「18禁ゲーム」というジャンルだからこそ実現できた、不朽の名作。「カラダから始まる純愛物語」
「セックスフレンド」というストレートなタイトルとエキセントリックなOPソング
からくるイメージをモノの見事に裏切る、“甘く切ない恋愛ストーリー”、
それも18禁ゲームでしか表現できない「カラダから始まる純愛ストーリー」。
“カラダの関係”を持ってしまった為、
逆に相手のココロが判らなくなってしまった事に悩む主人公:高辺と、
それまでの男達と違う高辺の優しさに惹かれながらも、
“カラダの関係”から始まった為に素直になれないヒロイン:早瀬
お互いのココロを求めながらも、「セックスフレンド」という
“近過ぎるカラダの距離”のためにすれ違う二人が、
時にコミカルに、そしてHに、時に切なく描かれている恋愛ストーリー。
さらに物語の裏に隠された、“過去の謎”、“SEXFRIEND”というタイトルの意味・・・
……一見すると「単なる抜きゲー」「おかずゲー」。
それに見合うだけの作品としてのクオリティも十分にあるが、
なんといっても特筆すべきはその
「シナリオの二重性」 と 「神的な演出」 にあります。
◆~表のシナリオとその演出~
表のシナリオは「カラダから始まる純愛ストーリー」。
このストーリー自体「ぬきゲー」という第一印象を大きく裏切るものですが、
その内容はかなり現実的。
「平凡な日常の中で起こる小さな出来事の積み重ねによって、二人が徐々に惹かれあっていく」
地味ながらもとてもリアリティのある恋愛物語です。
その過程を主人公:高辺の場合は、テキストによる細やかな心理描写によって、
ヒロイン:早瀬の場合は、立ち絵の表情変化・セリフの内容とトーンの変化によって
丁寧に描写されています。
ゲーム自体が主人公視点で展開されるため何も考えずにプレイすると見落としがちですが、
実はセリフとセリフの間にある「沈黙」の裏側にこめられた
“早瀬の気持ち”がきちんと読み取れるような演出がなされており、
いわゆる「行間を読む」という行為ができる人ならば、
「素直になれない早瀬のキモチ」が理解できるようになっています。
こういった事はある程度の大人でなければ出来ない事ですから、
その意味も含めて“本当の意味での18禁”といえる内容でしょう。
◆~裏のシナリオとその演出~
実はこのゲームのシナリオには、もうひとつの意味「裏のシナリオ」が存在します。
詳しい内容はネタバレになりますので言及は避けますが、それは「過去の出来事」で、
その内容が“神掛かり的なセンスの演出”によって表現されています。
ゲーム中においてその出来事について直接的に言及される事はありません。
そのかわりに様々のルートの中に間接的な断片情報ととしてプレイヤーに提示されますす。
その方法も、
①「BGMを止めセリフだけを再生する事で、
何気ないセリフの内容を強く印象付ける」
②「一見すると関係ないような出来事を、同一の表現・単語を使う
デジャヴュ的演出(概視感的演出)をする事によって“実は本質的には同じ”
であるという事を意識させる」
③「またそれによって、“現在の出来事が過去の出来事の再現になっている”
“現在の出来事は過去の延長にある”という事を理解させる」
といった、まさにゲームという媒体ならではの方法でプレイヤーに提示されます。
特に②のデジュヴュ的演出が素晴らしく、これによりプレイヤーは自然と
「過去にいったい何があったのか?」「このセリフの裏側にある本当の意味は?
理由は?」という事を自然と推理・想像するようになっていきます。
そして様々なルートを巡り、情報を集め
「過去に何があったのか?それは今現在にどのような影響を与えているのか?」
を理解した時に初めて、
“セックスフレンド”というタイトルの理由、この物語の“もうひとつの意味”、
トゥルーエンドで語られる“最後のセリフの重み”を理解することになるでしょう。
これだけの完成度を誇る作品ではありますが、
残念ながらセーブシステムや回想モードの使いにくさなど
システム面でのマイナスから1点減点の99点としました。
「18禁ゲーム」しかも「抜きゲー」というシステムを逆用してエロゲーで
“不思議の国のアリス”をやってのけたこの作品は、
処女崇拝的純愛モノ・ご都合主義的陵辱モノといった
既成のエロゲーに対するアンチテーゼ的作品でもあり、
名シナリオライター丸太氏の主張が前面に押し出された作品。
まさに「不朽の名作」といってもいい作品ですので、
ぜひ一度プレイしてみてください。