"さくら"を中心に語られる、素晴らしい絵と音楽で彩られた物語
―桜の樹の下には死体が埋まっている。
有名な本の一節から始まるこの作品は、穏やかな雰囲気に包まれながら語られ、印象的なエンディングも多かったため、深い読了感に浸れました。まず、何よりもいいのが音楽が作る世界観だと思う。ピアノとバイオリンを中心とした曲はどれをとっても完成度が高く、"さくらむすび"という作品を構成する上で重要な役割を果たしていた。絵については、幼いキャラクターが多くて最初は戸惑ったんですが、はかなげな雰囲気を作るのに一役買ったのではないか?と思います。桜をテーマにした、どこか幻想的なお話だったので…。
続いてシナリオですが、これも本当に良かった。前述した音楽と絵を見事に活かしていたと思います。なかでも、さくらのシナリオが印象的。兄離れができない妹を、主人公がどう受け止めるか、というストーリーが展開していきましたね。さくらだけが二つエンディングがあり、一つは世界に受け入れられない関係ゆえに二人だけの世界で生きていく闇落ちED。もう一つが、二人で生きていくだけの力を持って、健全?に暮らしていくというものでした。後者の方がHAPPYエンドなんですが、やっぱりBADエンドの印象が強いです。主人公とさくらの意思が尊重された結末は、決して賢明な判断ではないと思うのですが、桜が散るようにきれいなEDだったと思います。
しかし、上記のエンドも印象的だったのですが、真のエンディングは紅葉ルートにあった思います、さくらにとっても。もみじルートでは、主人公がさくらの愛情を異常だと感じ、遠ざけるようにした結果、難はありましたがさくらと一種の境界線を引くことができていましたね。兄離れの過程も見どころの一つなんですが、その結果に対して、成長を感じられるシーンがいくつかあったのが一番のポイントだったと思います。例えば運動会前日の夜に、さくらが主人公から決別を告げられ大泣きするシーンがあるのですが、次の日の騎馬戦では果敢に相手騎手の鉢巻を奪います。他のルートでは終始逃げ回ったり守りの体制に入っていたので、決別後に初めて現れたさくらの強さに感動しました。
あとさくらの成長が伺えるのが、主人公とさくらの関係を語ったような演劇にありました。この演劇は、前に書いたさくらBADエンドのようなもので、現実世界で受け入れられない主人公とヒロインが桜の国(死後の世界?)に行くというお話でした。この物語を演劇部の紅葉と主人公が学園祭で演じます。劇の終演後に主人公がさくらに、このお話をどう思う?と聞いたところ、さくらは幸せになれないと思うからダメみたいなことを言います。このシーンが、BADエンドのような道もあったがゆえにさくらの成長を十分に感じさせられて、心に残りました。さくらの兄に対する想いが強すぎて、異常に見えるシーンが多々ありましたが、本当に兄妹離れが出来ていなかったのは主人公の方だと気付かされた場面でもありました。さくらの本当の強さが見られる紅葉ルートこそが、真のさくらエンドだと思っています。
正直、紅葉も可憐ちゃんも好きなんでまだまだ一杯書きたいんだけど、私にとっての"さくらむすび"は、さくらの成長物語だと思っているのでこれで終わります。
最後に、Cuffsさんの新作を首を長くして待ってます!!