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lein2709さんのパルフェリメイクの長文感想

ユーザー
lein2709
ゲーム
パルフェリメイク
ブランド
戯画
得点
88
参照数
117

一言コメント

里伽子ルートだけじゃない、上質なキラキラした純愛の詰め合わせのような作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

すべては里伽子ルートのためにあるくらいの勢いでレビューサイトに書いてあるのを目にしたけど、
もちろん里伽子ルートもいいんだけど、他ルートもキラキラしててとっても好きだった。
瞬間風速もだけど、平均風速が非常に高く満足だった。
何より「ファミーユ」の雰囲気がいい。
現実が少しつらくなるくらいに、素敵な人しかいない、ちょっとあわただしくて暖かい雰囲気がたまらない。
その中で行われる、ピュアだったり大人だったりする一途な恋愛劇はどれも質が高くて、
どこまでもキラキラしていて最高だった。
なんというか、今のところは90点くらいの感じだけど、
後々になって思い出して、登場人物やヒロインのことが愛おしくなって
何度も帰ってきたくなるような作品なんじゃないかなと思った。

気になった点も少しだけ
ひとつはフラグ管理がかなりめんどい…
マップ式は楽しくていいんだけど、いまいち何がフラグなってるのか分かりにくいし、
微妙に条件が異なるせいでわりと何周もさせられた感がある。
ふたつめはノーマルエンドの必要性
いらなくない?なんか流れでトゥルーにいけないせいで少し温度が冷めるような印象を受けた
みっつめはBGM
BGM自体はいいんだけど、シーンの射精の部分で無音になるのなんでー??
なんかシリアスなことが起こるのか思ってしまうので、そのまま垂れ流してほしいなと思った。
あと、シリアスシーンで流れる「冬ソナ」がね…笑っちゃう。
これくらい。シナリオや演出面に減点ポイントはほぼないです。

以下各ルートの感想(プレイ順)

明日香ルート 86点
いろんな意味で「琴線に触れる」女の子
いいなあ、青春だなあって感じ。
生徒と先生、店長とアルバイト、恋人同士
関係性ごとに距離感を使い分ける明日香が可愛かったし、
それらを経て、自分たちがどうなりたいという答えに辿り着いて、
そのために、お互いが今を頑張ろうと決意する。
シンプルながらいい話
色々なことから目を背けたり、秘密にした上に成り立つ関係だけにお互いに
盛り上がりきれない感じも上手く出ていて、
それに負けずにアプローチを掛けたり、献身的に尽くす
明日香はやっぱり可愛かった。
あと、シーンが想像以上に良かった
ハイライトになるであろうは片方だけの手袋
もう片方を作らないこと自体が仁から離れないっていう誓いになったのかもね。

かすりルート 83点
明日香のルートが青春ならば、こっちは大人の恋愛って感じがした。
現代のエロゲみたく、当たり前のように初恋という感じではなく、
お互いに何度目かの恋愛で、
当然自分に辿り着くまでの相手には相手の物語がある。
そのことを理解して受け止めているからこそ、起こるすれ違い。
それがだんだんと盛り上がっていた二人の関係に影響を与えて、
心が身体が離れていく感じが結構生々しく語られている印象だった。
過去のいるかもわからない誰かと比べて、一番を目指すのではなく、
あなただけのわたし、わたしだけのあなたとして向き合うことで、
再び仲を深めて、新しい歴史を作っていくことが大切。
そんな感じかな。
かすりのパティシエとしても仁の恋人としても「二番手」というのが
彼女の切ない気持ちを引き立てていたなと思う。
今まではそれでよかったけど、そうじゃなくなるのが恋であり、恋愛なんだろうなあ。

由飛ルート 92点
だいぶギア上げてきたなあ…
由飛がはんぱなく可愛くてえろいし、シナリオもいいしで総合点の高いルートだった。
この子がただのアホの子のわけがないってのはなんとなく感じ取ってたけど、
過去のことを考えると、ファミーユの一員になって、仁と結ばれて
その幸せをどんな風に噛み締めているんだろうって思いを馳せたくなる。
仁にとって彼女は女神で、彼女にとって仁はどうしようもなく逃げた先で出会った王子様
家にも学校にも居場所がなくて、将来が閉ざされた状態の自分を認めて向かい入れてくれた
その時どんなに暖かい気持ちになっただろうとか、
共通ルートで見せてくれた天真爛漫なふるまいの裏にぼんやりとした不安を抱えていて、
それから逃げて忘れさせてくれる、ファミーユでの日々ややり取りに
どれだけ彼女は救われていたのだろうとか
ヒロイン側に感情移入すればするほど、ハマるヒロインだと思う。
シナリオ的には、壊れていく由飛の描写が凄く印象的
ドツボにハマっていくような暗闇の中で、
甘えさせてくれる人がいること、同じ痛みを背負ってくれる人がいること、その暖かさ
その暖かさに気が付いて、素直に甘えることができる彼女自身の成長
そんなものがたくさん描かれていて、重さのわりに暖かさのあるいいルートだった。
あと、単純にヒロインとして魅力的だった。
暗闇の中でも笑ってみせる強い姿も年下らしくあまちゃんになる姿もとても可愛かった。

玲愛ルート 86点
噂に聞く、丸戸ヒロインここに極まれり!って感じだった
玲愛があっさり本店に戻るって言ったとき、ん?ってなったので、
しっかりその違和感を拾ってくれていて好感。
自分が放った言葉や判断に対して、どんどん引っ込みがつかなくなっていって、
余裕がなくなっていく様子は、ちょっとかわいそうだけど、
めんどくさくて可愛いなと思えた。
最初月一で会えればいいって言ってたのが、月2,3に増えてたりとか、
最初は決めたことだからって話聞かなかったのが、
納得してないんでしょ?ねえ止めてよ!行くなって言ってよ!オーラ全開で迫ってきたりとか、
そういう風に変わらされていく様子に「初恋」を感じた。
個人的に好きなのは、由飛の電話を玲愛が仁の家で受けるシーン。
きっと脳裏でファミーユで由飛と仁が自分の知らない約束を交わすシーンが
頭にうかんだんだろうなあ…。
自分が本店に戻れば、そういう自分の目に届かないところで
自分の知らない彼の姿がどんどん増えていく。
そうなったら、自分の居場所が彼の中からなくなって
あげく捨てられてしまうのではないか。そんな風に思ったんじゃないかな。
恋をしらないゆえの自分の思い込みと失うことの怖さを知って、
素直に自分の気持ちと向き合うきっかけになったのだと思う。
そして、全体を通して行くなと言えない仁の心を読んでいる里伽子の正妻感が出てきたなと、
「お前の周りの世界は、お前が考えるよりも、ちょっとだけ優しいんだよ」
名言としてよく語られる言葉、これが彼女の頑なな性格に響いてくれるといいな。
結末も結構好きですね。彼女だけヒロインの中で外側の人間だったので、
これで晴れて「ファミーユ(家族)」なのかなって

恵麻ルート 91点
愛が重いよ、おねえちゃん…
なんていうかこの二人がくっつくためにはこういう結末しかありえないんだろうなと思った。
亡くなった仁の兄(一人)の影を投射しているわけでもなく、
かといって今だけを見て生きているわけでもない、
そういう長い時間とそれに沿って変わってきた関係を乗り越えて、
それでもなお生き続ける初恋という名の人間愛の成れの果てというか…
内容以上のそれぞれの人物同士の想いの重さを感じたルートだった。
これを里伽子サイドで見ないといけないのか…この後
個人的に好きなシーンはクリスマスのシーン。
なんというか、お互いが一番に思っている人の中で「一番」にはなれていない
(里伽子は応えていないし、仁はこの時点では里伽子が好き)
そういう者同士の痛々しくも、美しい傷のなめ合いというか、
家族だから恋人になれないんじゃなくて、
家族にもなれる恋人同士なんだよなと思った。
そういう特別な交わり方のできる関係性としてうまく描かれていて凄く好きな場面
もう一個は言わずもがな恵麻さんの逃亡劇
位牌を持って行ったときは本当に後追いかと思ったし、
その直前で仁がタバコをやめてたくだりもあったから、
それで一人の残したものが完全に自分の周りからなくなった
と思っちゃったんじゃないかと思った。
でも結局のところ、恵麻の真ん中には時間と関係を超えた
仁に対する初恋が強く生きていて、
形を取り繕いながらもその想いをずっとくすぶらせてきた。
そういう自分のずるさが許せなかったけど、
どうしても仁が欲しいって思いだけは捨てられなかった。
そのことは仁が受け入れてくれて、
さらに周りに受け入れてもらうために家族になろうって
恵麻の想いがその器を破って暴れて、そして救済される。
言葉ではいえない重くて大きな愛の終着点、さすがに圧巻。
あと、「ファミーユ」ってやっぱそういうことだよね、
そこに里伽子もいるってのはどういうことなんだろうとも思う
その辺も里伽子サイドで分かるのかな期待

里伽子ルート 92点
うん、いい話だったと思う。
このルートのためにこの作品はあるくらいの勢いで聞かされていたけど、
そこまでには思わなかったかな、正直。
他ルートも普通に良かったし、さすがに一段上かなとは思うけど、
最大風速より平均風速寄りの作品だったと思う。
里伽子自身は凄く辛抱強いよなあ…すげー強いと思う。
一番助けて欲しいってときに裏切られて(というかそう思っていて)
それでもなお、一定の距離はあれどずっとそばにいたってことだもんなあ…。
自分とは無関係に、かつての自分の居場所だったファミーユが形を変えて
立ち直っていって、自分は「戻れない」からって外から眺める以外になくて、
いつものように「頼ってくる」仁にアドバイス送ったり、恋路を応援したり、
果てには恋人ごっこに付き合ったり、普通できない。
それくらいに、痛いってわかってても手を伸ばしたくなるくらいに、
いつかは自分も、一番に置く家族と同じように彼が気付いてくれるって
信じていたのかな、凄く健気だし、強いと思う。
位牌とブレスレットを守ろうとしたのだって、
どれだけ彼と彼の一番に大切なものを自分も大切にしていたのかって現れだし。
どれだけ好きなんだよって思ってしまう。
仁くんの動きも良かったですね。奇跡に頼らない選択というか、
それをすることで
本当に自分なしに生きられないというたった一つの存在であることを
里伽子に行動で証明して、ブレスレット以上に強い絆にしたってことだもんなあ。
もちろんそれに里伽子が応えた先に最後のエピローグの光景があるんだけども。
泣けたかというと、別にって感じなんだけど(個人的に由飛のルートが一番緩んだ)
綺麗なお話だったなというのが最終的な感想。

<総括>
個人的には里伽子ルートの爆発力よりも、想像力も極上の雰囲気で高評価って感じ。
それぞれルートに泣きどころ笑いどころが詰まってて、日常会話の面白くて、
そこそこの分量を飽きずにプレイできる、
不朽の名作にふさわしい作品だなと感じた。
本当に雰囲気がいいので、どんどん自分の中で熟成されて、
いい思い出として生き続けてくれるタイプの作品だとも思う。
攻略順とフラグ管理が手間だけど、ergの入門としてもいいんじゃないかな。
(ブランド解散で高すぎるのが難点だけど)
また、時間を置いて帰ってきたいな…FDとかもぜひやりたい。

推しヒロイン:由飛、玲愛
推しルート:里伽子、由飛、恵麻
基礎点 44/50
熱中度 27/30
システム音楽等 12/15
補正得点 5/5
合計 90点