二つあった世界が一つになるその日まで
これが中央値70か…
たしかに結末がわりと投げやりだし、何度も繰り返す日常は退屈に感じると苦痛でしかないし、
妥当といえば妥当なんだろうけどねえ。
悪いところというか、こういうのが嫌いな人は向かないってのがはっきりしている
さらに言うとそれが相まって初心者向けではない作品かなと思います。
まず、テンポの悪さ。無駄に長い!
共通もルートも8割以上が何もない日常がひたすら続きます。
物語がちゃんと動くのが終盤2割だけという構成がもったいないなと感じました。
個人的にはこの日常パートがそこそこ楽しめたのが一番の救いであり、
本作との相性の良さだったかなと思います。
全ルートを最終ルート(メモリア)くらいの長さにまとめて、
メモリア以降のお話があったら、もっと評価されていただろうなあと思います。
あと、ぶっちゃけキャラにあまり魅力がないように思います。
当時どういう風に受け入れられたかはわかりませんが、
パッと見てこの子人気出そうだなってのが正直あんまりないです。
一応メインはハルナになるんだろうけど、犬だし…正直地味だし…
ハピメアの舞亜とかアマツツミのこころ、ほたるのような
分かりやすいトレードマークになるような人気キャラがいたら、
化けた可能性はなくはないのかなと思います。
<個人的評価ポイント>
私の場合は結構日常パートが自分の感性にピタリとはまってくれたのが大きかったです。
たしかに何も起こらないんですけど、なんか楽しいんですよね。
友人キャラのサイコっぷりが楽しいし、
香奈実やアリサのほんわか組、ハルナ、智枝の研究所組で
それぞれで味変ができてなかなかいい感じでした。
拾われたって主人公設定や智枝やハルナの境遇になぞらえた
家族の暖かさを感じられるようなCGや場面が多かったのも高評価ポイント。
終わってみれば悪役がいなかったです。
みんないいひとでそれぞれに一生懸命に幸せになろうとしている。
そういう登場人物たちの静かな日常というのは
退屈以上のぬくもりを自分に与え続けてくれたなと思います。
あと、読み応えが絶妙。ほどほどにわかりやすいSF要素で飽きが来なかったです。
ここのレビューで主人公が何者なのかって視点で読むと面白いって書いてあったけどその通りで、
ゆっくりゆっくりと物語や舞台全体の真相が見えてくる感じ、
ヒロインとの関係が何なのかってのが分かってくるような、
核となる部分のシナリオの見せ方が上手だったと思いました。
以下、プレイ中の感想
共通+ハルナ(一周目) 92点
さすがに日常のグダグダが足を引っ張ってはいるけど、面白いです!
グダグダって言ったけど、個人的にはそこまで退屈でないというか、
それぞれキャラが立っていて、関係性を進展させながらそれに合わせて
それぞれの場面でキャラが上手く動いている印象でした。
根幹となるシナリオらしき部分の導入もばっちり。
主人公の記憶喪失を境にして、
そのあとの自分を救ってくれた智枝や由香里さんがいる一方で、
その前の自分を探してエステリアからやってきた恋人となったハルナ。
どうにかしてハルナが出会いたい自分に出会わせてやりたい、記憶を取り戻したい
そう思う一方で、たくさんの人に支えられている今も絶対に手放したくない。
主人公自身の葛藤もそうだし、
ある程度事情を把握して自分の知っている「コウちゃん」に出会えなかった寂しさと
こちらも世界で「宏一」として幸せをつかみかけているの彼の幸せを願う気持ちに揺れながら
何も知らないふりをして寄り添うハルナの心情が切ないと感じました。
メモリアってタイトルの通り、記憶とそれ付随する価値や手放すことの悲しさ
その辺が各ルートごとにかみ合って個別ルートになっていくのかなと思います。
特に智枝の姉も恐らくはかつての主人公と同じ状態になっているだろうし、
その辺でエモーショナルな物語が紡がれることに期待。
アリサルート 90点
アステリアとエステリア、そこを隔てるゲートという境界という不安定な要素に振り回されながら、
二人が隣にいられる未来を信じて突き進む恋物語でした。
ちょっと文量が多くて、無駄なパートが多いといえばそうなんだけど、
この主人公の性格的にこれくらいゆっくり関係性を進めていくくらいが自然かなという気もします。
フォルゼン(アリサの父)との対立のパートもけして無駄シリアスということはなく、
ゲートを絡めた別離の危機を経て、
ただの血のつながりの家族としてある、心のつながりを求めて家族になっていくこと、
アリサ自身に大切な人ができたことで、父親の気持ちに歩み寄っていく様子など
要所要所でぐっとくるものがありました。ニュースの演出も臨場感があっていいですね。
あと、結構いろんな情報が出てきましたね。
アリサの母はエステリアに迷い込んだ雪枝さんでしょうか?
あとはゲートが開く前にエステリアに踏み込んだのはおそらく主人公ですかね?
そこでハルナに出会っていたんじゃないかなと思います。
おそらくその主人公自体がゲートを開き別世界を認識したきっかけになっている、
そんな感じじゃないかなと思って読んでいます。
このアリサとアステリアの人間がエステリア突入への境界を越えたことが、
その時と同じように他のつながりを産むきっかけになっているような終わり方もいいですね。
香奈実ルート 88点
香奈実の設定ありきな部分と種明かしが早すぎたかなという感覚はあるけど、なかなか面白かったです。
そのぶんここまでに比べるとちゃんとヤマを感じられたのは良かったかなと思います。
宏一の幸せを想って、自分との記憶を抹消して、アステリアに帰すシーンは
香奈実の想いの深さが感じられてうるっときました。
それまでの日常シーンでも、記憶を失った香奈実の「わからなさ」と
記憶を保持している宏一の「やるせなさ」が何気ない部分に描かれているのがよいと思いました。
ルート全体としては記憶がどこに残るのか、単純にその人個人の中だけではなく、
その人が過ごした場所や出来事そのものにも残っていて、
覚えていないことでもそれに触れることで同じことを繰り返すことができる、
そんなお話が多かったように思いました。
記憶を取り戻しても同じにはなれないけど、
二人が二人である限り、何度でも恋をする。二人の間に流れる空気が好きでした。
智枝ルート 92点
面白かったです。
永遠に応援したくなるんですよね、智枝は。
姉の失踪から彼女が戻ってくると言い聞かせて、
それだけのために生きてきた智枝。
フォルゼンの言葉により、姉の死が決定的なものとなり、
生きる意味と大切な家族を失ってしまう。
でも、そのせいで見えなくなっていた智枝自身の幸せを考えるようになっていく。
姉のために生きてきた智枝が、姉の死をきっかけに
自分が今幸せになることを考えて、
どんどん等身大の女の子のように変わっていく感じは魅力的でしたね。
そうやって続きとしてやってきたことが
目標としてきたエステリアへの扉を開くきっかけになり、
結果的に姉のしたことの真相に気づくことに繋がるのも良かったと思います。
おっぱいでかかった…着衣ででかいってわかるけど、
それでも着やせしていると言わんばかりのぷるんぷるん具合でしたね。
しかもでかく見せてるんじゃなくて天然ものとしてでかいって感じが
伝わってくるような見せ方がおっぱい星人的に万歳でした…笑
柔らかそうな横乳の存在感に虜になったのは私だけじゃないはず
そういうところも含めて、
ツンツン系のしっかり者がどんどん女の子になっていく感じの変化を
存分に楽しむことのできる良いルートでした。
眼鏡がコンタクトになるのもそうだし、
開催されることのなかったクリスマスパーティーが開かれるエピローグだったり、
智枝が描いていたものを違うけど、ちゃんと辿り着きたい場所に
辿り着くことができる幕引きは非常に読後感がいいです。
ユウキルート 95点
まさか泣かされると思わなかった…。
このルートのもう一人の主人公であるサラの存在が抜群にいいです。
やたらユウキに対して、当たりが強かったり、
ケーキを出されて怒って逃げたり、かと思ったらユウキの作るオムそばを食べて涙を流したり、
「何かありそう」な感じしかしないけれど、
サラの正体を聞くと納得感しかないです。
次元や世界線を越えて、3人で幸せに暮らすことのできる場所を
探しに来るなんて、、、ねえ。
ちゃんとユウキの「姿」を取り戻すことができて、
この舞台となっている世界がサラにとっても、ユウキにとっても、宏一にとっても
たった一つの正解となっていくようなシナリオ運びは圧巻でした。
この世界線だとハルナはどうなるんだろう…それはトゥルーエンドにおあずけかな?
食卓でくしゃくしゃのケーキを囲んで幸せそうにしている絵とか、
最後3人で横並びで町を歩いているCGとか、
サラの叶えたかったけどかなわなかった世界がこちらで果たされて本当に良かったなと思いました。
memoria 95点
一周目のハルナルートと合わせた、物語全体の決着。
エステリアでのハルナとアイカとの日々のことから、一度目、二度目の別れ
アステリアでの智枝と由香里さんに拾われてからの日々、
そしてハルナと恋人になって、また別れるまで…
全部がつながっていて、同じ世界線のループしている。
だから一瞬ハルナは絶対に宏一と別れてしまう運命にあるのかもと思わせたところからの、
メモリアの統合による宏一の記憶の統合、それによって果たされるハルナとの約束
めちゃめちゃ感動的でしたね。
何か作品全体を通して、アステリアとエステリアどっち世界も素敵で
どちらかを選んでEDを迎えたときに、向こうの世界のことを捨てることになるんだよなあ
ってのはやりながら感じていた部分でした。
だけど、ハルナに関してはそうじゃなくて、
アステリアで恋人になったこと、エステリアで家族だったこと
その全部をもってハルナという一人の女の子に向き合うというような
結末として描かれているのがさすが事実上のセンターヒロインというべきでしょうか。
各ルートどれも良かったですけど、やっぱりこのルートが正史であってほしいし、
アステリアとエステリアの「ゲート」のない一つの世界で、誰一人いなくなることなく、
みんなが幸せに過ごしているといいなと思います。
<全体の感想>
ここでの評判を遥かに上回って楽しむことのできた作品。
構成に難ありな部分があるので、万人に進められるものではないかもしれないけど、
体験版の日常パートの雰囲気が好きならばぜひという感じです。
核となるメモリア関連の部分については、
パープルの他の代表作と比べても遜色のない面白さだと思います。
まさかユウキルートで泣かされると思わなかった…笑
そこからのメモリアでの物語全体の種明かしは圧巻でした。
欲を言えば、日常パートをもう少し削って、
メモリアの結末を正史として、その先が見たかったなとは思います。
結果的に登場人物が一番多く集まったのが、共通序盤のパーティーの部分だけだったと思うので、
サラやアイカたちも含めた、あの家での大団円を見たかったなと思います。
個人的には「ムーンゴースト」の次、「明日君」と同等くらいに
パープルでは好きな作品になりました。
基礎点 46/50
熱中度 26/30
システム音楽等 13/15
補正得点 5/5
合計 90/100