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kubikiriさんのシルヴァリオ トリニティの長文感想

ユーザー
kubikiri
ゲーム
シルヴァリオ トリニティ
ブランド
light
得点
70
参照数
423

一言コメント

設定は好みのものが多かったが、ストーリーに起伏が無いのが気になった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※前作『シルヴァリオ・ヴェンデッタ』のネタバレ含みます。


■ヴェンデッタでは、勝利を背負う英雄と、逆襲を願う負け犬という両極端な構図が終始貫徹されてはいるものの、正直今一つ定まらないというか、何を言いたいのか、何がテーマなのか不出来な僕には皆目見当がつかなかったのですが、本作はそんな前作に対する解答編の役割を担っているということでよいのでしょうか。
 一人で突き進むのではなく誰かと話し合って決める、という考え方が二つのスフィアの根底にあることから考えても、「たった一人の人間の思想では極端に振り切れてしまうから、みんなで話し合って落としどころを見つけよう」とかそういうのがこのシリーズのテーマだと理解しておきます。
 或いは、前作の逆襲賛歌とも取られかねないシナリオの注釈と捉えることも出来ますね。絶対的な正義は多くの人間を殺戮するが、光は光で素晴らしいのを忘れてはならない、って感じで。
 要は「努力・友情・勝利」の週刊少年ジャンプ三原則を肯定しつつも、人間の弱さに対する理解も促している作品なのだと思います。■

■主人公と3ヒロインの境遇は同情に値するものがあったのですが、4人の敵対シーンが薄く、少なかったので、シナリオに悲壮感が感じられなかったのが残念です。冒頭、アッシュとレインが殺し合ったように、重い設定に見合ったイベントがもっと多ければ良かったです。憎み合って争い合って、艱難辛苦を乗り越えた先に結ばれてこその設定だったと思うんですよね。まあ、単なるギャップ(?)の話です。
 4人の、身分による“ままならない展開”がなあなあになってしまっていて、個別ルートは勿論の事トゥルーに関しても輝きを見出すことが出来ませんでした。
「主人公は実は元々商国の商人の息子なんだけど、ヴァルゼライドの粛清のせいで親を失い親友とも離れ離れ。それがトラウマとなって強くなりたいと願った折、傭兵団に入団、したはいいものの、凡才な主人公はあっさり見限られてしまいギルベルトに捕獲され実験体に以下略」という設定として処理するのではなく、イベントとしてがっつり組み込んでくれていれば、終盤の展開がより感慨深いものになったのでないだろうかと思わずにはいられません。
 その点、師匠の最期に関しては涙腺崩壊しまくりでした。師匠の葛藤が諸所でひしひしと伝わってきて、だからこそあの「もう一度」という言葉は最高に輝いていました。■