息もつかせぬ怒涛のギャグシナリオは一見雑然としているが、「家族からの自立」という主軸が貫かれた、一本筋の通っている作品。
過去の呪縛を打ち破り未来へと走り出したアイリス。家族を遠ざけた信春と、家族と向き合いたかったノブチナ。己を見失いながらも、今一度自身を見詰め直す機会を得たルーシア。主要な3√において、いずれも、過去と親、未来と子とが対照されており、過去からの脱却が親離れ、すなわち精神の自立として描かれていた。アイリス√では過去から未来への転換、ノブチナ√では家族の分裂と再構築、ルーシア√では過去の清算と、個別ルートにおいてもミニテーマが設けられており、家族の形や誇り高く生きるとはどういうことかについて多角的に切り込まれている。家族から羽ばたいて、自己を確立していこうとする彼女たちの姿に胸打たれること必至の、寂しくて誇り高いイノセントハートストーリー。