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lein2709さんのはるとゆき、の長文感想

ユーザー
lein2709
ゲーム
はるとゆき、
ブランド
あかべぇそふとすりぃ
得点
59
参照数
136

一言コメント

(GiveUp) 終わり良ければ総て良し、にはなれない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ネコルートクリア、小羽ルート一応クリアで放棄
途中放棄のためあまり参考にならないレビューです。

たしかに雰囲気はいいです。
死と生の境界線のような舞台設定もいいですし、未練を晴らすという題材も嫌いじゃないです。
絵で見るよりもヒロインは皆可愛く、立ち絵もコロコロ変わって愛着が湧きます。

何が合わなかったかっていうと、多くの方が言っているように展開が読める、
その上であからさまな「死」とか「別離」を容易に扱った「お涙頂戴」展開が繰り返されること。

あと、単純に人物に魅力が感じられなかったです。ヒロインもサブも含めて。
まことさんとか何がいいの??
人のことを信頼せずに「心配」なんていううすっぺらい言葉で綺麗に飾る、
駄目な大人の典型だと思うんですけど、、、

何が一番いかんって成長してないんですよね、この人。しかもそのことに気づいていない。
生前で人に厳しく当たりすぎて弟子を辞めさせてしまった。
そこまではきっとわかってるんでしょうけど、そこからの深堀りがないというか、
小羽への態度をみているととにかくこの人は人を信じることができない、
俺が俺がというタイプ。
どんなに腕が確かでも、そのままだと誰かに何かを教えることに向いてないんですよ、おそらく。
20年以上も「ゆき」で何してたのさ、この人は。
そう思った瞬間に、冒頭で雰囲気が良いと言っていた舞台丸ごとうさん臭く見えてしまって、
こういう人を許容してしまう環境の何がいいんだろう?
未練とか言ってないで、成長できない死人はとっとと消え去った方がいいんじゃないか
ここまで思考が至った段階で自分の頭の中でストップがかかりました。

もう一つ全体的な違和感として、
この死と生の境界のような場所において、みんな落ち着きすぎじゃない?
普通だったら死の恐怖に怯えたり、そのあまりにおかしな行動を取ったり、
あるいはまだ死んでいないとして悪あがきをするような人がいてもおかしくないのに、
なんかそういう生への執着とか絶望感をたやすく飛び越えすぎていて、
全体的に感情移入が難しかった(よってキャラが好きになれなかった)です。
これだとせっかくのテーマであるはずの死生観が軽い。
そういうものって生きているものへのリスペクトがあってはじめて成立する類のものだと思うので、
その辺の考え方が根本的に合わなかったかな

一応個別ルート感想

ネコルート 85点
こうなるってわかっていても、演出も相まってぐっとくるものがあります。
ネコの中にある、その大半を占める想いは、
母親に無理やりにバイオリンをさせられて自由に生きられなかったことへの後悔や恨み。
そのこと自体に嘘ではないのに、一番大事な未練の部分は
そんな両親にもう一度自分のバイオリンを聞いてもらいたいっていう、
まるで孝行娘のようなささやかなものだったことに
ネコというキャラクターの神秘性を感じましたね。
家族が大好きだった自分、それも消えずに美音子の一部だったんでしょうね。
最後の一言で母親に消えない傷を与えてしまったという未練にはなっていないけど、
美音子にとって重要であろう後悔が、主人公との別離では繰り返されずに、
二人の物語として閉じているのもなんかいいですよね。
きっと未練を晴らして、「お帰り」になるっていうのはそういうことなんでしょうね。
物語としての着地点は平凡なので、そこまで点数は高くしていませんが、
鈴の音みたいにネコの、美音子の声がいつまでも耳元で鳴っているような、
切ないけど温かみのある読後感です。結構好き。

小羽ルート 61点
地雷を踏んだ。
「死」とうか、別離をもって綺麗に終わらせれば、どんな汚い人間でも
なんとなく綺麗に見えるだろうっていうお涙頂戴な感じが明け透けて
イライラしてしまった。
小羽も素材はいいのに決めるべきところでも決めない流され体質でもったいない。
やたら評判いいけど、まことさんそんなに魅力的かね?
なんか年の功みたいなものを感じないというか、
悪い意味で他人のことをまったく信じていない、
人の上に立つと人を勘違いさせてダメにするタイプの
駄目な大人の典型という感じで個人的には非常に不愉快だった。
時の経過や失敗を経て、反省して良い方に代わっていくのが、人のあるべき姿だと思っています。
この人はこの世界にいたことによって、それができなかった、
結局生前にお弟子にしたことと同じことを小羽にしようとしている、
しかもそれを本人が自覚することなく、他者が会いにきたことにより
「俺の未練はこれだったのか」ってバカじゃないの??
どこに切り取っても、頑張っても、この話を綺麗に消化できない
そういう自分と相性の悪いお話だったなというのが正直な感想です。
考えてみると小羽の外見に対するコンプレックスの話も丸投げですし、
何がしたかったんだろう…

総合すると、彼氏に「死ね」と言って旅館に来た酒飲みの女の人のところをピークに
だんだんと作品全体と自分の考えの投射ができなくなった。
さらに小羽ルートでのまことさんの立ち振る舞いと、それを美化するような「お涙頂戴」な展開に
気持ち悪さを感じてしまいました。
自分のとらえ方がすべてだとは思いませんが、
面白い面白くない以前に「受け入れられない」
そんな作品でした。
手抜きとかではなく、誰かの魂のこもったものであるを承知で、
一旦置かせていただきます。

基礎点 36/50
熱中度 10/30
システム音楽等 11/15
補正得点 2/5
合計 59/100