不思議な島を舞台とした最高のエンターテイメント
今年プレイの中でも№1、№2を争う傑作
大まかな話としては「サメ島」という島で記憶喪失で目覚めた映画オタクの主人公が
幼なじみと一緒に島で元の生活をしていくうちにこの島のおかしな部分に気付いて…という感じ。
以下良い点
・たった一つの設定でここまで膨らむかというような物語のふくらみ
ジャンルでいうとSFになるとは思う。それもわりとよくある設定。
にもかかわらず、そこに付随する物語の数々がとにかく面白い。
どのヒロインのルート、さらにその後の展開についても
笑いあり、涙ありの欲張りセット。
その一瞬一瞬を見ても、単純に面白いな感じるし、
それぞれのヒロインに特性と見せ場があって、ちゃんと物語の根幹に向かっていく。
設定自体はありふれているのに、このヒロイン、キャラ達と料理するとこんなにおいしくいただけるのか!
と少し感動を覚えるレベル。
・締まりの良い、笑いと涙(たまに鬱)の使い分け
7割くらいは明るい展開が続きます。
作品の性質上似たような展開が多くなるのがネックだけど、
細かいパロネタだったり、他ルートで明らかになったことを組み合わせると、
ヒロインたちの言動に「おっ?」となったり、
それなりに楽しめるはず。
もちろんそれだけでは終わらない。
物語の根幹にかかわる部分になるとそれなりにシリアスに緊張感のある場面もしっかり押さえられている。
他ヒロインが敵になったり、なかなか重い設定を使った真面目なシーンもあったり、
あるルートでは本当にどうしようもない、鬱展開に近い状況になったり、
この辺の配分がほどよく作品全体として、終始楽しく読むことができる。
・6人目のヒロインからグランドへのカタルシス
パッケージに出ている5人のヒロイン、ウエイトの違いはあれどどれもまとまっていていいです。
ただそれで終わらない、むしろそこからが本番とばかりに動き出す展開。
一応まとまりかけていたのかなと思っていたシナリオを6人目のヒロインのルートで
容赦なく折られます。
これがまあまあ重いです。一言でいえば地獄みたいな展開。
そこを抜けるとグランドが見えてきます。
こちらは同じようにぐちゃぐちゃに折られたままの展開の数々を拾って、
非常にグランドルートらしい結末を迎えます。
この上げて、一度落として、また上げる…
相当ノベルゲームをわかってる人が書いた展開だなと、ただただ感激でしたね…
・丁寧なコンフィグ周り
CUBE全体にいえることですが、起動画面がミニドラマになっていたり、
大量のセーブスロットがあったり、お気に入りボイス登録ができたり、
制作スタッフの愛を感じられる機能がずらり。
地味ですが、毎回ありがたいなと思う。
以下一応気になる点
・ルートロック
ぶっちゃけ一本道でもいいような気がします。
どうせひっくり返すのでというのはそうなのだけど、
任意選択の5人でもかなり情報量に差があり、
先に麗水なんかをやってしまうと、
もう出たよその話というのが増えてしまって、
楽しさが半減してしまうと感じた。
こればかりは攻略サイトを見よう!!
・主人公の過去に対する描写の不足
特に麗水ルートなんですけど、
結局、恭平と麗水と真瑠璃がどういう風にかかわっていたのか、
よくわからなかったなあと、、
島の仕掛けの中でうやむやになったってのが正解なのかもしれないけど、
麗水自身の問題の根幹でもあるので、
ここはもう少し描写があってもいいのかなと思った。
・なかなか気持ち悪い絵が多い
サメがテーマなので、結構食われる…
血しぶきの表現があるので苦手な人は注意
あと野ダコがキモイ…
全体として
エンターテイメント性抜群の傑作!
だと思います!!
本当に笑いあり涙ありの欲張りセットという感じで、
かといってごちゃまぜだけではなくて、シナリオとしても一本筋が通っていて、
ライターの手腕が光る、CUBEの魂の一作であると感じた。
ここでの評価も高いが、自分も間違いないと思った。
変わり目の多いブランドなので、毎回傑作とはいかないのが惜しいが、
また、このような作品を作ってほしい。