終わらない(終わらせない)作品
アニメが面白かったのでプレイ 環境:ePSXe190 攻略本あり
・雑感
初めに言いたいのは「この作品は考察が出来ない!」ということである 公式や攻略本などには「情報収集して、キミも自分なりのストーリーを考えよう!」的なことが書かれているが 実際は考察できるほどの情報がゲームの中にないのである だがここでクソゲーと思うのは早計で 組み合わせても一枚の絵にならない情報の断片を無造作に配置してることがこのゲームの狙いなのである アニメを見てlainにハマってゲームをプレイする人がたくさんいたと思うが ゲームをプレイしたあと答えを手にし スッキリとして終わることはない ここにすごく芸術性を感じるが同時に消化不良感が残る(この感覚がなければ100点だろうなぁ・・・)
・システムについて
ボタンを押してから動くまでめちゃくちゃラグがあり慣れるまでイライラすると思う だが本当にイライラするのはゲームの後半である 序盤は隣りにあるデータをどんどん再生して行くので問題はないが 後半になればなるほど一つひとつのデータの距離が遠くなっていき また後半は「語りかけ」データが主となり lainとtoukoで同じセリフを言うようになり新鮮味がなくなって辛くなる しかしこのラグについて いろんなブログなどではPS1の頃だからしょうがないと書かれているが それは誤りである ネット空間の探索を演出するために”わざと”このような仕様にしているのである(攻略本にも「悪い操作性に慣れよう!」って書いてるし・・・w)
演出以外で最も不満なのは アーカイブのような機能がないことである せめてデータを種類ごとに見ることができればと歯がゆい感じがする データ収集したあとは順番ごとに見せてほしかったと思う
こういったシステムのせいで「もっさり移動→lainちゃんが動いてデータ読み込み→ロード→英単語確認など→データ再生」とシナリオを読む以外にかなり時間を使うので プレイ時間も人によってはかなり違う結果となると思う(ディスクが2枚なので行ったり来たりする人はそれだけ手間がかかる)
エンディングが4つなのに全部のデータを見るには5回EDを見なければならないところも見落とすところ
・ストーリー
アニメではサイバー、謎の組織、謎の自称神との対決、ディスコに行ったりといろいろな要素が出てきましたが ゲームの方は精神面に特化した印象 心理学などの要素が多くlainとtoukoのカウンセリングが中心
(データを見る順番によってはいろいろ前後すると思います)
1週目 ~ おそらくいちばん楽しめるのが1週目~2週目だと思う 時系列で古い階層から新しい階層へ どんどん新しい情報が出てきて先が気になるところ 序盤はtoukoが気分屋のlainのカウンセリングに苦闘する感じで toukoが仕事も恋愛もうまく行って無くて悩んでる様子がとてもエロ可愛い 後から考えてもtoukoはどう見ても悪意に巻き込まれちゃった被害者でなんだかカワイソウとしか言いようがない 悩み多いが別に悪い所もないtoukoが最終的に病んで頭部がぐちゃぐちゃになって死ぬ(ワイヤードでは生きてるけど・・・)のは心苦しい感じがする(´・ω・`)切ない lainはかなり謎が多い もちろんその年代の少女らしさがあって魅力的だが小学校高学年以前の記憶(記録?)が無いのは不自然だ 家族関係もなにかおかしい 最後にはアニメと同じくワイヤードの生を選択する
2週目 ~ lainがプレイヤーに語りかけるデータが始まる 2周めで新しく出てくるのは toukoの日本に来る前から来たばかりの記憶と lainとmisatoのエピソードである toukoのほうは特に異常な点もなく普通のかわいいなーというだけだが lainのほうは奇妙である あとからmisatoが実在の人物ではないことが分かるが それにしても lainが困難を乗り越えて登校するためにmisatoという存在を作り上げるだけでなく misatoの親がどうであるかや 遊んだ記憶 学校祭か何かで絵画を発表する 発表した絵画に盗作疑惑が持ち上がり それについて調べたり misatoが濡れ衣だということを証明しようとしたりと 単に妄想内の友達としては かなり手の込んだ内容すぎて 存在しないと簡単に言い切れない感じもする 2週目のEDとしてはlainがtoukoを徐々にリアルワールドから切り離し 新しい生を出発させるということだろう toukoも困惑しながらも最終的には受け入れる
ワイヤードでの生で重要な事はEDのセリフにもある通り時間や空間を超越しうるとうことで 肉体がない不滅の存在になるだけでなく過去や未来に移動して事象に干渉する力も手に入れる可能性があるところである
3週目 ~ 語りかけがメインだが lainに加えて toukoも語りかけてくるようになる これの意味するところはプレーヤーのカウンセリングではないだろうか 2週目まででtoukoがlainをカウンセリングするという構図から lainがtoukoをカウセリングするという図へ変化する様子を見た その中で 「クライアント」という言葉の対象も最初はlainだったがtoukoも含み 徐々にプレイヤーも含まれていく つまりプレイヤーをワイヤードの存在へと誘おうというわけだ しきりに「つながってる」「境界がなくなる」という趣旨の発言が多いのもこのためだろう
4週目と5週目 ~ 語りかけは相変わらず続くのだが 新しくタチバナ要素が登場する 具体的には おっさんを女子学生が射殺した事件に関して マキノへの事情聴取 toukoや高島教授が自殺したことの会見などである
lainという作品のの謎として橘研究所がどれくらい陰謀を巡らせたのか または巡らせてないのか lainは橘と関係する何かによって実験的に作り出された存在なのか 天然の人間なのかクローンなのか 改造された人間なのか ということがプレイヤーの関心事だと思う アニメでは宇宙人がやってきて戦前からのメキシコだかアメリカだかの計画がどうのこうの 橘研究所が引き継いで第7世代のネットワークに仕込んだなどなど背景情報があるが このゲームではそういった情報がほぼないのである この辺は絶対そうしようと思って作った製作者の意地を感じる部分でもあるかな?
EDではワイヤードで必要なものは「意思と存在と後は”ただの”データ」であると明言される ここで”ただの”という表現を使ったところに少し引っかかるがよくわからない
lainまとめ
ワイヤードという無限空間や繁雑した情報空間をlainという概念とともに情報探求する演出など 細部までこだわって作った作品で非常に好感が持て ハードボイルドや残虐描写でドンパチが多いサイバーパンクの中でも しっとりと精神面に特化し普通だけど普通じゃない少女を描いたのがオリジナリティがあって それと同時に 世界観を色々考察できる作品が最も素晴らしいとされるのが一般的な中で逆に考察させないと裏切ったところに価値が有ったといえるのではないだろうか そういう意味で終わらない作品ですね