幾つもの暗い夜を越えて
遥かなるニライカナイをやって、
何かもう一本Navelの作品をやりたいなってところで、
単発もので隠れた名作的な立ち位置で評価がよさげだったこと、
SF要素が程よくなじみやすそうだなと思ったこと、
みことのおっぱいにつられt…
諸々の理由にて手を取った。
これ隠れた名作はもったいないよ、もっとみんなやろうよ!!
・メイン舞台となる「伊奈モーターズ」と愉快な仲間たち
ここだよなあ…秋葉原のはずなんだけど、下町的な暖かさが溢れてる。
良くも悪くも人間くさいヒロインたちとその仲間たち、
さらに可愛いオートマタちゃんとオカン的オネエ。
ネタに走りすぎない程度に日常パートがはじけてるのも良かったし、
それぞれ凄くキャラが立ってるので、
誰と誰を組み合わせてもおいしくなる感じで
終始飽きることなくプレイできたように思う。
・キャラが立ってる、人物の描き方が素敵
キャラクターのつけ方にわざとらしさがなくて、
でも程よく理想的でとてもいい。
あくが強いのに不快なキャラが一人もいなかった。
特に好きなみことを例にしてみると。
一見適当に見えるけど、めちゃめちゃ繊細でいろんな感情をため込んで生きている。
そういうものを飲み込み切れない自分が許せないからって
周りと壁を作るために適当な自分を演じ切ることを隠れ蓑としている。
これがね、直接的ではなくて、行動の節々からこぼれ落ちる感じが
本当に愛しくてたまらなかった。
他にも警察って立場に縛られて自分の言動自体に懐疑的になりながらも
自分の正義を貫いて突き進む舞花だったり、
ぼんやりと再生していく心の中で芽生えた感情を解読しながら
自分のなしうることを考えて動く初音とか、
それぞれのキャラの性格に沿って、思っていることが
「なんとなく」わかる感じの塩梅が絶妙だった。
終わったときにはみんな大好きになってた。
・オートマタと人間の関係性から見える人間の脆さと強さ、それへのメッセージ性
主に最終章の話になってくるんだけど、自分はこれが本作のテーマなのかなと思っている。
人間の弱点って何だろうって考えたときに、死ぬことではなくて、
ずっと取り返せない後悔を抱えて生きていくことなんだろうなと気づかされた。
伊奈モーターズに届けられたときの初音がそうだし、
最終章でニースが宗介に課した罠の正体がそう。
いくら周りが仕方ないと言っても、自分の働きによって損なわれてしまったものを
人はずっと引きずるようにできている、そんな風に思った。
その救いとして電脳になった楠葉がいたのかなと思った。
彼女は宗介に生きて欲しいと問いかけていたけど、
読み手への「過去に罪悪感を覚えなくていい、好きなように生きていいんだ」
そんなメッセージなのかなと思った。
もう一個、人間の強さについて
エピローグで力を使い果たした宗介に対して、それぞれの本当の気持ちや
これからに向かう言葉を口にして聞かせる場面があった。
そうやって、少しでも良い明日とか、前向きな平穏を望む力が
ここだけじゃなく宗介の信条としても描かれていたなと思う。
いろんなものが壊れたりなくなったりすることがあるけど、
「心は死んでいなければたいていのものは直せる、どこからでも未来は作り直せる」
そう信じられることが人間の強さなのかなと思った。
以下各ルートプレイ後感想
事件解決まで 91点
大前提として凄く面白かった。主要キャラクターあっとさせられるように隠れた顔があって、それぞれが見せ場でその顔を活かして大活躍といった感じだった。司令塔と舞台設定がみこと、フロントマンであり切り込み隊長が舞花、その二人に情報を与える参謀が宗介とオートマタ、そして未来を拓く扉の鍵が初音といったところだろうか。それぞれに主役だし、それぞれが裏の顔を持つトリックスター、そういったキャラパワーに負けない、誰かひとりがやらかしたり、存在しなかったりしたらこの解決はあり得なかっただろうと思わせるようなぎりぎりの展開とシナリオ(それを象徴するかのように選択肢一個ミスると強制バッド)、読み物として、この上ないくらいにハラハラさせられたし、何度も驚かされた。読み進めるのが辛くなるような人間の悪意を感じる部分も多くあったが辿りつけてよかった。
この後のルートで解決されるかもしれないけど、初音の両親が被害者かのように描かれているのが凄く気になっている。上大月も最初から両親を駒として使うつもりだったようだけど、どんな状況であれ、娘を役立たずと罵倒して、あげく金銭のためにその脚を売れと迫る親が被害者だとは個人的には思わない。初音がそれでも両親を愛して、二人に生きていてほしかったと感じているのが答えなのかもしれないけど、読み手としては正直腑に落ちないので、この先のルートで彼らを「赦せる」ような展開が欲しいなと思ってしまった。
全体として強く印象に残るのは初音の成長かな。「自分」を生きることを恐れ、諦めていた彼女が、心の身体の脚を取り戻し再び自分の道を歩みはじめるまでの物語というのが一つのテーマだと思う。ただ前向きになったって書くだけじゃなく、描写が細かくてそこも素敵だった。こうしていれば喜んでくれるだろうみたいな、自分の内に芯がない人特有の心理判断だったり、役に立たなければ捨てられてしまうという恐怖からくる建前の気遣いだったりとか、そういう踏み込みにくい部分にもズバズバ切り込んでくる感じが容赦ないなと思った。そんな彼女が終盤には両親の呪いから解放されて普通の自由や普通の幸せを手にいれて、「迷うことのできる自由」を享受していると思うと、嬉しい気持ちになる。ぜひ両手を広げてこの世界を楽しんでほしいなと思った。
ヒロインルートでも書く予定だけど、みことと舞花の正反対な感じも見ていて楽しかった。性格として優しいのは舞花なんだけど、善良な人間らしさを捨てきれないみことも相当魅力的。ルートが楽しみ。
舞花ルート 87点(比重少な目)
ルートに関してはとりあえず恋愛ルートを作ったよという感じなので、あんまりここでの加点も減点もないかなというような印象。強いていうならば、人間一つの行動やきっかけで大きく運命が動く瞬間ってあるよねという感じだと思う。いつでも恋人になれる関係ゆえにここまでなれなかったのかなと思った。
舞花というヒロインについて少しだけ。本作において舞花とみことは対照の存在として描かれているのではないかと思っている。まっすぐなのが舞花で、歪んでいるのがみこと。舞花については、警察という組織が宗介や初音にとって敵になりうるかもしれないというジレンマや葛藤が凄くあったのだろうなと思う。立場上知っていても渡せない情報があったり、自分のやっていることが果たして彼のためになっているのかという疑念がずっとあったり、抱えているものでいうと初音以上だったんじゃないかなと思う。
その中でも立場を上手く使い分けて、時に知的に想像力を働かせて、時に野生的に事件の渦中に飛び込んでいく姿はどこまでも好感だった。もたらした成果としてはみことに比べると少ないかもしれないけど、彼女がずっと諦めなかったからこそ、いろいろな物事が止まることなく動き続けた、そのことが彼女に一番の功績なのかなと思う。
恋愛面だと意外とえろかったなと…、あとずっと食い意地張っててとんでもない量を平らげてたのが個人的に可愛かったですね笑
みことルート 93点
非常に萌えた!こういう人間臭いタイプの人大好きですね。
あっけらかんとしているように見えて凄く繊細で、たぶん脆い。
そういう自分を許せないからって、自罰的に人を引き離すような態度を取っちゃうタイプ。
でも、そこまで人間根本から変われないし、気になるものは気になる。
だから、世話を焼ける口実が降ってくるのを
しっぽを振って待っているような凄く憎めない人、可愛い人って感じがとても良かった。
物語シリーズの戦場ヶ原に対する貝木の態度に近いなとも思う。
宗介サイドから見ていると、付いたり離れたりで舞花ほどずっと一緒ってわけじゃないから、
知らない彼女の顔にちょっとやきもきしたり、逆に変わってない根本の部分に触れて、
安心できるような感じのほどよい距離感が凄く心地よかったですね。
恋愛面で見ても、一見宗介が追いかけてるようで、みことも宗介のことが相当好きなんだろうなあ…
内心普段の態度で愛想を尽かされないかびくびくしてそうだし、
喧嘩とか長続きしなくて、しおらしく謝ってくるタイプなんだろうなとか、
色々想像して萌えまくってる。
身体の関係になってから、ちょっとでも肉を落とそうとして運動してみたり、
可愛くないですか?乙女じゃんってね。恋愛面だと素直になれない不器用な人って感じ。
最後の引き留めのシーンもみことに対する理解というか、
どういう言い方をしたら彼女が気持ちよくなれるのかをしっかり理解しているし、
みことも理解されていることを理解して、彼女らしく身を預けているのが、
心通じ合っている感じで良かった。
「落としてやったぜ」「落とされてやったぜ」みたいなね笑
いやーいいキャラだ…そしてえろかった。Navelで一番えろいんじゃないかな??
ちゃんと学生時代から胸が成長していて、こういうかき分けが地味にありがたいなと思った笑
こういうお互いを理解して
気持ちよくなれるように転がし転がされを意図的にやりあえる関係って凄く理想的で
うらやましいなと心から思った。
初音ルート 85点
ちょっと長かったかな。
他の二人は物語が始まる前から下積みがあって、
付き合う付き合わないがスイッチ一つという感じなのに対して、
彼女はゼロからだし、助ける側助けられた側っていう心理的ギャップもあるから仕方ないんだけどね。
単純に読み物として読むと少し中だるみした感じはあった。
自分を助けてくれた人としての好意から、異性としての好意へのステップアップを
凄く丁寧に描いているなという印象を全体的に受けた。
お互いの目的を果たしたから終わりという関係ではなく、
家族として継続して一緒にいるために、ただ自分の境遇を押し付ける(拾ってもらう)のではなく、
宗介の過去にも踏み込んで、そこに何か自分が与えるんだって意識が感じられた。
特に宗介の身に事故の後遺症でたとえば手が動かなくなったら、脚が動かなくなったら、
自分がその代わりになるって言ってる場面が凄く印象的だった。
同じような経験をしているからこそ響きあえる対等な立場の二人として、
歩み続けてほしいですね。
最終章 97点
蛇足かと思ってたけど、とんでもなかった。凄く綺麗なシナリオの総括。
宗介へのニースからの絶望与えられた、
多くの人や大切な人を殺した者としての罪悪感、もしくは自分の肉体の死
その両方を「人間を救うべき存在として存在」としての
アンドロイドが人間(宗介)を抱きかかえて乗り越えるような
そんなアンドロイドと人間のそれぞれの使命と絆の物語に仕上がっている。
しかもこれらって初音が伊奈モーターズに来たときに抱えていた罪悪感とも一致していて、
なんか初音という存在を通じて、
「過去に罪悪感を覚えなくていい、好きなように生きていいんだ」
っていうメッセージなのかなと思った。
エピローグは
「心は死んでいなければたいていのものは直せる、どこからでも未来は作り直せる」って感じかな
舞花は本当に健気で直接的な献身と前向きな夢、
みことは自罰的かつ重く、でも暖かい人生を掛けた覚悟、
初音は同じ苦しみを味わった者だけが伸ばすことのできるぬくもり
とでもいっておこうかな…全員大好きだ。
<全体の感想>
隠れた名作にしておくのがもったいない!!
Navelらしさもあるんだけど、それが味付け程度になるくらいにシナリオパワーに溢れた
正真正銘の名作だと感じた。
初音の両親が許されてよかったのかなってのと、
主人公の過去に対する描写が不足していて若干唐突に感じたことくらいで、
キャラ、シナリオともに高いレベルでまとまった素晴らしい作品だと思う。
ブランドの中だとつり乙、ライターだと9 nineなんていう、
非エロゲーマーでも知ってそうなビッグタイトルがあるせいで目立たないけど、
中古でもかなり安いし、Fのセールのまとめとかでも見たことあるので、
多少重い展開があってもいいよってくらいの人ならやって損はないと思う。
推しヒロイン:みこと
基礎点 47/50
熱中度 27/30
システム音楽等 13/15
補正得点 5/5
合計 92/100