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koron08さんのGardenの長文感想

ユーザー
koron08
ゲーム
Garden
ブランド
CUFFS
得点
86
参照数
509

一言コメント

僕はあざみんが好きです!(ロリコンではない)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一言感想はちょっとアレですが、真面目に感想書いていきます。

まず総合的な感想
音楽は期待通りでした、安瀬さんは相変わらずいい曲作ってます。曲数が多い割りに同じ曲が何度も流れるのですが、最後まで飽きませんでした。「明日へ」と「澄んだ空」あたりは本当に好き。あと、絵についても、やはり良かったです。さくらむすびの感想にも書いたのですが、幼い絵が幻想的に映える気がします。シナリオは、小説のような文で読みやすく、世界観や会話作りがうまいなーと。しかし、ボロは多かった。名称だったり関係だったりがルートによって異なっていたのはやや不満、まぁもうこういうものだと割り切ってやっていたけど…。あと、やっぱり瑠璃ルートが欲しかったなぁ。最後に桜子ルートやって、結構まとまりあるエンドに見えたんですが、なぜか消化不良感が残りました。このことについては、最後にちょっとだけ後述します。

それでは、具体的にあざみんの何が良かったのかについて
それはあざみんルートのラストで現れたあざみんと主人公の共通の意識にありました。それについて、ストーリーを整理しつつ書いていきます。

まず、Gardenの主人公の涼君は過去に幼馴染を救うことができなかったことから心を閉ざし、人との関わりを避けて無難に生きていました。それを心配した姉が、転校を勧めて絵里香や瑠璃、あざみんのいる学校に通うことになります。そして友人ができ、優しい人々に囲まれて過ごしていくのですが、主人公は幼馴染に対する罪を常に背負っていました。幸せになってはいけない、将来のことを考えられず今を生きるのも辛いといった感じでした。この主人公の罪の意識を、各ヒロインがどのように和らげ一歩進ませるのか、という過程がこのGardenの見所だったように思います。
絵里香ルートは幼馴染の思い出から、桜子ルートは同族意識から、小夜ルートは純粋さから、先生ルートは優しさから、という風に主人公の心が開かれていったと思います。(おおざっぱですが)
この過程について、あざみんルートでは「一緒に歩み、進んでいく」という答えが導かれます。これは、学級委員長のあざみんと心に傷を負った主人公の共通の意識のために、現れたものでした。この場面の過程と会話内容が、僕があざみんルートを評価している部分です。以下、ちょっとだけ詳しくストーリーを追います。

あざみんの家は母子家庭で、下に二人姉妹がおり、あまり裕福な家庭ではありませんでした。そのため、、あざみんは勉学に励んで特待生として頑張っていました。委員長になったのも、こういう事情もあって、自律心が高かったからです。そして、進路を決める際のこと。初めは進学せずに就職して家族のサポートをするというのですが、親と相談した結果、好きなことをしていいと言われます。しかし、あざみんは周りの環境が縛られていたこともあり、自由に選択をすることに困難と迷いが生じてしまいます。そして主人公に、何をすればいいのかと相談するのですが、未来のことを考えることができない涼君は、何も答えることができず、逆に過去に囚われてしまい突き放すような態度を取ってしまいます。良好な関係を抱築き、一目置いていたあざみんでしたが、ここで初めて目の色が暗くなるという表現が用いられ、主人公に対して失望や戸惑いの感情が生まれていました。また涼の方も、あざみんを傷つけたと思い、また消極的な心理に陥ります。
そして、進路票の最終締め切り日。あざみんは、結局何をも選択できずに締め切りに間に合いませんでした。しかし、先を諦めたわけではありませんでした。主人公に、「これから探すんです」と迷いを未来へ展望し、「一緒に探してください!」という風に感情を伝え心に訴えかけます。このシーンが本当に良かったです。人に迷惑をかけない生き方を望んでいた主人公を否定して受け止めようとする過程が、心情表現が良くできていたと思います。真面目な学級委員長と心的外傷を負った主人公という似つかない二人が、共通の困難状況に陥って、共に歩いていこうとする姿が、シンプルながらも感動しました。僕自身が未来に対して不安といった感情を持っていたために、オーバーに受け取ったのかもしれません。ですが、前を向いて歩いていく二人がとても羨ましく見えた、この一点は確かに思った感情です。

あざみんルートの内容含め、学校での空間こそが"Garden"だと感じました。優しい言葉と雰囲気で形づくられる世界観が本当に良かったです。

瑠璃ルートについて
僕は瑠璃ルートが凍結されたということを、把握した上でプレイを始めたため、それほど大きなダメージは受けていません。ですが、プレイし終えての消化不良感から、やはり必要だと思いました。設定の変更が大きいため凍結ということでしたが、元々のプロットで出すべきだったのではないでしょうか。例え設定の違いがあったとしても、最初に構成したものが見てみたかったです。他ルートと矛盾が生じてしまったとしても、出さないよりはマシだったと思います。結局瑠璃は脇役になってしまったので…存在自体が薄れてしまって悲しい。
心が読めるという設定を活かした心理的物語、あるいは夢のような幻想的世界に入り込んでみたかったです。