シナリオ的には桜花ゲー、だけど理屈で語れない良さがある。
まじでヒロインが全員魅力的すぎる。
その一段上で桜花という素晴らしいヒロインがいる。
桐月さんのゲームは気になっていたんですが、
なかなか手に取る機会がなく、何気に今回が初めてでした。
やる前に調べた世間の評価としては
桜花ゲー(公式)、共通はそれなりに面白いが、個別で失速する。(そのなかでも雫はまあまあ)
グランドの完成度は高くて、ライターファンにも好評。
こんな感じでした。
ぶっちゃけ全部その通りだなあ…というのがフラットな評価にはなります。
題材的にもっと風呂敷を広げられた感はあるけど、
桜花(と少し汐音でも)以外ではそれをせずに、
キャラの魅力を描くことにリソースを割いたという印象です。
その辺が薄味たるゆえんなのかなと思います。
ただ、薄味なだけで不快ではないし、退屈でもないとは思いました。
大きな展開を期待するとちょっと外れる感じはありますが、
起こる事件やエピソードはそこそこですし、
常に桜花が相棒のようにしてそばにいてくれるので、
共通の時点で彼女のことを気に入っていれば、
そこも薄味なりに楽しくプレイできるはず。
さらに極限まで毒を抑えたことにより、
ヒロインの魅力が際立っています。
おおむね変なヒロインはおらず、それぞれに個性的でもあるので、
一人くらい刺さるんじゃないかなとも思います。
「安心感のあるロリ巨乳風幼馴染の汐音、
キツめに見えてめちゃめちゃ優しい秘密の共有相手麗奈、
行動力があって、主人公の能力を邪推することなく受け止めてくれる頼れる先輩雫、
マスコットに見えて芯の強い頑張り屋の陸部後輩女子涼子
そして、やたらと頭が切れて、可愛くて、かっこいい、さらに巨乳、最高の同居人桜花。
それぞれに本当に魅力的で優しい気持ちになれる、癒し系。」
これ共通時点で書いたんですけど、ほぼこの印象のまま突き抜けます。
キャラの魅力を最大限に映すという観点でこの個別は正解だったのかなと思います。
物語が大きく動くのは汐音ルート辺りから、
人の記憶を映し出す「鏡石」
主人公道隆くんの他者の痕跡が「色」として見える能力
不思議なことが起こりまくる街の正真正銘の幽霊「桜花」の存在
それぞれの話が平行しながら絡み合っていきます。
どれも面白い内容でしたし、
特に人の記憶に関する部分が
桜花と色々な謎を解きながら、仲間と親睦を深めてきた部分ともリンクして
ちゃんと重みをもっていて、考えさせられるというか、
自分たちの世界はどうだろうと思わせるシナリオになっていたと思います。
その流れで紡がれるグランドは圧巻でしたね。
自分の場合はとにかく桜花が大好きになっていたので、
こんなにも街に根付いて誰からも愛されている、愛おしい存在が
どうか幸せになってくれという想いでぐんぐん読み進めることができました。
ここを読まないとただの萌えゲーも終わってしまうのですが、
いい意味で大事な部分が最後まで残っていることもあったり、
とにかくキャラが魅力的なので、かなり熱中度の高い作品になりました。
気になった部分としては、
シーンがやたらルートの後半に固まってたのと、
そもそもシーン自体が短く非常に義務的に入れている感じがしたのと、
せっかく「色」なんて題材にしてるんだから、
それを活かしたような、例えば画面や背景上に、
その道隆くんが見ている痕跡が見えたりすると
より事件の一つ一つに臨場感が出て面白くなったのかなと思います。
以下個別ルート感想
共通ルート 92点
癖がなくて、それでいてそれなりに事件が起きて、飽きずに読みやすい。
ヒロインそれぞれにちゃんと好感の持てる共通ルートのお手本のような流れ
安心感のあるロリ巨乳風幼馴染の汐音、
キツめに見えてめちゃめちゃ優しい秘密の共有相手麗奈、
行動力があって、主人公の能力を邪推することなく受け止めてくれる頼れる先輩雫、
マスコットに見えて芯の強い頑張り屋の陸部後輩女子涼子
そして、やたらと頭が切れて、可愛くて、かっこいい、さらに巨乳、最高の同居人桜花。
それぞれに本当に魅力的で優しい気持ちになれる、癒し系。
捨てられたネコの首輪と学園の幽霊騒動が軸になって、
桜花荘の中から繰り広げられるちょっとした謎解きのようなシナリオは、
読んでいて飽きがこないし、
チャンスをうかがってしっかりと主人公をからかってくる桜花が本当に可愛い。
二人だけでやっていた探偵ごっこのようなものが幼馴染な先輩を巻き込んで、
当事者たちの想いを取り込んで大きくなっていく感じもいい。
物事に対してびしっとした解決を求める人には合わないかもだけど、
(真実はこうだったってところで満足してしまうので特に問題解決にはならない)
個人的には誰も傷つかないゆったりとしたこの空気感がすごく好き。
涼子ルート 85点
あっさりしてたけど嫌いではないかなあ。
過去のいじめられていた経験から、
出る杭になることを避けてしまう。
頭で自分の得意なことをわかっていても
自己表現をすることをためらってしまう、
そのことに対してどことなくやりきれなさを感じている。
自分の本当に思う自分自身との距離感に悩んでいる感じが
青いな、可愛いなって思いました。
そんな彼女だからこそ、まっすぐな自分を、その色を見て、
それを好きだ。綺麗だと言ってくれる存在に惹かれたんでしょうね。
主人公に懐きまくってる感じがシンプルにキュンとしました、かわいい!
麗奈ルート 84点
人間万事塞翁が馬、とでもいいましょうか。
過去にあった良くないことや降りかかった不幸が、
そのままとは限らない。
それが思わぬ方向で物事の本質を見抜く鍵になったり、
今の人を結び付ける幸福のきざしになったりする。
もつれていたと思っていた人間関係はお互いが遠慮をしていただけだったり、
変わってしまったと思っていた麗奈の父も
主人公以上に事故のことを気にかけてむしろそこに囚われていたり、
過去の薄れていく記憶や感情に振り回されるのではなく、
今のその人や物を見てあげることで今まで見えなかったものが見える、
そんなお話だったように思います。
過去を今に顕現するものとして主人公の力が使われているのが
面白かったですね。
麗奈が認めてくれた力を使って、麗奈とその家族を事故から解放するような終わり方は
王道ながらよくまとまっていたなと思います。
麗奈は終始めちゃめちゃいい子でしたね
若干桜花に似ていてキャラを喰われている感があったのがあれですが、
失うことによって得られるものもあるのだと、
主人公の手を涼しい顔取り上げて進めてくれるような、まっすぐさは
ずっと変わりませんね。
雫ルート 86点
本来フラグが立つこともなく、深く交わることのない雫というヒロインのそれを
主人公の行動や働きかけによって、詰めていくような独特の質感のあるルートでした。
雫というヒロインの性質そのものが、
クラスの友人とのいさかいや雫のルーツとなっている鏡の謎を探るエピソードを通じて
だんだんと主人公に馴染んでいくような、距離感の描き方が魅力的でした。
関係性を深めるには共通の問題を共有することってことですかね。
そこに解決があるかということが問題ではなくて、一緒に向き合うなかで
うわべだけの付き合いだけでは見えてこない本当の雫が見えてくる。
それらと自分が抱えている「色」のことだったり、桜花をはじめとする目の前の起こる
不思議現象の数々だったりといった手札と何か「つながり」があるように思えてくる。
そういう「思い込み」こそが雫がこれまでの人生で意識の外にしていた
「恋愛」の種なのかなと思いました。
ところで「鏡」は結局何だったのだろう?感覚的にはわかる気がするけど
結局答えが出ないままに終わってしまった。
「色」が人の記憶や存在の蓄積ならば、自分自身のそれを見せてくれるファクターという感じかな?
だから閉じ込められた先の世界は結局自分のなかにあるもの。
だからそこにある「ほころび」もよく見れば気づくことができた。
こんな感じに解釈してますが、それだけじゃない気がします。
まあなんにせよ極限状態で吊り橋効果のようにして、
お互いを高めていく機能としては十分だったかなと思います。
汐音ルート 88点
なんかあっという間に終わってしまった!
ここまでのルートに比べると表現が直接的で話が分かりやすかったなって印象です。
汐音自身に関する深い描写は少な目で「石」にまつわる秘密やそれを中心としたエピソードが
テンポよく並べられていくようなルートでしたね。
「石」自体はもともと桜花荘にあったものってことが明らかになったけれども、
やっぱり主人公の能力も「石」に由来するものなんでしょうね、きっと。
ちょっとずつ「石」のことがそれぞれのヒロインや登場人物を形成する要素になっているような
ネタ晴らしの塩梅が上手だなと改めて思いました。
汐音自身のことに関していえば、幼なじみならではの
長い時間をかけて温めてきた恋愛感情が「石」の力によって氷解して
関係性が前に動き出すような話でしたね。
他のルートでも明らかにこの子は主人公のこと好きだなというのは分かっていたので、
たとえ石の力でもこれで良かったんじゃないかなと思います。
要するに自分の記憶に押されて身を差し出したのならば、
そこで衝動的に汐音を走らせたのも汐音自身なわけで、
雫のルートにもあった自問自答の範疇なのではないかなと思います。
さらにルートの最後で、
幼い日に「石」で味わった恐怖心は主人公にカバーしてもらったから
今後は自分で解決するって言っていたり、
自分なりに「石」を撒いてしまったことに対して、責任をもって
過去の傷と自分自身を乗り越えようとしていく強さも見せてくれて、
何かと印象に残るヒロインでした。
桜花ルート 92点(桜花が好きすぎるので得点高めかも)
本当に桜花というヒロインが魅力的すぎる!
とっくに思いあって信頼し合っている関係性なだけに
やっぱり人間と幽霊っていう違いが一番の問題になってきそうですね。
どういう仕組みで見えているのかわからないし、
ある日突然認識できなくなる日が来るかもしれない。
そういう危険をお互いにわかっていながら、
思いつく限りでつながりを強固なものにしていこうとする二人の姿が
ここから先のグランドルートで報われるといいなと思いました。
特に桜花の視点からすると時間の感覚も忘れるほどの長い長い時間を
一人きりで泳いできたのだと思うと、
憑依を通じて好きな人との感覚を共有できたことで、
孤独から解放されて、自分が孤独だったとやっと知ることができたのだから、
その長い時間に終わりがきて、幸せな時間が始まるといいなと心から思います。
花の野に咲くうたかたの(グランド)95点
言うことないですね。凄く綺麗に締めてくれたなって感じです。
鏡石と道隆の能力と桜花の存在と、どうやって結びつくのかなと思っていましたが、
ひっくり返しつつも見たかった結末をちゃんと見せてくれたなって印象です。
他者の記憶からもたらされた景色だけじゃなくて、
道隆と桜花が能動的に生きて、人とかかわり
桜花と歩んだ毎日が、世界に桜花がいた足跡になって、
桜花の存在をつなぎとめた、そして道隆が
その存在を人として定義したことで桜花は人間になれた、
新しい「つながり」と変わらない幸せが始まる…。
ということなのでしょうね。
桜花の存在が消えた後に、道隆が探し回ってる場面で、
ヒロインたちがまるで自分のことに一緒に探し回ってくれる様子が
すごくすごく好きです。
その時点では不安定なただの幻のはずなのに、
道隆だけでなく、桜花の存在がそれぞれの心のピースとして、大切な友達として
刻まれているんだなあと思うと、目頭が熱くなりました。
登場人物同士の雰囲気の良さや世界観の暖かさが
そのままこのグランドエンドに込められた感情の大きさに繋がっていくような
理想的な物語の帰結だったように思いました。
桜花荘のみんなに幸あれ!!
<全体の感想>
シナリオを客観的にみると大きく世間の評判と変わらないです。
やっぱり桜花ありきのゲームだし、それ以外の部分は薄め。
でも、理屈で語ることのできない部分で本作凄く好きでした。
いわゆる「キャラが魅力的」「雰囲気がいい」ってやつです。
ヒロイン、脇役含めて全員に好感が持てましたし、
扱っている小テーマが日常に沿ったものが多いので、
すっと感情移入できる感覚が強くありました。
そこにプラスして物語が動きだすとやっぱり面白いですし、
思い入れの強い子ばかりなので、
なんとか幸せになってほしいという想いで、
最後まで熱中して読み進めることができました。
フラグメントシステムや読み進めることで発生するお楽しみ要素も多く、
飽きることなく最後までプレイできました。
とにかく雰囲気もよくて、
おわらないでくれ…という気持ちでいっぱいになれます。
機会があれば二周目やりたいし、
とりあえず5/19まで待って、桜花の誕生日シナリオを読まねば!
推しヒロイン:全員!!(だけど一段上で桜花が素晴らしい)
推しルート:汐音→桜花→グランドの流れ
基礎点 44/50
熱中度 29/30
システム音楽等 13/15
補正得点 5/5
合計 91/100