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kuroさんのサクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-の長文感想

ユーザー
kuro
ゲーム
サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-
ブランド
得点
95
参照数
604

一言コメント

すかぢさんがこの作品で正確に何を意図して作ったのかは分からないが、個人的にはこの作品を人生論と芸術論を表現した作品だと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

10年くらい延期した、すかぢの訳ありな結果物。

悪い点
1.雫ルート以外は思った以上にあまりだった。
1ー1.言い換えば雫ルート以前まではひとつの物語じゃなく付属品みたい。

2.彼女たちの話はこの作品が語りたい本質とは相当な乖離。
2ー1.この作品をクリアーする時、その以前の話は全部消えてしまう。

3.キャラたちの活用。
3ー1.相当数のキャラたちが一線を越えてまで、主人公のご都合主義的な装置(言い換えば成長のための道具)で縛られてあんまりだった。

4.この作品の最大の弱点、疎通は人物への共感などで可能だが、この作品は彼らの芸術観や人生をプレイヤーに納得させようと努力すらもしない。 唯美主義的にただ「見せてあげる」だけで、時には不親切に感じられることもある。 これが個性なら個性になるが、これはエロゲだ。 この不親切を'娯楽'として受け入れる人が多いのか、'不快'として受け入れる人が多いのかはよくわからないが、いずれにせよこの部分で好き嫌いが大きく分かれる。 このような特徴がキャラクターの個性とつながって、結局序盤で簡単にキャラクターに近付きにくくなる。




良い点
1.雰囲気と物語。
1ー1.すかぢ特有の文章、綺麗なBGM、それに4章から始める物語の「顛末」は引き込み。
1ー2.引用した作品を使ったプロットと隠喩的な表現。

2.芸術その物と同時に世界についての理解と人間の生き方という「テーマ」
2ー1.主人公は「因果交流の芸術家」と呼ばれてる、その意味は行為において大事なのは外的は見返りじゃなくや美その物じゃなく「過程」と「目的」に生まれてくる「結果」 は「交流」にあると、気付いてやっと本当の意味の成長をしてスタートラインに立つことができた。




エロゲーはゲームの一種でありエンターテインメントなのに<サクウタ>はそんな面よりは「芸術的」な面を強調したし、本物の文芸と比べて格段に落ちる部分が多いにもかかわらず、「エロゲー」としては他の作品が試さないことを試みた印象なのでそれほどインパクトが大きいし、そのため作品の完成度それ以上にプレイヤーたちの評価が良いという印象が大きい。 エロゲーの芸術的な面に多くの方々が驚いたということを感じる。