灰色になってしまった未来から過去を取り戻す「ノスタルジア」
プレイ前のイメージとしては今につながるパープルと元となっている作品
という感じでプレイしました。
キャラがそれぞれによく立っていてなかなか楽しくプレイはできたかなと思います。
「魅力的だけど攻略不可」が多発する系の作品だなと思いました。
特にかなたが攻略できないとは…
シナリオの重みとしては
皆さん言っているように双子はかなり薄めで
詩と伊織も個別自体はそこまで大きなことは起こらないです。
(後者二人は物語におけるキーパーソンではあるのですが)
杏奈ルートに関して思ったよりあっさりではあったけども、
未来編に関しては圧巻の出来といえるかなと思いました。
ここのパートがあるからこそ、杏奈の強い気持ちに説得力があるし、
彼女の行動が未来の光景に支えられてのものだと思うと、自然と感情移入してしまいました。
それぞれのキャラがよく立っていて学園内での自然な絡み合いもよく、
「あの頃は当たり前だと思っていたけど振り返ってみると輝いていたあの頃」感が
まさに「ノスタルジア」といえるのではないかと思います。
未来編でみんなバラバラなっているのが凄く心に来たし、
残されたあんなに天真爛漫で本能のままに生きていた詩が、
人並に悩みを抱えてぼんやりとした後悔を抱えた大人になっていたり、
いろいろと「戻れない日々」への焦燥を掻き立てられました。
以下個別ルート感想
日奈乃ルート 82点
前評判でいらないと言われまくってた双子一号ちゃん
日奈乃がわりと好みの属性だったので、それなりに楽しめたけど、
そうでないと正直退屈だと思います。
日奈乃がモデルをすることへの必然性が足りないというか、
家系を楽にしたい、自分の株を上げることで陽一を喜ばせたいの一本なのと、
日奈乃自体が飄々としているので、
シナリオのインパクトとしてどうしても低くなってしまうのがなあ。
かといってシリアスを入れればそれが正解とも思いませんが。
かなたとの疑似恋人関係は…よくわかりません笑
オチは結構気になりますね。
この日奈乃を選ぶ世界線自体が杏奈が当初に描いていたものとは違う、
いわばバッドでもハッピーでもないアナザーエンドって感じなんだろうけど、
それさえも本人たちの努力によって塗り替えることができると、
前向きな感じに終わるのはいいと思いました。
日奈乃は可愛かったですね。おっぱい大きくて見た目も好きですし、
淡々とした態度で当たり前のように甘えてくる感じが癖になります。
自分をまともだと思ってそうだけど、周りから見るとちょっとずれてる、
でもそんなところが憎めない、いいヒロインだなと思いました。
野乃 82点
日奈乃ルート似たような感じかなと思いきや、
後半結構物語が動いて面白かったですね。
ただし、ヒロインとしてみると日奈乃に軍配なんですよねえ。
この二人を足して2で割るといい感じの一本のルートになる気がします。
野乃からすると自分を救ってくれた力を自分自身の特性によって消してしまう
この先どんな困難が訪れるか分からない
結ばれることで今まで守ってくれたものもなくなってしまう
それでも相手のことを信じて、ついていきたいと思う気持ちが
約束された場所よりも高い場所へと二人を連れていく。
こうして書いてみると結構いい話だったなあって気分になりますね。
主人公がこのライターらしいヘタレ具合なので、そこは好みが分かれそうだとは思いますが、
伊織の好感度が上がったのでこれはこれでOKかな。
詩ルート 86点
まだまだふわふわしているけど、確実に杏奈が「仕事」をしたルートですね。
杏奈のいた未来ではどんな悲恋があったのだろうか。
両親みたいに大切な人と言っていたし、未来の詩の姿が杏奈が未来からやってくる
鍵となっているのは間違いないのではないかなと思います。
キーとなってくるのはリセットでしょうか。
平穏で平和な日々を捨ててでも手に入れたい陽一との未来が見えたから、
停滞を捨てて、変わり続けることを受け入れた。といったところでしょうか。
杏奈と友達になったことで、いつか杏奈に会いたいという気持ちが
立ち止まろうとした詩の世界をまた動かすことにもつながったのかなと思います。
なにより詩の成長具合が素晴らしい。
楽しみに迎えたい未来ができたからこそ、
変わらないもの、変わっていくものを全て受け入れて前に進んでいこうとする、
卒業のシーズンによく合いそうなルートだったなと思いました。
伊織ルート 87点
何もかもが「見えている」少女の人生を掛けた初恋の物語
まさか再会系だとは思わなかった。話自体は分かりやすくて王道的展開だったかなあ。
伊織の視点からすると酷な展開ですよね。
自分の初恋の成就が自分の能力の暴走、ひいては自分の「終わり」に繋がってるんだから、
きっと自分のいない未来に向かう「線」みたいなものが見えていて、
その先に自分がいないと分かっていながらも、
隣に陽一のいる「今」を紡いでいく選択を繰り返してきたんですよね。
まさに命を懸けた初恋といった感じですよね…。
結構途中まで絶望感が溢れていたのに、杏奈の力であっさり解決してしまったのが、
少し肩透かしだったけど、
道中の絶望が、伊織が隣にいて当たり前に続いていく日常の尊さと搔き立てていて
今手元にある日常を大切に、損なわれてしまった杏奈との出会いに馳せながら、
見えない未来に向かって進んでいく結末の読後感は非常に良かったです。
杏奈ルート 90点(現代編86点 未来編95点)
このルート、というか未来編以降から感じられるエモに、
この作品の価値の半分があるんじゃないかってくらいそこの瞬間風速が素晴らしかったです。
時間の経過が置いて行ったたくさんの喪失に囲まれて生きる、
絶望するには少し足りない飼い殺しのような悲しい未来があって、
そこで思い出が残した余熱に縋りつくようにして生きる陽一の姿を見て、
この人を幸せにしたいと感じる杏奈に感情移入できるからこそ、
未来を変えようとする彼女の行動に心が動かされるのですね。
あと、大人になった詩との再会シーンは凄く好き。
過去に対して思うことがあっても社会や対する反発力を失って、
言いようのない後悔と寂しさを抱えたまま大人になっている感じが凄く伝わってくる。
杏奈が守ろうとしているものの重さが際立つ。
結末へ至るまでの過程がちょっと強引だなって思うのと、
伊織の死とのつながりを想像力で補うしかない点が少しあれだけど
二人分の絆で結ばれた杏奈とまた出会うことができてよかったなと心から思いました。
<全体の感想>
そこそこ面白かったんですけど、意外とシナリオ自体の印象は薄くて、
一番印象に残っているのは未来編で感じたみんないなくなってしまったことへの喪失感と
それを見つめる杏奈の視点だったりします。
その物語(というか杏奈が過去に飛ぶきっかけとなる)原点の部分が
一番切なく胸に来るという。
そこから変わっていくためのメイン部分も悪くないんですけど、
全体的にご都合主義感強いのと、大きく谷となる展開がないので、
そこまで入りこめなかったなというのが本音だったりします。
とはいえ、ヒロイン脇役含め登場人物たちの魅力はばっちりですし、
その輪の中のいるような楽しさを感じられれば
ある程度楽しく読める作品だと思いました。
ヒロインとしては詩が意外と好きになりました。
学生時代のナチュラルクズ感もいいですし、
大人になって女性らしく綺麗になっていく変化を楽しむことができるのも
本作の魅力の一つになるのかなとおもいました。
推しヒロイン:詩、伊織
推しルート:杏奈(未来編)
基礎点 42/50
熱中度 25/30
システム音楽等 13/15
補正得点 5/5
合計 85/100