ほのぼの長編RPG⇒それぞれの幸せ探し
あざらしそふとのあの字も感じない、
実質的にCUFFSというかCUBEの新作といった感じでした。
ここだとそうでもないけど、
かなり長尺で良くも悪くも丁寧に纏まった作品だったと思います。
そして多分だけど、
共通パートが好きな人、香恋・咲夜・碧ルートが好きな人、パーシィ・アイリスルートが好きな人で
はっきりと分かれるんじゃないかなと思います。
共通パートは本当にほのぼのとしたヒロインとの無人島サバイバルという感じで、
肩の力を抜いて楽しめたかなと思います。
なかひろ先生らしい定型文を使った遊び要素が光るパートでした。
咲夜の「私の軍師的な頭を~」が好きでしたね笑
よく言えばまったり、悪くいえばグダグダ。
全体を通してなんですけど、本作かなり丁寧で、
例えば日ごとの探索も省略せずに同じところに行っていても、
それぞれに違った日として描かれていたり、
やってみたけどうまくいかなかったねみたいなパートを多く挟みます。
この辺を丁寧と感じるか、テンポが悪いと感じるか、人それぞれかなと思いました。
次が3人のパート
個人的にはここがピークだったかなと思います。
ヒロインの内面特化で、それぞれが主人公とどんな未来を描いて結ばれていくかということに
スポットが当たっているパートだと思います。
どの子も一筋縄ではいかない問題を抱えていて、
それを一つ一つ丁寧に解いていって、それが知らず知らずと二人の世界に繋がっていく
みたいな流れが多かったように思います。
一見グダグダに見えていたやり取りの中にも
ヒロインの心のカギを開けるヒントがあったりと、
一種の謎解きと答え合わせのような面白さがありました。
パーシィとアイリスのパート
このパートは作品のテーマのパートでしたね。
冒険とか勇者とかその辺のキーワードの答え合わせと
どのような生き方が勇者的でそれはどう人を幸せにしてくれるのかみたいな、
あとは舞台となっているマグメル島に関する真実だったり、
大和とアイリスの再会から未来への物語だったり、
シナリオ的に厚みのある美味しい部分だったと思います。
ちょっと詰め込みすぎに感じましたし、
魔法の部分が独自設定でご都合主義観が大きかったですが、
細かい伏線もひとつひとつ丁寧に拾っている感じは丁寧だなと思いましたし、
綺麗にパズルがまとまっていくようで
終わってみれば読後感がかなり良かったなと思います。
以下各ルート感想
共通 85点
パンチはないけど、ほどほどに楽しく読める飲み込みやすい話という感じでした。
魔力の設定によって不要なキャラがいなくて、
物語がどう進んでも、極端に主要キャラの出番が減るということはなさそう。
ほどほどに笑える場面もありつつ、キャラの可愛さもありつつ。
物語としてめちゃめちゃ丁寧に織り込んでいるなという印象。
ノベルゲームだとダイジェストになってしまいそうな
仲間とあれこれ試行錯誤をしたり、今日はこっち行ってみようよみたいな
キャラクターの意思決定なんかも一緒にしているような感覚になれる
その中でお互いの理解がどんどん深まっていく感じを
ただ読んでるだけであっても追体験できました。
RPGで実際にキャラを動かしているような感覚。
結構話の幅が広くて、神話のことだったり、DIYの豆知識だったり、
読んでて単純にへーってなる部分も多かった。
読み物としては分量がかなり多いのと、
個別で急にシリアスを消化し始めるとやだなってくらいで、
基本的には仲間とのやり取りを追体験しながら、
各キャラヒロインの可愛さを堪能できる
楽しいパートでしたね。
それぞれのキャラの印象として
アイリス…周りを振り回す系のお嬢様と思いきや、その成分は20%くらいで、
ちゃんとリーダーしてるなという印象です。
自由さもありつつ、言いたいことはちゃんと言うし、それを通す強さもある。
正妻感というか、彼女がどっしり構えているからこそ、他のヒロインの気持ちも盛り上がるというか、
たぶんどのルートにいっても彼女は存在感をもって主人公のそばにい続けるんだろうな、
そんな安心感のある子。
大和が迷うときも直接手を貸さずに、彼を信じて鼓舞する感じが実にメインヒロインっぽい
無自覚な無防備さがエロい。でもオープンなわけではなくてちゃんと恥じらうのは可愛い。
碧…エロい、彼女も無自覚にエロい。
水着の立ち絵で腕組んだときに巨乳がむにゅってなるのえっちすぎる。
と、一人こういうキャラがいると便利だよなあ。
違和感なく世界観の説明ができたり、ボケの軌道修正を自然にしてくれる。
共通時点だと一番恋愛感情に無自覚な印象を受けました。
それを気付かせたいっていう友人枠の計らいもむなしくというか、
とはいえ、能力を使うトリガーが「大和がそれをすると嬉しい」と想起することっぽいので、
完全にフラットでもないんだろうな。潜在的に好意はあるけどってパターン
それだけにきっとルートだと爆発力が期待できそうな気がする。
あと、ミドリの人格でシーンがあるといいなあ。
香恋…セリフだけメスガキなただのお兄ちゃん大好きないい子って感じ。
碧とは対照的にアイリスとの関係をバチバチに意識している感じですよね。
ファーファの場面とか誰よりも大和のことを心配していたり、
本気の敵意を向けていたり、とにかく兄ファーストって感じ。
義妹なので、家族の絆とかそっちに寄った展開になるのかな?
咲夜…おもしれー女枠。いちいちオタク視点で事象を解釈する感じが面白い。
動物を魅了するって能力が彼女の一匹オオカミな性格と関連してるのかな
嫌々言いながらついて行ってしまうようなチョロイン属性も感じる。
冒険に対して、特別な思い入れがあるっぽいので、
その辺の話がメインになってくるのかなと思います。
パーシィ…かわいい。こういう淡々としたデレるのが一番好き。
サブなのかあるいはトゥルーなのか、微妙なところ。
ハンモックをおねだりするところが萌え死にましたね。
普通に人気が出そうだし、仮に人気投票したら圧倒的に一位になりそう。
どこまでもアイリス様に従順なメイドなので、
彼女自身とどういう風に恋愛になるのかってのもあるし、
アイリスとともに物語の核となる妖精と人間の共存みたいな部分にも大きくかかわってくると思います
咲夜ルート 87点
展開が凄く急だなとは思ったけど全体的にはGOOD
設定自体はよくあるものなんだけど、何気ない彼女の行動や発現に、
その設定ゆえの人生観みたいなものが見えていたんだなと、
よくできているなあと思った。
冒険をすることは祈りと同じ、未来への期待を止めないこと。
祖父の、咲夜のそれが本人たちの見えない場所でつながって
咲夜という少女の幸せにつながる一つの線になっていくような
気持ちの良い読後感。
冒険をすることのとらえ方が段階的に変わっていく感じが良かった。
最初はいつ死んでもいいようになんていう後ろ向きな意味だったのに、
超えるべき壁を越えて、犠牲のともなわないエンディングを迎えるため、
そして冒険の終わりに待ち構える幸せな人生の旅を続けるため、
どんどんと前向きに開いていく彼女の世界をずっと横で見ていたいなと思った。
香恋ルート 83点
時間をかけてこじらせた恋心を、兄妹でも家族でも恋人でもない、
枠にはまらない二人だけの形に作り上げていくお話。
いきつくところまで行ってしまっている感じというか、
香恋自身が自分で引き寄せてつかみ取ったものしか信じたくないというようなスタンスで
それ以外のものを遠ざけてしまう感じが、
凄くめんどくさい性格であり、個人的に可愛いなと思うポイントでしたね。
…、、なかなか衝撃的な展開だった。
単純な恋愛物語としても完結できた思うんだけど、あえてそうしなかったという印象も受けた
絶望できるってことは心が希望を望んでいるってこと。
その心の炎が消えない限りは前に進むことができるってね。
ずっと初恋を胸の中で温めてきて、やっと実らせた彼女らしい言葉だと思うし、
そういう彼女を選んだからこそ、大和も未来をつかむことができたんでしょうね。
散々絶望して、空回りして、それでもなんとか生きてきたから、
これくらいの絶望はどうってことないって思えたんだろうし、
これも何も失わないってことが最適解ではないっていう
「ノーペインノーゲイン」のメッセージにもつながるのかなと思いました。
エピローグでがんがん進むので、ちょっと情緒がなかったのが残念ではあるけど
(逆にここを丁寧に書いてたら90つけてたかも)
個人的にはアリかなあという風に思った
(なんでこんな展開にしたんだと思う人がいてもおかしくないとも思う。)
碧ルート 92点
いろんな要素が上手く絡み合ってひとまとまりになっていて、
読みながら何度もため息が漏れたし、エピローグ終わったときには拍手してました。
この碧ってヒロインの奥の深さというか、底知れぬキャラクター性がたまらんかったですね。
違うように見えてるものが実は深くでは互いに影響し合って生きていたり、
なんとなくのイメージで決めつけずに、少しずつ試行錯誤しながら
碧の内面へと潜り込んでいくことで、
本来の彼女が持っていた卑屈なまでの自己嫌悪と
そこから出てくる優しさゆえの自己犠牲。
そういう根っこの部分がだんだんと見えてくる、
なんなら見て欲しいと自分に対して扉を開いてくれる。
そういう心の変わり方というか、つかめなかった見えなかったものが
手のひらの近くをふよふよして、最終的にぱちっとハマるような、
心のつながりが強くなっていって、碧が救われていく、
そのことから感じる喜びを追体験できるような
読後感の良い丁寧なシナリオ運びでした。
あと、期待通りエロかったですね。
90センチを超えてもまだ成長する巨乳も最高でしたし、
シーン豹変っぷりが最高でした。
リセットされる恋愛関係の描写も
口で言うことと実際に体感することはちがうんだってことを
見せつけられて凄く切なかったし、
大和に救われたことの「恩返し」が二重人格を生んだってところの
伏線の回収の仕方とか、
物語としても情緒としてもわくわくできる展開がもりだくさんで、
あらゆる面で凄く質の高いルートでした。
パーシィルート 87点
間延びする感じはあった(ここまでのルートに比べると展開が緩くて長さを感じた)けど、
終わってみるといい話だったなあとなりました。
一番共通の流れに近いルートかなと思います。
勇者の精神とは他人の尺度による幸せや正義に囚われず、
良いも悪いも自分の心に答えを持って突き進むこと
そのことが神の力の理不尽とも思える暴力を貫く。
そんな内容だったかなと思います。
アイリスとパーシィの主従の絆が印象的でしたね。
あくまでアイリスの付き人として、その幸せを第一に願おうとするパーシィに対して、
「自分の立場や境遇を理由に絶望しないで、自分の幸せを他人にゆだねないで、
自分で追及することを諦めないで」
と投げかけるアイリスのメッセージも印象的。
太陽のアイリス、月のパーシィ
そうであるとして、月に何ができるのかという問いに対して
太陽は月が輝くことに喜びを感じるのではないか
月もまた太陽のために輝いている どちらも欠いてはいけない存在なのではないか
二人の関係の貴賤はなく、どちらもお互いを必要としている、
それをわがままに叶える強い信念こそが勇者の力なのだと
締めくくるような終盤の主人公との掛け合いも凄く好き。
あと、キャラクターとして凄く好きだった。
元から冷たいイメージはなかったけど、アイリスの観測者として輪の外側にいた彼女が
輪の中で素直に笑ったり、照れたりするようになっていく過程が凄く嬉しく感じましたね。
アイリスルート 85点
面白かったには面白かったんだけど、
いろんな要素を欲張りすぎて話がいったりきたりするのがなあ…
撫子のところは香恋あたりのルートで回収しても良かった気がする。
大和くんのことは出せないよね…うまく伏線が張られててこの辺りは満足。
運命や現実から逃避せずに、
大和のつないできた「再会」というバトンを、
アイリスが「永遠」へと繋いでいくお話とでも言えるのかな。
過去に執着するのではなく、未来の恐怖におびえるのではなく、今を少しでも良い状態にしていく。
そこに加えて幸福と不幸を重ねながら、運の連なりを重ねていくこと。
自分とは自分自身という世界における唯一神
今の自分を受け入れること、誰かを代用品にならないように選んでいくこと
それこそが運命に負けずに自らの「生」を本物にできるのだという具合でしょうか。
どれも悪いものではなかったなという印象です。
欠点としては要素を盛り込みすぎて長いことと、
大和くんの状態からして、結構序盤でラブラブモードが吹き飛んで辛い展開が続くことかな…
アイリスが途中で壊れなくて本当に良かった。
過去の大和自体を変えることはできなくても、
彼の心を変えてここまでの物語を生み出したのは彼女ですし、
そういう意味でも彼女は「メインヒロイン」だったなと思いました。
<全体の感想>
キャラゲーとシナリオゲーを足し算したような構成で、
パートごとに評価がざっくり割れる作品だと思いました。
丁寧という面でいうと、本当に誤字脱字がなかったように思います。
あざらしとCUFFSどっちが優秀なのかわからないけど、
これだけ長尺のシナリオでそこを落とさないのは単純に凄いなと思いました。
あと、絵も抜群にいいです。
可愛さとえろさが上手く両立していて、さすがとしかいいようがないです。
ありきたりな萌え絵に見えて、一度接種すると他で満足できなくなる
独特な魅力がありますよね。
シナリオでいうと、
好意的に言えば丁寧なんだけど、シナリオ・展開両方の部分で回りくどい部分が多く、
中だるみしやすいと言わざるを得ないかなと思います。
ただ面白い部分は面白いし、平均点にすると悪くないし、
読後感がやたらいいので、そこそこ好印象に収まってます。
このオムニバス感と絶妙なまとまり感、
そしてちょっと不思議な舞台設定が非常にCUFFSっぽいです。
そういう意味でなかひろ先生の風味はあれど、
らしい作品だとは思うので、気になっている方はプレイしてみてもいいかもです。
ぜひCUBEとかSonoraでも新作を…!!!!
推しルート:碧ルート
推しキャラ:パーシィ、碧
基礎点 43/50
熱中度 23/30
システム音楽等 15/15(イラスト立ち絵がいい、誤字脱字がほとんどない、環境周り◎)
補正得点 5/5
合計 86/100