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kurobekoさんのD.C.II P.C. ~ダ・カーポII~ プラスコミュニケーションの長文感想

ユーザー
kurobeko
ゲーム
D.C.II P.C. ~ダ・カーポII~ プラスコミュニケーション
ブランド
CIRCUS
得点
90
参照数
309

一言コメント

D.C.がさくらの物語であることを実感するゲーム

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 さくらの母親としての想いが本当に純粋で、D.C.はさくらの物語なのだなぁと実感しました。ヒロインごとの個別ルートについては、不満な点もないわけではないけど、特に物語の根幹にも関わるアイシア・Da Capoの各シナリオは本当によく出来ていたと思います。
 特に、DCSSでは好きではなかったアイシアのルート。先にⅢをやって、アイシアのDCSSでの無邪気な魔法に対する認識がどこから来るものなのかを理解した上で、このルートをやると・・・。ラストはご都合主義的な印象を受けるものかもしれませんが、D.C.の世界での魔法の設定を考えるとこれが一番自然なのではないかという気がします。Ⅲで「恋をすると魔法が使えなくなる」という設定が語られますが、この世界での魔法が想いの力であり、誰かを愛することが大きな想いの力だからというのがその理由でした。誰かを愛する想いがそれだけ強い想いの力なのであれば、それはこの世界で奇跡を起こす魔法になるはずです(書いててむず痒い設定ですが)。ならば、魔法使いの義之に対する愛情は、義之の存在のための強い想いの力であり、それは「義之は存在する」というふうに現実を書き換えるだけの魔法になるでしょう。魔法使いでない者のルートで義之が消えない・魔法使いのルートで義之が消えることのほうが設定と合致していないように思います。なので、al fineで義之が一回消えて帰ってきたことについてはどういう理屈でそうなるのかっていうのがいまいち分からないです。
 また、Da Capoは、さくらの視点で物語が進行しますが、さくらの義之に対する愛情が本当に純粋で美しいものに見えました。D.C.の音夢ルートの未来である世界で、さくらが願ってしまったこと、決断ができないこと。どれもD.C.からのつながりを考えれば理解できるもので、ただの元気系ロリキャラのイメージしかなかったさくらというキャラクターにこんなに深みと魅力が感じられるとは思っていませんでした。

 D.C.シリーズではいつものことですが、Ⅱでもやっぱり音楽がよかった。「ここ!」っていうシーンで出来のいい曲がかかると、ゲーム全体の出来も良く感じます。シナリオ自体の出来と音楽の出来を分離するという評価もあり得ると思いますが、音楽で強く印象付けられるのもそのゲームとしての出来ということで、その印象のまま高い評価をすることにしたいと思います。