ErogameScape -エロゲー批評空間-

ldrudyさんのアオナツラインの長文感想

ユーザー
ldrudy
ゲーム
アオナツライン
ブランド
戯画
得点
75
参照数
885

一言コメント

ことねはいいだろう、ただし海希テメーはダメだ。合う人と合わない人で真っ二つに分かれる作品だと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まずプレイ前に合う人と合わない人を簡易検査するならば

・鉄拳制裁に至るようなコトならば、男であろうと女であろうと対応は同じく俺の熱き拳をぶちこんでやる

そういう熱き魂をもった人は終始いらいらしっぱなしだろう。

この作品をプレイして最初に感じたのは好き嫌いが分かれそうだなって感じた。批評空間を見ても高評価か低評価ではっきりと分かれてる印象です。
主な要因としては主人公と幼馴染の海希。あとは後輩か?
多感な学生時代を上手く捉えていて、そういう繊細な部分が好きな人には非常に良作。
で多分合わない人からしたら、幼馴染と主人公に対して何となくもやもやとした感覚をもちっぱになると思う。

海希は小さい頃から根本的には主人公の事が好きだが、中学生に上がると周りも背伸びを始めて海希も本音を置いて周囲に合わせて上手くやるという事を覚えている。
海希は学園では所謂カースト上位で、主人公は下位に見られている感じ。
主人公は中学生でも幼いというか、空気読めないという感じで周囲の海希と釣り合わないという反応を無視して、内心海希が好きだったこともあるが幼馴染として海希に接してきている。
それに対して恥ずかしさというか不愉快に感じた海希は主人公をたっくんと呼んでいたのを名字呼びしたり、遊びなどに誘われても私が周囲にどう思われると主人公を煩わしく感じていて、最後には心にもないことを怒りと共にぶちまけてしまい関係性にヒビをいれてしまうことになり、それがずっと後悔を残すことになります。
そして後に主人公の親友になる千尋が色々あって繋ぎ止めそこから仲良し三人組となっていきます。

で結局何だろうこのもやっとしたのは…ってのは多分海希のズルさでしょうね。
海希はありがちな理由とは言え、主人公と一緒にいることを恥ずかしいと感じたことは事実。
文章中でもありますが、それを後悔していくことになるとはいえ、千尋と主人公が仲良くなり自分もなぁなぁで仲良し3人組をしていれば主人公との間に入ったヒビも大丈夫になるかもしれないという期待や主人公の優しさに甘えたずるい展望を抱いていること。
そして謝罪の一つもなく仲良し3人組の一員をしていること、主人公もそれを優しさと捉えるなら長所でしょうが、逆を言えば何考えてんだお前は?となる人もいるでしょう。
勿論そういうズルさは意図して描かれていてある意味リアルな心情や機微にも見える。

しかしこれをどうにかして男女平等パンチをブチかましたくなる層を納得させるなら、やっぱり海希が変わったという場面をいれるか告白前にけじめをつけるイベントでも入れとけばよかった。
千尋は主人公と友達になる前は主人公を馬鹿にしていた同級生をただ眺めているだけだった、だけど友人になったことであいつを馬鹿にしたら許さんと自分が主人公と友人だと周りにしっかりと宣言をした。ここで千尋は主人公の友人となったわけで変わったのだ。

しかしこのヒロインは自分が原因で主人公が馬鹿にされたこと、自分の言葉で傷つけたことに対して内心で後悔してますと思うだけで何のアプローチも弁明もしていないのだ。
つまり主人公にとっての海希の本心はストーリー開始時点で要約すると

「お前は幼馴染面してるが、私に釣り合わない恥ずかしい存在で、たまたま親に仲良くしてやってくれと言われたから仕方なく接してきたわけだから仲の良い幼馴染面すんな」

のままとなっているわけで、
それを臆面にも出さず何故また自分と仲良くしてくれる?仲良し3人組をしているのか?と主人公が考えると
自分は邪魔者で海希は千尋狙いなんだろうという想像になっている。
それを周りから鈍感だというニュアンスで言われたり、海希に千尋が好きなんだろ?と聞けばひどいよとか宣うわけだ。贔屓目に見ても主人公が当時KYだった部分を除けば何も悪くないのである。
海希、こいつは凄まじい糞地雷女だ。やめとけ主人公となるのも納得だ。

で、あとは後輩のことねをイケメン親友の千尋が言葉攻めでふるぼっこにする展開があるのですが。
どう考えても後輩が100%悪い場面で、仲良しグループ内の2人の悪口を言った場面でそれを千尋が庇って、そこから口論に発展します。
千尋はことねの本質を見抜いた言葉を浴びせ、ことねは涙の撤退をするのですが、何故か周りから千尋言いすぎだ!とか批難されて何故か次の日謝罪させられます。いや、言い過ぎだってあんたら庇ってだぞ?
感覚的には言葉が過ぎるぞ!て事を言いたいのは分かるのだが、後輩のあまりにひどい言動をまず注意すべきで、悪口言われてへらへらしている二人が後輩を庇ったりと????となる。
通常なら(俺・私)のために怒ってくれてありがとう…でも…。なら分かりますが何故一方的にお説教を?
普通の感覚なら「は?」ってなると思う。主に千尋が、庇い損です。
ただことねは海希と違って、自分が駄目だということ、自分の過ちをしっかり戒め謝罪をして次に進むことができる描写がされていて成長が分かるため、ことねは単なる嫌なキャラで終わらなかったのだ。


海希悪口大会みたいになってしまったのだが、文章中でも海希はズルイという事を示すような文が何度でも出てくる。
なのでライターさんは意図的に海希を描いてるのでその点は狙い通りなんだろうなと感じます。
千尋も海希が主人公に言った幼馴染面すんな~的なくだりを知らないため、海希が主人公が好きで、主人公も多分海希が好きで俺が邪魔者なんだろうな~的な考えになるのも分かります。
というかこの件を知ったら千尋はことねにしたように、海希に正論ぶちかましてると思う。


【総論】

海希の筋を通さないズルさを、人間の備え持つズルさとして受け入れられる人はこれを青春物として上手く受け入れられる。
筋を通さないなんて俺は許さんぞ?という人にとっては主人公のなぁなぁ、海希のなぁなぁに対して終始もやもやしっぱなしで貴様ら許さんッ修正してやるッ!ドカァとしたくなるので文字通り合わないと思います。