一般参考評価:79点 個人評価:95点 信者補正あり。個人的にツボに嵌りました。
この世界には秘密がある。このゲームの序盤で提示される言葉なのだが、
全クリしてこの世界の秘密を知り、二周目をすると様々な発見ができる。
恐らく一周目では理解不能な場面のが多く、一周だけで理解したい人には
評価が落ちる作品だと思われる。事実オレも一周で終わりにするタイプで、
このゲームの評価は、二周目をやるまでは少し低かった。(=一般参考評価)
もちろん、一周だけでも十分楽しめるレベルであると思う。
仲間たちとの掛け合いはかなり楽しめたし、ミニゲームも面白い。
余力があれば一周終えた後に考察サイトを読み、二週すると良い。
(このブログでも一応リトバス考察は書いてあるのでそちらを見てもOK)
一周でも、話自体は分かる作りになっているので、つまらないというほどではない。
CLANNADを超える感動を~と、その部分だけに期待してプレイすれば
大して面白いとは思えない作品になると思う。
Keyの作品である事を意識しすぎない方が、このゲームは楽しめる。
個別ルートの出来は、さほどよろしくないが、各ルートをクリアした後に
プレイできる、Refrainシナリオは神と言っていい。
ただそれ以外にも、日常のリトルバスターズのドタバタ劇は十分楽しいし、
ミニゲームなどによる演出なども、リトルバスターズらしくて良かったです。
こういう仲間同士で、和気藹々と楽しむという空気が好きな人には、
非常に良いゲームになると思います。
こんな仲間同士での、賑やかで満たされる日々がしたかった人は、是非どうぞ。
以下、ネタバレあり感想(反転)
・小毬ルート シナリオ:都乃河 勇人
小毬の兄が伝え損ねた言葉を、理樹が代わりに伝えようとし、
小毬の兄と同じく絵本を描く事で、小毬を救うというお話で、
構成が綺麗にまとまっていて、凄く良いと思うんです。
猫を飼えばいつか別れが来るし、綺麗な花を見つけてもいつかそれは枯れます。
小毬の求める幸せには、悲しみや辛い部分という現実が本来内在しているけれど、
小毬はそれらから全て目を背ける事で、精神を保っています。
その歪みを取り除くために理樹が奮闘し、小毬が過去のトラウマを
乗り越えていくのを手助けする事で、理樹も成長していくという、
よく練られたシナリオだと思います。
ただ、演出がどうしても、盛り上がりに欠けてしまっていました。
シナリオは練られているのは良いけれど、やはり見せ場の表現能力や、
引きずり込むような文章を書く力というのが、一番大事なんだと思いました。
あと、絵本の暗喩など色々とありましたが、一番分かりにくそうな、
流れ星が八つ流れた時に、小毬が違和感を感じ、悲しそうな表情をする描写は、
流れ星が死者の魂を意味すると解釈した場合、8個目が恭介ではないかと思います。
現実で恭介はバスに「恐らく乗っているだろう」という不確定状態であったし、
恭介の死=鈴の兄の死であり、一番仲の良い鈴と自分を無意識に
ダブらせたのではないかと自分は解釈しています。
・葉留佳ルート シナリオ:城桐 央
シナリオは良いんですが、かなりきついシナリオでした。
もっと表現手法や、それぞれの心情を描いた方が上手く行ったと思います。
かなり圧迫感を感じる内容で、精神に負荷が掛かります。
ずっと葉留佳側からの視点に終始しており、これは理樹の視点を尊重した結果かと
思いますが、もう少し早い段階で佳奈多側の心情が分からないと、
読者を振り回してしまっているように思いました。
あとは理樹の言動が短絡的な部分もあり、少しやきもきしてしまいますが、
学生だとそれくらいが普通ではないかという所でした。
人によって、このシナリオは評価ガタ落ちになると思います。
ただ、ここら辺は佳奈多の心情を読み取った再プレイ時には、
また違った視点で見れるという、一風変わった楽しみ方が出来たりもしました。
ただ、何度も挫けそうになりながらも、真実に立ち向かっていく
葉留佳の成長していく姿と、それを間近で見ていた理樹はきっと色々な勇気を
得られたと思います。
特に、解決の過程で理樹が単なる傍観者に徹することなく、葉留佳と理樹の
関係性をしっかり描いていたのが良かったと思います。
ただ、佳奈多側の描写が少なすぎる所為で、葉留佳が一方的に譲歩するように
なっているというのが、何とも違和感がありしました。
無印を出してる時点で、EXを出す事が決まっていたようなので、
完全に佳奈多ルートで、佳奈多の心境を描写する事が決定されていたようで、
シナリオの完成度を落として、分割しているのが、非常に勿体無いです。
・クドリャフカルート シナリオ:城桐 央
正直、初回では何を言ってるのかさっぱり分からない、
超展開としか言いようのないシナリオになっています。
初めてやった時は、何故クドを一人でテヴアに向かわせるのが正解なのか、
さっぱり分かりませんでした。(正解というのは少し語弊があるが)
世界の秘密が分からないと、さっぱりこの話は分からないし、同意できません。
そして、世界の秘密を知ると、ようやく意図が分かるんですが、
あまりに無茶苦茶すぎるというか、読者を置いてけぼりにしすぎでした。
虚構世界と分かっている前提じゃないと、クドをテヴアに行かす事に
納得できる要素がないにも関わらず、過程を引き抜いた状態のような話で、
これでは理樹の意志は全く関係なく、ただのシナリオの都合でレールを
歩かされてる事になってしまいます。
最後の呪縛開放の部分についても、クド自身による変化ではなく、
理樹の手助けによるものがきっかけになっており、クド自身の成長という部分は
弱かったのではないでしょうか。
色々と設定がある所為で、テーマが何なのかよく分からなくて、
あんまり何をしたかったのか、よく分かりませんでした。
話の構造は面白いんですが、ストーリーとしては微妙だったと思います。
ただ、クドとの交流、クドのひたむきな姿は凄く良かったです。
このライターは、明るいけれど、どこか影のあるキャラクターというのを
上手く描けていると思います。得意分野なのか、それしか描けないのかは
ちょっと分かりませんが…。キャラクターの良い味を引き出していました。
・来ヶ谷ルート シナリオ:都乃河 勇人
世界の秘密を使って、色々と仕掛けてきているストーリーなんですが、
正直中身がないシナリオになっています。
かなり、物語の構造を生かそうとして作ろうとしたのは見て取れるんですが、
世界の秘密に関する考察をするのに、便利な材料というレベルでした。
来ヶ谷はキャラデザイン的に、一番Keyの系譜を継いでいる感じだっただけに、
この扱いの悪さは悲しかったです。
シナリオの本質が、来ヶ谷自身とは関係ない所に行ってしまっていて、
何とも勿体無い話でした。
・美魚ルート シナリオ:樫田 レオ
文学と心理学に深い造詣のある人が書かれた物語なのだなと感じました。
しかし、いかんせん文章が硬質過ぎて、なかなか馴染めませんでした。
頻繁に比喩表現を使い、若山牧水の和歌に美魚、美鳥、理樹を例えながら
話を掘り下げて行きますが、読み慣れていないタイプの文章だったので、
なかなかすんなり入ってきませんでした。
シナリオの構造が凄く良く出来ているのだろうなぁという印象で、
比喩表現を的確に噛み砕けない所為か、全体の印象が非常にぼやけてしまい、
自分には合わない話だったなぁとしか思えませんでした。
詩的表現、比喩表現が非常に多く、好きな人、上手く自分の中で
それらの言葉をイメージ化できる人には、凄く良いシナリオなんだと思いますが、
その分、人を選ぶと思います。これらがあまりに多すぎる為、理樹の意志や、
美魚の意志が、明確に伝わって来ませんでした。
ただ自分が言えるのは、テーマ曲の中で、美魚が一番合っていると思いました。
光と闇の相互関係を表したような曲で、詩的な文章を読んでいる時にも、
非常に合う曲だと思います。
・鈴ルート+Refrain シナリオ:麻枝 准
リトルバスターズの根幹を成すシナリオで、最大の見せ場であり
男達の想いが胸に響きました。
旧リトルバスターズのメンバーの過去エピソードを交えつつ、
各キャラの視点での心境を描く事で、何が起こったのか、何を想って
今までやってきたのかが明かされる過程は、本当に素晴らしい。
真人の馬鹿は、人を幸せにする馬鹿だというのが、これ以上ないくらい
伝わってきました。真人がやっていた事は、一番難しい事だったのでは
ないでしょうか。
謙吾の後悔と葛藤、そしてリトルバスターズを人一倍想う気持ち。
最後の心情を吐露している場面は、謙吾の全てを物語っていたんでしょうね。
そして、最後に求めた握手もまた謙吾らしかったです。もう涙ぼろぼろ。
恭介は全てを理樹の為と思い、悪役まで買い、全身全霊をかけて
全ての物事を進めてきたけれど、最後の最後にリーダーとしての仮面を脱ぎ捨て
恭介本人の本音をぶちまける。これは来ました。
さあ、泣けと、ある種のあざとさすら見えるかもしれませんが、(演出的に)
虚構世界の成り立ちと、本人らの意思が汲み取れれば、まず涙腺崩壊一直線です。
そして、過酷に立ち向かう事を決意した理樹。
本当に、リトバスメンバーの男達が格好よすぎます。
正直、ヒロインとかどうでも良いんじゃないの?と言いたくなるくらいヤバイ。
全員生還ENDが蛇足っぽくも見えますが、やはりプレイヤー側としては、
ハッピーエンドが欲しい所なので、個人的には良かったと思います。
アンチには、好きに言わせておけばいいんですよ!
懸命に頑張った人達には、報われて欲しいもんですからね。
耳に残った曲は、スローカーブ、ともしび、RING RING RING!、
えきぞちっく・といぼっくす、生まれ落ちる世界。
他にも、チクタク・ルーチンなど、ゲームに合っている曲が多かったです。