紛うことなき名作。バグや誤字、多少のご都合主義が見受けられるものの、それを補って余りあるシナリオの完成度。紙の上の存在を、愛することはできるのか。
詳しい中身については何人もの方がすでに素晴らしいものを書いてくださっているので、特に言及しません。
ただ、今年プレイした作品の中では、本作が確実に頭ひとつふたつ抜けていました。trueルートは少し微妙な気もしましたが、そこに至るまでの過程では幾度も驚きを味わわされます。悲しいまでに凄絶な恋愛物語。シーンの密度こそありませんが、18禁であるからこそ語りつくすことのできた物語のように思えます。読後感、というよりも、物語を読み進める中で何度も人の在り方について考えさせられます。
つまるところ、これは遊行寺夜子という少女の成長物語です。主人公は語り手に過ぎず、その他のヒロインも彼女のために存在し、存在させられています。特に理央の扱いは不遇といってもよいものなので、ヒロイン全員が幸せに、といった展開を望む方には注意が必要かもしれません。しかし、夜子のために在るヒロインたちの物語もまた秀逸であり、特に月社妃ルートは息を飲むものでした。アダルトゲームに数多い、妹を扱ったルートの中でも、出色の出来です。
人を選ぶ作品ではありますが、とにかく素晴らしいのひと言に尽きます。プレイして駄作と捉えるか名作と捉えるかは人によるでしょうが、間違いなくプレイして損をするようなものではないと思います。