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kuroさんの白昼夢の青写真の長文感想

ユーザー
kuro
ゲーム
白昼夢の青写真
ブランド
Laplacian
得点
90
参照数
80

一言コメント

Case1、2、3に分類されるエピソードは、あまりにも面白くて真EDを飲み込む魅力を持っており、真EDの後もCaseエピソードに意味が付与される。 作中に登場するすべての物語要素が作品を成す根幹になり、この作品そのものになる。 このような構成がとても魅力的だ。 まるで4つの作品を続けているような感じをプレーヤーに与える。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

『Case1』の場合、人生の行き詰まりに追い込まれた二人の醜悪でありながら退廃的な美しさを持った話を描いており、『Case2』の場合、歴史的事実を基盤に醸し出す決して交わることのできない二人の切実な愛を描いている。
最後の「Case3」の場合、真夏の出会いから始まる二人の成長を描き出す。 3人とも、優劣をつけられないほど同等な魅力を持っている。

  そしてさらに驚くべきことは、真ED後の展開だ。 前にあるこの3つの物語をすべてまとめてこの作品の真のテーマに昇華させるという点があまりにも素晴らしかった。 すべての話に意味を与え、そのすべてが最後に一つになる構成は、プレーヤーに自然にカタルシスを感じさせる。「世界と呼ばれた少女」というテーマもとても魅力的で、こうしたテーマがプレイヤーに何らかのテーマ意識を呼び起こしたりはしないが、それ自体とても美しい話だったのでプレイヤーの胸の中に一端のかすかなものを与えてくれるだけでも十分に良い評価を得ることができた。

ただ、すべての伏線をきれいに回収したという点がむしろ毒となった。 とても小さな素材一つに執着するあまり、作品後半部には本テーマからかなりかけ離れた要素一つを長く説明してしまい、話が少しもつれた感じがする。 全体テーマをややもすると忘れてしまう大きな問題だったが、幸いにもその後EDできちんと収拾して作品に大きな傷は残らなくなった。

  全体的に高評価するのに適した作品であった。 最初から最後までいつも没入感があって面白いという点は確かに大きな強みであり、それにもかかわらず自分のテーマを失わず最後までそれを完成させたという点。 そして全ての話を終えてからも、真ED以外の全ての話さえ美しいという点が他の作品では味わえないこの作品ならではの強みだと思う。