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kurageさんのSTEINS;GATEの長文感想

ユーザー
kurage
ゲーム
STEINS;GATE
ブランド
NitroPlus
得点
90
参照数
679

一言コメント

ありそうで意外とない本格SF作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

科学的要素を随所に絡めることで、設定とシナリオに説得力を持たせているというのが本作の特徴であり最も秀でている長所。

それに加えて軽快な日常テキストと魅力的なキャラクター、
これらを上手く活かして本作は非常に高いレベルでまとまっている作品となっていると思う。

因みに自分の好みだと
キャラクター:ルカくん>フェイリス=まゆしぃ>ルカちゃん=クリス>他
シナリオ:まゆしぃ>トゥルー=フェイリス>ルカちゃん>他
かな。ルカルートはシナリオの主軸がまゆしぃだったからなんか損しちゃってる所あると思う、だからこそあのEDの良さがあるとも理解出来るけど。

まぁでもはっきりいって作品の出来不出来についてそれほど多く語ることはない、
その二元論で言うならば非常に良く出来た作品であるというのが私の感想である。

ただ、SF要素の設定の作り込みは完璧ではないとは思っている。
ライターが一貫して書きたかった、作りたかった世界観は完成されているし、
自分自身は本作全体の完成度を高く評価しているという前提で、以下に何故完璧ではないかと思うかを記す。
 
 
・「死」という事象が世界線において余りにも大事に取り扱われすぎている。

世界線超えたから死が回避出来ますってそこを否定しちゃ話にならないのは分かるけど、与えられた設定だけでは理屈が弱いと思う。

たとえばルカが男→女に変わることと世界線を超えて確定した死が変化することに客観的な不等号がつけられない。その存在をまるっきり変換させた位では世界線が大して変わらないのに人一人ごときが死んだら大幅に変わるとか納得出来ねぇ。
そういう設定なのだからとかそういう話じゃなくて、折角のSFなんだからそこにもちゃんと説得力のある設定を作って詰めの甘くない世界観を構築しなよ!そこまでやったんだからさ!みたいな話。

あと最後のフェイズで境界面にとか言う割にそこが何故境界であるのかという必然性についての話が無かったよね。世界線だって不自然なまでにαβの二つだけしか語られてなかったりとかさ、前半すごい剣幕でタイムトラベルの設定について熱心に話したのが中盤~後半で大人しくなったのは力尽きちゃったからなのかな。そんなギャップがあったのは否めないと思う。ちらほらそうやって気になるところはあった。
タイムトラベルと平行世界は厳密には別個の科学ネタだから理屈捏ねられなかったのかな、
前者の設定の作り込みがスゴイからこそ、後者の設定の作り込みの弱さが際立ってしまっているように見えるんだ。その辺が粗があると思える理由。


以下余談。

・先が予想できる。
ダルの話はまゆしぃのトリック暴きのとこのこういうトリックが仕掛けられていたんだよ(ドヤってやりたいのは分かったからいいんだけど、ブラウン管とかはあからさま過ぎるでしょ。なんか不自然なまでに今までスルーしていた要素が答えでしたーみたいなパターンが何回かあってなぁ、偶発性から生じるタイムマシンとかご都合主義至上なのもこの作品のウリなのは分かるけど、あぁでもFBとかは逆に情報なさ過ぎて全然分からんかったわ。

・鳳凰院凶真ネタはもうちょっと使っても良かったんじゃ?
ベタだけどまゆしぃとオカリンの過去に凶真自身或いは「鳳凰院凶真」が書いた/作った/描かれていることが影響しているとかさ。1975年に戻る話とかは設定全然なかったしただ漠然と数十年過ぎましたー以外の話をどこかしらで入れてもとは思ったっていうかそこがブランクになってたから気になったっつー話。実はドラマCDとかでそういう話はしてたりすんのかな、ゲームしかやってねーからよくわかんないけど。

・雷バトラーはミニゲームとか或いは外注で専用CGとかは出来なかったのか。
あのシーンすっげぇ地味じゃん!俺はWin版勢だからいいけど箱版の人は4℃の立ち絵すらなしだったんでしょ!あれが主軸のシナリオにするならもっと力入れてもよかったろ!とは思った。