厨二ゲーではあるが戦闘ゲーではない。戦闘を期待すると地雷。非常に惜しい作品。ラストは人によっては泣ける。
ネタバレを含む批評の前に簡単な概要を。
まず初めに、厨二ゲーではあるが燃えゲーではないとだけ。ラストは泣ける(人によるが)。
熱くなれるような作品を求めているのならばlightの神様シリーズや、ライアーソフトのスチームパンクシリーズを推奨。
バトルシーンはあっさりしており、作中でも他の超能力系のゲームと比べてチートレベルの能力を持つキャラは登場しない。最終ルートの優真と、優真ルートのラスボスくらい?
物語全体の出来としては素晴らしく、山谷があり飽きずにプレイすることができるが、細かい部分でシナリオの詰めの甘さや「いやここでそれはねぇだろ」というのがある。
ただそれに関しては気にしなければいい程度かもしれないので、表面的にプレイするのであれば充分に楽しめる。
またルートに関してですが二人の主人公どちらからでも始めても良いと書いてありますが、個人的には優真ルートを先にプレイ推奨です。
優真ルート終盤でようやく明かされる謎を、赫ルートの序盤や中盤で簡単に読めるレベルの伏線で出てくる。
作品の内容的にはよくある厨二設定が色々詰め込まれている感が非常に否めない。
その部分さえ許容できればその人個人としては神ゲーになるんじゃないかと。
作品全体の総評としては名作になり損ねた良作レベル。
他人に強く推すほどの作品ではないが、興味があればプレイして後悔することはない。
キャラも個性的ながら良いキャラデザが揃っており、キャラに惹かれてプレイするのも悪くはない。
以下、ネタバレ含む批評
・優真ルート
超最強で超最狂で超最凶のアイドルのリノン様と厨二病占い師のなるちゃんがヒロイン
どちらの主人公にも言えるが、最近流行りのクソなハーレム鈍感主人公とは違い、キチンと筋が通っており優真に関しては本当に最後までそれを捻じ曲げずに戦う。
食べるために殺す。殺したなら蚊だろうが蛙だろうが食う。食べないのならば殺さない。
言ってしまえばよくある不殺の主人公なのだが、「基本的には」この設定がうまく生きていて、悩むことなく最後まで守り抜く辺り信念の強さだったりが見えて良い。
何よりも家族を大切にしていて、なるのエピローグやナグルファルの夜にもそれが見られる。
ラスボスに関してはシンプルながら基本的に最強レベルの能力で、その上で自分の弱点を理解している点には好感が持てた。
ただし倒し方が呆気ない。ここの部分が個人的に非常に残念でならない。
どう倒してどう話まとめるんだと注目していたら、結局は感情論で片付けており肩透かし感がひどい。これであればナグルファルの夜ルートのように主人公の能力が一部覚醒して浄化なりなんなりした方がよかった。
ただラスボスを倒し終えた後のなるの説得のシーンは素晴らしい。
シーン的にも流れ的にも好き嫌いが分かれるシーンだが個人的にはツボ。その後にひまわりの伏線張って終わった辺りもいい。
ラスボス戦で落胆した後だったのでプラマイゼロくらい。
優真の信念が基本的に良い方向に働いているが、そのせいで良い展開を潰しているところが少なからずある。
全体としては非常に好感は持てるが、たまにマジで空気が読めてない下ネタ発言があるのは勘弁してほしい。
・赫ルート
美月ちゃん超可愛い。
まあノエルと美月がヒロイン。
個人的には赫のルートの方が好き。
赫の性格もあって、優真ルートとは違いややギャグ寄りなところはあり、戦闘や葛藤に関しても特殊なところが多いので優真から続けてプレイしても楽しめた。
特にラスボスなどはいないがシナリオ的に鍵となるものが多く、ヒロインとのイチャイチャで緩急をつけれていて良かった。
優真とは違い確固たる信念があるわけではないが、日常の中で赫が内面的な意味で成長が見える物語。
よくも悪くも優真は成長しないのでどちらのルートが好きか、というのは人によってハッキリ分かれるだろう。
ファントムの二重の伏線は素晴らしかった。
・ナグルファルの夜
正直このルートがなければ凡ゲー、地雷ゲー扱い。
伏線をすべて回収しつつ、優真と赫それぞれの考えがぶつかる。
この辺りが非常にうまくできており、どちらの意見も分かりどちらにも感情移入がしにくい。ここが面白い。
始めた時の赫がひまわりを抱いているシーンもここで回収。
リノン&美月VSルージュが戦いの始まり方から流れ、まとめ方まで個人的には全部ツボだった。
主人公の能力が覚醒しているシーンがギルティクラウンと完全に一致しすぎてて笑ったのは俺だけでしょうか。
まあ能力覚醒のシーンが人によって泣けるところ。個人としてはちょっと泣いた。
ジャンルで分けるとするならばKeyの奇跡の泣きに近い。まあ奇跡ではなくこっちは筋が一応通ってるのでご都合展開というわけではない。
・全体として
厨二ゲーとしてやはり熱さが足りないと言えば足りない。能力も単純なので、余計にただその能力を出すだけでなく工夫をしてくれれば戦闘はもっと楽しめたとは思う。
炎を操る、音を操る、風を操る。ここまで単純ながら応用が利きそうな能力が揃っていながら全員が全員ただそれを出すだけというのはいかがなものか。特に音に関しては中盤以降その設定がほぼ生きていない。
優真以外別にどんな能力でも良かったんじゃ・・・と思えるレベル。
物語の全体の作りとしては素晴らしい。ただ戦闘やその他の部分で知識が足りない感はある。
長い時間がかかるが、興味があれば触れてほしい作品ではあった。