文章で伝えるのが難しい、よい意味での雰囲気ゲー
OPまでは本当に100点だと思った。
それだけに期待値が上がりすぎたかなというのが全体的な感想
人の心の波を読み取ることができる青年:終が、
心に壁を持つ少女の永遠と出会い、交流を始める部分から物語がスタート
終にとって人の心は生きていく上でのノイズでしかなく、
それに悩まされていたなかで永遠の存在は自分を普通の人にしてくれる特別なもの
やがてひかれあい付き合うことになる二人。
しかし、終こそが永遠の心に壁を作った張本人だった。
その時にも同じ能力で彼女の親の気持ちを暴き、彼女の家庭を壊した
そのことを終はひどく後悔をし、永遠はそこから人の心の醜さを知り、
人の心とふれあうことを遮断する壁を心のなかに作った。
しかし、付き合った二人の関係のなかで永遠の心を探ろうと終は力を使ってしまう。
酷く悔いている傷ついているように見せかけながら、自分に力を使った終に対し永遠は
結局力に溺れているのはあなた、それがどれだけの人を傷つけているのか知らない。
と一刀両断し、彼に別れを告げる。
別れ際に彼にキスをして、その本心を告げることもないまま、
日がたつにつれて永遠は外見や表面上の性格を変え、終から遠い存在になっていく。
「一番に知りたい人のことが知れない」能力のジレンマに永遠は終を落としいれたのだ。
ここまでが共通パート
改めて読んでも面白いなと思う。
これを踏まえたうえで3人のヒロインとのルートに入っていく感じです。
以下各ルートのプレイ中のメモ書き
●真響ルート
永遠との対比がとにかく綺麗。
良くも悪くも閉じ込めようと閉じこもろうとする永遠に対して、
真響は終を外に出そうとしてくれる。
能力に対しても永遠は不幸だ(だから傷つかない私でなければならないという想いが後ろに引く)と言う一方で、
真響は彼の優しさから生み出された、人の心をわかりたいと思う気持ちが昇華した
神からのギフトだというし、終はヒーローだと信じている。
そんな真響を永遠は危ないといい、何度も忠告をしにくる。
終が真響に自分の能力のことを踏み込ませないようにと重ねていた嘘から
一時は自分が永遠と違って頼りないから傷ついてしまうから踏み込めないのではないかと離れることになるが、
乗り越えて恋人同士になる。
恋人としてふれあいながら、彼女は彼の能力を変わらず肯定し、「居場所」になっていく
一方で終の方も彼女を守りたいという前向きな気持ちが人の心の波におびえる気持ちを上回り、
徐々にその「呪い」克服していく
最後の祭りの夜に永遠が気持ちを確かめに来るが、
終は真響とともに外に出る、前に進むことを選ぶ。
振り返ると凄く純愛めいた、信じてくれた幼なじみの横で、能力を受け入れて変わっていく王道っぽいお話
ところどころで永遠のエピソードを挟むことで彼女と違う方向に吹っ切れていく、
真響によって救済されているのだとプレイヤーに気付かせる仕掛けが見事。
付き合うまでが長く若干ダレるようにも思うが、幼なじみだからこそ多くの時間が必要だったのかなとも思う。
●はるかルート
嘘つきの彼女が「嘘つき」であり続けるために
本当の心を様々な感情で塗りつぶして生きている彼女
快活で少し変な子だけど人気者
何よりも本が好きで終のファンだという。
そんなエピソードから彼女との恋愛劇は始まる。
永遠とはちがった意味で心を読ませない彼女に対して、
終は居心地の良さや永遠と似て非なる影を感じる
さらに快活で人気者な性格ゆえに、
2年の時を経て永遠を中心にこじれてしまった身の回りとの接触点になってくれる。
そんな彼女に惹かれていく。
一方で彼女には彼女の思惑があった。
小説を読みたいがために永遠ともう一度くっつけること
最初は助言を送るようなことをしていたが、
やがて彼の能力を知り、小説を書いたいきさつを知るにしたがって
「自分が舞台に上がること」を考えるようになる。
そして、身体を交えて、寸でのところで突き落とす。
永遠がやったことを再現しようとしたのだ。
しかし、読めない永遠と違って、
彼女の心は「読ませない」ようにしていただけ、
終はその裏にある悲しみに気付く。
そして、作戦の果てに終を突き落とすように振舞う彼女、
しかし、終にその悲しみは見抜かれてしまう。
本当に人の心の機微が読めるのだと知った彼女はひどく動揺し逃げ出す。
そこで終は彼女に何があったのかを知るために動き出す。
そうして探していくうちに、彼女は正直に生きていたころのトラウマで
本当の自分を嘘で隠し、自らの理想を作り上げることで溶け込んでいる存在であると確信する。
その裏で誰も本当の自分を愛さない、自分でも到底好きになることのできない
そんなことに「悲しんで」いた。
そんな彼女を小説をネタに引き釣りだし、彼女の正体を知っていること。
それでもずっと彼女を愛する自信があり、本当の自分として甘えたり泣いたりしてもよいと告げる。
そのことは彼女の「悲しみ」を消すには十分であった。
人間関係を進めるために嘘は必要だし、それは心を癒し、守ることに繋がる。
だが、それだけでは人は悲しくなってしまう。
だからこそ、本当の自分を読み取ってしまう、彼こそ「はるか」には必要
「はるか」は自身の「心のカギ」を託した。
今日もはるかがはるかであり続けるために…
●永遠ルート
2ルートから続くような形で進行
電車のなかにいて、永遠の声を聴くところから物語がスタートする
その永遠が語る、2年前に終との関係を終わらせたことへの後悔、
いつだって、終をエンパシーから助けるために必死であったと。
変わっているようで彼女の心は本当は何も変わっていない
心のかべの問題は未解決のまま、
終はそれを聞き、後悔をずっと続けるべきではないと考えた。
そのことから彼の小説の第3章として現在の永遠と自分の関係をベースにしたぱっぴーエンドのストーリーを描いた。
永遠としてもある予感を感じていた、そしてその小説はあまりにも今の永遠のことを理解した内容であったという。
恋はしたくないが確かなものが欲しい
家族を壊したことを許されたい、永遠を救いたい、求めたい
⇒結婚
そうしてハイスピードで関係を深めていく二人
しかしそのことが彼女の救いになっているのか、「救えたこと」になるのか
永遠の心はずっと変わらず心の壁に囚われたまま、
そのことが他人とかかわりたくないという気持ちが
壁の内側にあった、彼女の感情ごと消してしまおうとする。
そのことを予期して永遠は常識を外れた距離の詰め方をしていたという。
そんな心の余命宣告を受けた永遠の心に残されたのは悲しみだけ、
どれだけエンパシーを働かせようと触れられない彼女の心
家出のとき、2年前
永遠にとって、幸せは悲しい結末に行きつくまでのプロローグだった
どこにも行けない彼女の壁の内の心は終着駅についてしまった
それでも「今」はまだある心を救おうと奮起する。
仲間の力を得ながら、心の中の永遠の心と対話する。
そこに残されていたものは終への愛情だった。
ずっと電車の中で声をかけてくれたこと
踏み込まないでといってもずっと踏み込んできたこと
表の世界での幸せな二人の生活
それらが心の壁の内側に愛情を育ててきた。
それが終からの何度目かの告白を受けて力を得る。
壊れてしまう心の内側から救われることになった。
これはハッピーエンドではない、
永遠の名前を持った彼女との
果てしない物語のプロローグにすぎないのだ…
永遠のルートでプロローグで広げた終の能力に対する風呂敷をもう少し回収して欲しかったなあ。
プロローグで非常に盛り上がっていただけにそこが残念だった。
他ルートでは能力によって、ヒロインの嘘を見抜いたり、
あるいは能力そのものの受け入れ方の側面で永遠と差別化したりするんだけど、
何故か永遠ルートだけは能力に対する気持ちのぶつかり合いがなくなって、
それが当然のように用意した舞台と現実世界をベースに物語が進んでいく感じが
あまり個人的に釈然としなかった。
これ巷では「永遠ゲー」と呼ばれてるらしいけど、
個人的には逆で他ヒロインのルートの方が楽しかったかな。
とはいえ、永遠ルートなしには語れないし、
永遠ルートは永遠ルートで光るものも多かったのも事実。
急転直下的に始まる新婚生活は、
単純にヒロインのことが可愛いなと思ったし、
永遠の内心の焦りを裏打ちするには十分な仕掛けだったと思うし。
二度、永遠と関係が断絶していることによって、
彼女が心の壁をより強固に、人との接触を避ける防衛機制に入ったというのは説得力があった。
あとはタイトル。
二度悲しい結末で終わってしまった有限の幸せは、
悲しみへのプロローグだという趣旨の永遠の発言はぐっとくるものがあったし、
心の壁から解放された彼女がもっと幸せになりたいと無邪気に望む様子は見ていて凄く嬉しくなった。
それだけに永遠ルートの序盤とそこまでの流れの結合だけがどうしても気になってしまう。
まあ、2年歳月経ってずるずるというのも違うかなとも思いつつ、
やたら再開後は距離感が近いし、、うんなんかもうちょいやり方があったような気がする。
まあ、そういう気まぐれでめんどくさいところも永遠ちゃんの魅力なのかな、、笑
全体的にはminoriなので演出も素晴らしいし、それが物語の深みを与える要素にもなっているので、
言葉で伝わらない魅力のある作品であることは間違いない。
きっと実際にプレイしてみると印象が変わる作品だと思うので、気になる人はぜひプレーして欲しい。