。
とにかく今はひたすらに感謝です。

もちろんその裏には製作に関わる方々の想像を
絶する努力があったと思います。
僕に出来ることはお金を出してゲームを買い、プレイして、
人に勧めて、少しでも売上に貢献することだけですが
それでもこのルートダブルという作品に出会えたことは
この上ない喜びでした。
この気持ちがわずかでも誰かに届けば幸いです。