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ktonさんの沙耶の唄の長文感想

ユーザー
kton
ゲーム
沙耶の唄
ブランド
NitroPlus
得点
89
参照数
373

一言コメント

グロイけどそんなこわくはない  火の鳥復活編のネタばれが少しあり

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品は火の鳥復活編のパクリだと言われていますがプレイした人間からしては納得しかねます。

まず二つの作品は交通事故にあった主人公が事故に遭い世界を正常に認識できなくなり人でないものに恋をするという設定が同じです。しかし逆に言えばそれ以外の設定は違うということです。火の鳥の主人公は無機質なもの以外のものは普通に見え、かつ他の人に世界を正常に認識することを打ち上げることができます。また異常に認識していたとしても無機質に見えるのみです。これらの設定が違うだけでも主人公の置かれている環境は大きく違います。(例えば火の鳥の主人公は他の人間と意思疎通できるほどの精神を保てている)なので大元となっている設定が同じだけでパクリというには無理があると思います。(言うまでもなく他にも設定の違いは数多く存在します)また主人公が「昔読んだ、漫画で…」と発言し火の鳥復活編についてほのめかしており、ただ無為に火の鳥の設定を盗用したわけでなく、リスペクト精神に則ったオマージュであることもわかります。

また個人的な見解では復活編では世界を正常に認識できなくなった人間を描くことを目的としておらず医療の発達に対する問題提起や人間とロボットのありかたを中心に描いていると感じます。二つの作品の描きたいテーマさえ違うのではないかと思います。


作品を最後までプレイし終わるまで沙耶があまりにも献身的過ぎて郁紀を利用使用としているのではないかと思っていて身構えていたのですが最後まで見るとすべて沙耶の無償の愛だったんだとわかりました。クリアした後にもう一度プレイしながら沙耶の気持ちを考えるととても胸を締め付けられます。選択肢の取り戻したいを選んだ後の沙耶の心情を思うととても切なくなります。
しいていうなら途中から主人公が吹っ切れて元の世界への未練がなくなりますが、完全に吹っ切れていないときの方が面白かったです。


「はたしてわれわれの恋愛感情とは何なのだろうか?効率的な種の繁栄を遂げるのに、これほど妨げとなるような精神活動があるだろうか?彼女は人類の繁殖方法の一過程として恋愛を理解しようとした。その結果、自らの類希なる繁殖能力を去勢する結果に終わったのかもしれない。つまり彼女は恋をしなかったのだ」