ゾンビパニックじゃないのね……。
序盤のゾンビによるパニックホラー的展開(体験版部分)を期待して購入したのだが、本編においてゾンビはほとんどと言っていいほど登場しない。
それもそのはずで、本作の題材はゾンビパニックではなく、クトゥルフ神話だったから。
勢いのある展開から一転、プロローグ以降は物語の謎を少しずつ解き明かしていくことになる。正味、プロローグの後に謎解き要素を持ってこられると、テンポが悪いなと感じてしまうところ。
まあ、この点については評価が分かれるのだと思う。僕なんかは、映画バイオハザードは3で飽きてしまった口なので、逆に映画版バイオシリーズを楽しめた人は、本作も楽しめるのではないだろうか。
ゾンビ(ショゴス)の脅威を避けつつの謎解きという緊迫感ある展開を求めていた自分としては、本作の構成は少々退屈ではあった。
もっとも、つまらなかったという訳ではなく、あくまでも緊迫感に欠けるという意味である。ショゴスの存在が焦燥感を生み出していたプロローグに比べ、本編ではショゴスの脅威に晒されることなく謎が徐々に明かされていく。キーパーソンが「期限」の存在を口にして焦る様子を見せるものの、プレイヤーからすれば情報が圧倒的に不足しているので「なんのこっちゃ?」となってしまった。
更には、本作の悪役とでも言うべき存在が、前半で軒並み退場してしまうのである。一応、規格外のボス級キャラクターが二名、後半に控えてはいるのだが……。その全貌が明らかになるのは本当に「最後の数十分」なので、そこまで集中力を保ってテキストを読み進められるかが、この作品を楽しめるかの基準となるだろう。ただ、このボス級キャラクターと称した二人が「最後の数十分」で織りなす愛憎劇は一見の価値が有る。むしろ、そのシーンが本作最大の見せ場と言っても過言ではない。
ただ、物語としてはよく出来ていると思う。個別END(特に駒子のBADEND)なんかは、鳥肌がたちっぱなしだった。杏子の狂気的な愛情(本能?)も、理解できる部分があったりして、好ましい部分も多くあった。
しかし、本作において僕が一番退屈に感じた点がある。それが、ヒロインとの逢瀬である。本作は二部構成になっており、第一部で物語の本筋解決、第二部でヒロインとのイチャラブが展開される。
で、問題がその第二部なのである。冒頭で「テンポが悪い」と言ったが、この第二部の存在がそれに拍車をかけていた。物語の随所にイチャラブを入れるのは構わない。スパイスとしてイチャラブを利用するのは構わない。だが、第二部を丸々使ってイチャラブされると、それは最早スパイスではなくメインだ。
僕は本作にイチャラブを期待していなかったので、第二部は基本的にスキップしまくった。
また、これは第一部にも共通することなのだが、ヒロイン同士の繋がりが希薄だった。三人のヒロインは基本的に主人公を媒介してコミュニケーションを取るので(友人という設定のある駒子と由乃ですらそのきらいがあった)、ヒロイン同士の人間関係をもっと描写してほしかった。
第二部に至っては前述の通り、個別ルートに入り、選択しなかったヒロインはほとんど出番なしである。
それが顕著だったのは由乃ルート(トゥルーエンド)である。このルートで全ての謎が明らかにされる訳だが、正味「他ヒロインいらなかったのでは?」というレベルで駒子と恵理が話に絡んでこない。お茶濁しと言わざるを得ない締めくくりになっているのもマイナス点。結局のところ、主人公以下他人物たちは由乃のエゴ故に、循環する時の果てで永遠に弄ばれることになるのだから。
このループからの脱出にまで踏み込んでほしかった。
結論としては、緊迫感のある展開を求める人には向かない、と言ったところだろうか。逆に、じっくり腰を据え、頭を使いながら謎解きをしたい、という方にはお勧めできる作品となっている。僕は由乃にそこまで思い入れがなかったので、真相を知っても「ふーん」で終わってしまったが……。
プロローグが名作過ぎた。