日常パートとキャラは好き
シナリオは思ったよりあっさり、もっと端的にいうと泣けはしないかな、と。
今ある世界を壊して、新世界を作るか否かという選択をする。ってのが根幹にはなるのかな。
ロミの指示によるヒロインとのふれあいのなかで、
愛内くん(主人公)が今の世界に対する愛着を徐々に抱いていく過程が凄くよかった
日常パートは笑える場面も多くて、学生らしく青春している感じがキラキラしてて素直にこういうのいいなあと楽しめた。個別までは結構楽しかったかな。
【いまいちな点】
物語の根幹となっている部分が微妙。
まず敵組織がぱっとしないというか描写不足だと思う。
やってることは偶像崇拝と変わらないし、そこに説得力がなかった。
(もしかしたらアペンドで解決されるのかな)
愛内親子の魂を殲滅したところで彗星病の根本的な解決にはならないし、
結局、鯨を宇宙に帰すっていう目的は主人公に奪われてしまうし、
なんだか引っ搔くだけ引っ掻いて何もしてないじゃんと、
ロミのルートがいわば、主人公のデッドエンドになるんだと思うけど、
魂が入れ物を変えて、事実上復活してしまうのがなあ…
会話ができないとかの制約があれば、そこに対する切なさとかを描写できそうなものだけど、
普通に会話もできちゃってるし、無駄にその辺がコミカルに描かれてるせいで、感傷的にもなれず
なんだかなあとなってしまった。
あと演出と声優…テキスト
演出…爆発音とかが凄くチープだし、効果音もワンパターン。
ビジュアルアーツならこの辺が腕の見せ所だと思うんだけどなあ
声優…主要キャラと有名声優はいいです。期待通り。(唯々菜の声優がちょっと微妙かな…正直)
モブになればなるほどよくない。忍の父とか若すぎだし、言ってたような威厳もまるで感じられない。
テキスト…なんで音声と文字が一致してないんだろうと思う箇所がちらちら。
普段なら気にしないんだけど、上記二つの雑さのせいでやけにきになってしまった。
【いいところ】
悪いところいっぱい書いたけど、この作品が見せる世界のとらえ方みたいなものは好き。
特にグランドルートの愛内くん同士の対話の場面はこの作品の個人的ハイライトでここは凄く好き。
世界はくだらなくて、周りの人間のことは嫌いじゃないけど、別に自分にとっても相手にとってもどうでもいい、「テレビのタレント」みたいなのがいっぱいいる価値の薄いものだ、というもう一人の愛内くんの言葉。
似たようなこと考えたことあるし、愛内くんのペシミスティックな側面が良く出ていてすごく好き。
それに対して、それでもいいと肯定するロミの言葉も説得力があって好き。
だってそのどうでもいい世界に少しでも執着できるようにって影を尾を引いていたのは他でもない彼女。
プレイヤーの立場からしても、これまでのルートでそういうキャラやそれが守っている世界に対する愛着が後を引いている場面でそんなこというんだもん。
だから、他者とかかわって街に明かりをともす、そうしてるとこのくだらない世界でも、いつか「かけがえのないもの」が見つかるよって。
このシーンと言葉は本当に刺さった。ここやれただけでも満足かな。
あと、冒頭にも書いたけど、日常の掛け合いは本当にいっぱい笑わせてもらった。
特に唯々菜との同棲生活やロミルートでのヒロイン大集合の合宿の場面などは、
それぞれとの時間を愛おしく感じるに十分なくらいキラキラしてて本当に良かった。
それだけにもっとヒロインと恋愛したかったなとも思う。(忍ルートもそこで終わらないで先を書いてよ…笑)
そんなわけで、
思ったより泣けなかったけど、
確かな青春感とそれなりのメッセージ性のある佳作かなという評価です。