時間を超えて紡がれ繋がる、星を愛する心と幼い約束の物語
幼なじみがメインの純愛作品で、星をテーマにした作品
こんなの面白くないわけがない!と夏頃に買ったパッケージを温めに温めやっとプレイ
結果、ほぼみたかったものが全部見れたという印象です!
大きな感動こそないものの、仲間とともに一つのものを作り上げていく達成感や
幼い日の約束やそこから始まった人間関係が時や個々の成長を材料にして、
新しい関係へと変化していく様子を追体験していくようなプレイ体験は
本当に極上のものでした。
最初に不満点を言っちゃうと、
一部なんでとりあげないのかなって設定があることと、
明らかにFD前提の積み残し、積みヒロインがいることかな。
一個目は、ころなの家が厳しいみたいなところが案外さらっと終わったなってのと、
ひかりがアマコーにいるときに「おとなしい子だ」っていう他己評価のこと。
なんかなかったことになってるような気がして、いつか回収されるのかなと思ったら終わっちゃった…笑
二個目は、まあ言うまでもないというか、
もちろんヒロイン4人ってのは適切なんだけど、
明らかにヒロイン級の深みがありそうな女の子がいっぱい出てきて、
結構当時リアルタイムでプレイしてた人達はやきもきしたのではないかという面も含めて、ね!
本作の一番の魅力は、「4年」という絶妙な歳月とそれに伴う変化にあると思っています。
何も変わらないでいるには長い、けど思い出のように記憶の奥底に想うには短い
この10代における「4年」の歳月の意味の大きさをみずみずしく描いていることが最大の美点であり、
唯一無二の魅力といっていいのではないでしょうか。
実際に作中でも4年の間に良くも悪くも変化しています。
かつて住んでいた村はダムの底に沈み、街は発展して星を見る機会が薄れ、
商店はコンビニになり、かつて憧れだった先生はニートになり…笑
そして一緒だった幼なじみたちも少し成長した姿を見せてくれます。
タケちゃんはいじめっ子から主人公の親友になり、
ひかりが巨乳になり、沙夜はそれほどでもなく、
そして暁斗くんは星を見なくなっています。
成長して変わらないものもあれば一見変わってしまうものもある。
そういう現実が4年もあれば生まれてくるわけです。
こういったものに対して、昔に戻ろう!というアプローチをわれわれはとりがちだし、
実際そういう内容の小説や漫画はたくさんあります。
でも、本作のアプローチは
「今あるものをよく見ることで変わらなさを見出そう」なんです。
なんかこっちのが上手くいく気がしません?実際そうなんです。
大人のふりをしてたって、誰だって子供のような心を持っているかもしれないし、
なんとなく疎遠になってしまった友人だって、昔一緒に遊んだ楽しさを忘れているわけがないと思うのです。
そして、そういう感情はえてして、「見つけて欲しい」と思っている。
こういう人の心の仕組みと星を見ることを本作では掛けているんです。
都会の空は明るく、星なんて見えない、でも星がないわけではない。
明かりを消せばたしかにそこに存在し、また星たちも見つけて欲しいと思っている、ということです。
こういう目には見えないものを見つけようとすること、見つけて欲しいという声に耳を傾ける
そういう心を優しさと定義するメッセージ性
そんな暖かさが本作の魅力なのではないかなと考えています。
以下、パートごとの感想
共通パート(プレアデス1号のファーストライトまで) 97点
めちゃめちゃ好きですね。
現時点で今までやった作品で一番好きな作品になりうるかもって思えるくらい好きです。
ひかりがいなくなってからの「4年」って歳月が絶妙ですよね。
この青年期における4年は本当に大きい。
ひかりが「飽きちゃった」と言っていなくなってからの日々の中で、
本人たちの望む望まないにかかわらず色々なものが変わった。
一番大きいのは「星」に対する見方。
3人なら何だって見えるようになる、星にだって手を伸ばせば届く、
そういう全能感に包まれていた過去の時代。
そういう風に思わせてくれていたひかりを文字通り失ったことで、
星に手が届かないという当たり前の現実を悟るようになった、
星を見るとそのことを思い出してどこにもいけないような気持ちになるんでしょうね
だから、「星を見ない天文部」になってしまった。
そういうある種一度灰色になってしまった主人公の世界
それがひかりが帰ってきたこと、織姫にむつらぼしの会の復活に誘われたことをきっかけとして、
止まったままだった「こどもの頃の続き」がまた動き出す。
そういう再出発の物語なんでしょうね。
色々刺さるものはあるんですけど、
プレアデス1号のファーストライトの部分は本当に感動的だった。
そこに至るまでの過程でひかりとの仲が元に戻ったりした一方で、
ダムに埋まってしまった街とか取り戻せないものにも出会っているんですよね。
きっと主人公として、3人に戻れたことで
自分のその当時の気持ち(どこまでもいけるみたいな全能感、届かないものに手を伸ばす勇気や想像力)は「どちらなのか」って想いがあったんじゃないかな。
一度覗いてみたときはやっぱりだめで、変われなかった自分への失望感が溢れるなかで、
美晴先生が「あんたのひかりだって今、手の届くところにいるじゃないか」と
けして、主人公を導いていたものは損なわれていないと気づかせて、
織姫や咲夜やひかり、そこにいる参加者たちが望遠鏡の故障を装って、
「私たちはここにいるから、あなたにここにいて欲しい」と伝えてもらったことで、
星に手が届く感覚を取り戻すことができた、まだ星が見える自分を自覚する。
全体的に周りの暖かさに支えられて深く埋まったはじまりの姿を取り戻したような描写は、
いつまでもキラキラしていたいと願うすべての人の心に刺さる気がしました。
そこからOPの流れも完璧だよね…本当に最高でした。
各ヒロインの印象について
…ころな
妹分的なポジションで、3人と一緒にいられなかったことを悔やんでいる。
3人が再出発であるのに対して、彼女の場合は新たなスタートなんですよね。
あと、星に関しても素人で綺麗なものだから知りたい見たいと思う、
かつての主人公たちが持っていたものをそのまま今持ち合わせているものだから、
彼女の純粋な感性が主人公や他の人の心を救うのかなと思っています。
…織姫
変人枠かなと思ったけど、それだけじゃないものがありますね。
部室での外泊のパートが印象的でしたね。
主人公もどこか違う存在としてみていて、
実際に抱えているものなんかの性質も全然違うんだろうなと思います。
先輩ってこともあって、ひかりと同様に短い期間で離れ離れになってしまう関係
そこに対してどう二人が結論を描くのかといったところかな。
…咲夜
通い妻ちゃん、オッドアイの美少女、そりゃ人気投票一位になるよね…笑
ひかりも主人公も彼女を庇護の対象として見ているようなきらいがあるけど、
実は結構芯が強いタイプで二人が離れそうになったときや望遠鏡を隠されたときなんかに、
一番声を上げて、3人の関係を守ろうとする、強い思い入れを節々から感じます。
おそらくひかりの手前、恋仲になることにも抵抗を示すでしょうし、
変わらない関係を望むようなタイプなのかなとも思います。
4年前と同じように、変わっていくもの変わらないもの、
取り戻して持ち続けるもの、見送ってしまうもの、それぞれに整理をつけて
どう結ばれて、うごいていくのか、
幼なじみならではの楽しさと難しさがありそうな気がします。
…ひかり
真打でしょう。彼女がいるからこそ暁斗は星に手が届くわけだから、
彼女なしにこの物語は存在しえないと言っても過言ではないと思います。
幼なじみの魅力満載って感じで大好きですね、個人的に。
4年の歳月を経て、かつてのガキ大将がバスト91センチの巨乳美少女になって帰ってきた
それだけでファンタジーじゃないですか…笑
どんなに乳がでかくなっても彼女の中ではきっと何も変わってなくて、
主人公の変わらない部分、美しい幼さみたいなものを引き立てて輝かせてくれるんじゃないかなと
とてもとても期待しております。
、、、無防備なデカパイでいっぱい楽しませてくださ…略
咲夜とひかりの風呂のシーンは衝撃でしたね…
幼なじみを飛び越えた幼なじみという感じ、
本当に何でも晒せる許し合える関係って感じでただただうらやましい。
幼なじみおっぱい拝みたいです…笑
ころなルート 87点
ヒロインの属性的にたぶん作品の谷になるんだけど、普通に面白かったです。
共通の時点で主人公の問題は解決してしまうんだけど、
そこから派生する続きの物語として、ころなと歩んでいく感じが非常にいいと思う。
ハイライトとなるのは沙夜との関係かな。
毛嫌いしていた宿敵を経て親友に。お互い同じ人が好きで、ひかりみたいに魂の色を持って能動的に暁斗の「好き」を引き出せない似た者同士として上手く描かれているなと感じました。
だから自分自身と同じくらいに好きだし、自分と同じだけ嫌いで、好きな部分も嫌いな部分も共有して分かり合える絶対的な絆が芽生えていく感じが凄く良かった。
その後は受験だったり、流星電波観測だったりを通じて、ころなが夢中になれることを探す展開に。
わりとここから平坦なので90オーバーにはならないけど、
望遠鏡で観測できない流星だったり、人の気持ちだったり、
目に見えないものこそ、見つけて欲しいと思っている
それを見つけていこうとする気持ちが
天体や人の謎を解き明かして、知らない世界に連れて行ってくれるみたいな、
共通から続く、見えないものを見ようとすることが生み出す物語の続きが
このルートにおいても描かれ続けているのは、
人や環境が変わっても3人でいた幼少期の続きを、
プレアデス1号を作った再会の日の続きをずっと生きていることを
意識できるようなシナリオになっていて、
なかなかに感慨深いものだったと思いました!
織姫ルート 88点
ひかりの代わりにみんなの導き星になろうとする月の女神様の物語。
暴走機関車と呼ばれるいわゆる学者タイプの子ですね、
澄ましたと思いきや一度走り出すと止まらない、凄くノリのいい、ちょっと残念な美少女。
前に立つというよりは一人でそういう世界にのめり込む方が好きなはずだけど、
むつらぼしの会復活の発起人として、特にひかりがいなくなってからはその代わりとしても、
会の先頭に立ってみんな導き星であろうとする姿が素敵だった。
要所要所で「脚をガクガクさせながら」交渉の場に臨んだり、
本当は寂しいのに、そのことを見せないように気丈にふるまったり、
そういう弱さを表で見せない強さみたいなものが魅力的だなと思いました。
その分、裏で暁斗や吉岡ちゃんに対して甘えたり、一人の女の子としての弱さを見せたり
凄く信頼されているようでそこのギャップにもぐっときましたね。
恋愛関係においても意外性というかアンバランスな感じが可愛かったです。
騎乗位やお尻揉んだりを嫌がるくせに、お掃除フェは喜んで何度もやってくれたり、
人並の恥じらいがあるなかでたまにとんでもなく大胆な行動に出るので、
不意を突かれるような可愛さ、エロさの破壊力が計り知れない。
あと、どんなに気持ちが高ぶっても、家族や周りとの約束に律儀であろうとする姿勢も好き
恵まれた家庭とはいえ、彼女のそういう誠実さがあるからこそ、
むつらぼしのみんなも家族も信頼してくれるのでしょうね。
シナリオ的に凄く深いものがあるわけではないけど、
いい恋愛を見ることができたなあという気持ちになれる良いルートだと思いました。
沙夜ルート 93点
掛け違えてたボタンを元に戻して、元の3人に戻るまでの物語
時間の経過によって変わってしまう、失われてしまうものもある、
けれど、よく見ると残っていたり、心がけ次第で取り戻していけるものもある
それが発する「観測して欲しい」という信号に気づくことから始まる
そういう作品全体のテーマにも触れるよく作りこまれたお話という印象です。
もともと付き合っていたような距離感からどのようにステップアップしていくのか
手の内を知り尽くしている、慣れてしまっている。
温め続けたがゆえの弊害のようなもの ドキドキよりリラックス
そうだったのが、ちゃんと大人の階段を上っていく感じが良い
なんとなく見ていた沙夜の可愛さが何倍にも主人公の中で膨れ上がっていく感じが良かったです。
時間の経過ってものを色々な形で描いてますよね。
沙夜が3人でいた日々のことを思い出して、それが離れれば離れるほどに
取り戻したいと願う気持ちもそうだし、
それとは別の方向で、暁斗のことを男としてやっぱり好きだ、
でも自分ではなくひかりを選ぶだろうという気持ちもそうだし、
さらにいえば、ひかりがいない間に自分がしてきたことへの後悔、
「ひかりがいたらもっとうまく暁斗の心を救うことができたのではないか」という気持ち。
その一方で自分なりに暁斗を支えながら感じた
本当は星を見たいと考えているが見ることのできなくなった暁斗を痛ましく思う気持ち
そういう積もり積もったものが沙夜の心を何度も折ろうとするけど、
3人でいた日々のキラキラした時間だけが忘れたくないという気持ちだけは
沙夜が失うことはなかったですよね。
星が好きなのかはわからないけど、それによって仲間を得て、
たくさんの楽しいを感じて、新しい自分に出会えた、
その想いだけは本物だった、そのことに気づくことができたんでしょうね。
最後の星空と自分の思い出をリンクさせてるところがいいですよね。
過去から星の光が届くように、過去の思い出がずっと沙夜の背中を押し続けているみたいな。
個人的に美晴先生の活躍がはじめて見られたのも高ポイントです…笑
ひかりルート 96点
圧巻。見たかったものがほとんど見ることができた。
沙夜ルートであっさりうまく行きすぎじゃないと思っていた
「明るい夜」のためのプロジェクトがこちらではかなり深堀りされていましたね。
もちろん苦労もあったけれども、その分だけこちらの方が規模がおおきくて、
まるで宇宙のビックバンみたいに、3人から始まったアルビレオの原風景が
万人の夢みたいな一夜に繋がっていくがたまらなかったです。
想いがちゃんと伝わって、3人の思い出とか夢みたいなパーソナルなものが
その領域を飛び越えて、人を呼び集めて、とんでもなく遠い場所へ運んでいくような
幼少期の全能感をそのまま突き抜けた夢のようなシナリオは
最後までわくわくしてたまらなかったですね。
SNSから他の天文部に伝播して、みたいなところとか
一度折られそうになったものをさらにさらに大きな力で
まるっと包み込むような、
人のつながりや「好き」という気持ちの持つパワーの大きさを
強く強く感じて凄くいい気持ちで読めるシナリオでしたね。
恋愛面もまあなかなか。
沙夜が全体的に引きすぎというか、囚われのプリンセスすぎて
このルートだと魅力がいまいちってのが、唯一残念な部分ではあるんだけど、
ひかりに限ればまさか自分にその矛先が向くと思っていないところからの
不器用な好き避けからはじまり、沙夜に気づかされるような形で
自分の気持ちに気が付いて、結ばれるまでの物語は良かったですね。
エピローグ最高ですね、時間が流れても人の心は変わらない、
失われてしまうものがあっても、それを取り戻そうとする人がいる限り
星は応えてくれるってことなのかもしれないですね。
だから、古代でも現代でも人は星に惹かれるし、
そこに意味なんかをつけたりする、そういうものなのかもですね。
<全体の感想>
温めた甲斐があった!
共通パートの暁斗の救済まではほぼ満点、ひかり、沙夜のルートも魂と言っていいでしょう!
他二人のルートもけして外れというわけではなく、純愛ものとして読み応えのある良いシナリオと言えます。
とにかく作品を包んでいる「見えないものを見つけようとすること」というテーマが
すっと自分の中で落ちるものがあって、それが綺麗に人間関係に、星見に、
コミットしていく感じがたまらんかったですね。
ヒロイン、キャラは言うまでもないです。特徴的なのにうざさがなく、大変雰囲気が良い。
凄く泣ける場面(言い換えればドラマチックすぎる要素)がないリアル志向の物語なのに飽きない。
星空を効果的に表現した演出も素晴らしく、じっくりとしたシナリオの進みもあり、
キャラたちと一緒に共通、個別それぞれで目標に向かっていくようなずっしりとした達成感も味わえます。
とにかくおすすめしたい作品。
特に、幼なじみ好きの諸氏はマストプレイレベルの名作だと思います。
推しヒロイン:織姫、ひかり
推しルート:ほぼすべてだけど、一つ選ぶならひかり
基礎点 47/50
熱中度 29/30
システム音楽等 15/15
補正得点 5/5
合計 96/100