生きることは認めてもらうこと、死ぬことは見守ってもらうこと
個人的今年のTier1最初から最後まで全部良かった。
まず雰囲気がいい、原画とキャラや話の雰囲気が100点
柔らかみのあるタッチで描かれたキャラたちによる、
暖かくも愛おしくなるようなやり取りの数々は
凄く平和的でずっと浸っていたくなるような心地よさがある。
この高得点なので当然だけどシナリオもいい。
前半部分では幽霊になってしまった死人を、後半部分ではある人を
それぞれ成仏させる、あるいは看取るというような内容になっているんだけど、
生きることと死ぬことをセットにしたようなメッセージ性が非常に心に響く。
一言感想にも書いたのだけど、生きている自分ってものを気付いてもらうことで
始めて生きることができる、
一方で死ぬことはその生きてきたことを認めてもらうことで、
死を恐れる存在である我々は満足して死にゆくことができる。
その辺のメッセージを上手く幽霊という要素を絡めて表現していると感じた。
パープルお約束ですが演出もいい。
CGの使い方が本当に上手い、
とくにエピローグ前にお茶会のシーンなんかは、
自らのそういう場面を想像して、こんな風にしてもらえたら、
どんなに穏やかでいられるかなとゴリゴリに感情移入してしまった。
さすがにミドルなので、フルプラの同ブランド作品には劣ると感じたけど、
その中でも期待以上のものを見せてくれている。
以下プレイメモのうちシナリオ的要素の抜粋(駄文注意)
シナリオ的ポイント
生前の記憶をもとに取ったむき出しのでも綺麗な欲望に対してどのようなことができるか
もうすぐ何もない世界に行く幽霊に対して、その魂に何を遺してやることが救いになるのか
非常に考えさせられた。ありのままの真実だけが人を救うわけではないし、
生前の罪悪感(戦死者などは特に)から手に入るはずの幸福を「諦めて」しまう人もいる。
その人の魂を安らげる場所へ導く、前向きな終着を作ってあげることができるといいよな。
・ダアトとビナーの恋愛について
お互いが恋愛をしようと思って恋愛をしていない感じがよい。お互いに対する印象や思いの丈を集約した結果がたまたま恋愛になっているような、ビナーの場合はダアトの自然に自分を特別に扱ってくれる心遣いや母性本能をくすぐる少し危なっかしい言動、ダアトの場合はセフィラの先輩として尊敬を始点とした彼女の素の優しさや純粋さ。お互いの他意のない純粋な言動にひかれあっている感じが自然発生的な恋愛感情という感じでよい。
・誰かを見つけること、見つけられることで感じる喜び、無くしてしまうことで感じる悲しみ
・アンドロイドの考える存在意義
【誰かと見つけ合えることで生きることができる】
姫子と生まれたばかりのダアトとの会話からそんなことをテーマとして考えた。
ダアトの自分の存在が災厄を引き起こすならここで消してくれと斯うダアトに対して、不自然と自覚しながら怒りを覚える姫子の場面。たとえ原罪のような存在であったとしても生きるという過程を諦めることは悪だと考え、同時にビナーの最期について許せないと考えた。その後ダアトに己の優しさを認められ涙を流す。そんな場面。
かつて姫子とビナーがそうであったように、ダアトと姫子が互いを見つけ合っているのではないかと考えた。生きる過程の中で「あなたはこういうところが凄い」だとか、「あなたがいてくれると嬉しい」というように、誰かが認めて定めてくれたり、誰かの魂に影響を与えたりすること、つまり「見つけてもらう」ことで存在価値は決まるのだというメッセージを感じた。
これはビナーがやっていた魂の救済(まさに幽霊を見つける作業だった)ともつながる今作のテーマと言えるのかもしれない
・生きるも死ぬも、他者に認められることに大きな価値がある。
幽霊の成仏から始まって、最後に〇〇を看取るまで、そればかりだった。
生きるのを諦めるなという考えと一体のものとして
「あなたはもう十分に生きた」と言ってあげることで救われる気持ちもあるのだと、
たしかにそうかもなと思った。
それによって、自分が生きてきたことに対して意味があったのだと、
誰かが箔を押してくれる、そのことが未練をかき消してくれる。
未練そのものが死を恐れてマイナスのものとしてとらえてしまう、
そういう弱い存在だからこそ持ちうる価値観なので、
そうやって「救われたい」と最後には人もアンドロイドも願うのかなと思った
極上の雰囲気
特に最後のお茶会の場面。
消えゆく時間を暖かなぬくもりの中で溶かしていくような情感が伝わってくる
いよいよというときに死の恐怖が感情の発露として湧き出してくるところとか
<全体のまとめ>
ほぼ完ぺきで満点をつけたいくらいに良かった。
強いて言うなら、シーンがいらないと思った。
クロノクロック方式で全部本編外で良かったんじゃないかなと思う。
シナリオ、声優、グラフィック、音楽どれをとっても高水準でまとまっている。
特に推したいのが雰囲気。
ほんとにずっと浸っていたいと思えるくらいに雰囲気がいい。
死の絡んだ冷たさに裏付けされたぬくもりっていうのかな。
守ってもらえるような癒しを求めている方はぜひ。
そうでなくても、メインビジュアルで少し気になったとか、
出てる声優さんが好きだとか、御影さんの作品昔やったなーとか
きっかけがあるなら迷わず手にとっていい。
ほめすぎだけど、それくらいに心に残る作品だった。
推しキャラ:全員、強いて言えばダアトとビナー。
基礎点 47/50
熱中度 30/30
システム音楽等 13/15
補正得点 5/5