香織という少女を深く理解できる、後半からが本番。
理解できるというのは語弊がある。
しかし、前半の最低最悪な悪霊である香織を好きになれるとは思わなかった。
ヒロインの身体を勝手に使い、男をとっかえひっかえして行為を繰り返す。
このようなシチュエーションは苦手な人は苦手かもしれない。
しかし本人の冷めた目からわかるように、行為を楽しんでいるのではなくあくまで身体の持ち主を破滅させるために壊している。
この時点で救いようのない悪霊なのだが、主人公が寝取られに目覚めそうになったり、榊原というかつての彼氏が出てきて事情が変わってくる。
後半からは香織の物語なのだが、過去を知り、内面を知り。
そして想いを知ったあとは、彼女もまた女の子だったことがわかる。
悪霊として敵役をつくるだけでなく、ヒロインとしてきちんと内面描写や過去も見せてくる。
端から見れば何故そんなひどいことを。と思うが、当事者でないとわからない思いは誰にも理解できない。
そんな物語展開を綺麗にまとめ、ラストを鮮やかに飾っていった。
けしてハッピーとは言えないが、見方によってはハッピーエンド。
悪霊で悪霊のまま許されずに消えていくヒロイン。
屋上での会話は、作品は違うがASMRまで出た某作品の妹を思い出してしまった。
芯が強く狂っている女は、最後まで狂っているからこそ美しい。
私もまた、香織という女に囚われてしまった一人。