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komさんのウィッチズガーデンの長文感想

ユーザー
kom
ゲーム
ウィッチズガーデン
ブランド
ういんどみるOasis
得点
99
参照数
1452

一言コメント

初めて買った18禁の、FD何枚も突っ込んで粗いドット絵に想像を膨らませた経験(ほとんどの方はわかりませんね)と比べても仕方ないことはわかっているが、それでもそんな話題から始めたくなるような衝撃を受けた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

2013.3.18
製作者にやっぱりどうにも失礼なコメントをしているのが気になったので、追記します。

世界観が良かったなあと、しばらく経った今でも思う。「カンパネラ」も良かったが、その世界に行ってみたいとまでは思わなかった。風城には行ってみたい。

脇役が本当に活かされていた。これは皆さんも否定しないのではないだろうか。ファンディスクが出るなら、主役はもちろんだが、彼女らのストーリーも見てみたい。ただ、脇役はあくまで主役を喰わない、という原則が守られているからこそ、の好感である。そのバランス感覚が良かった。
あ、悟朗との燃え展開(もちろんHなしでいいです)なんてあるといいなあ。

各分岐内の一貫性、また各分岐どうしの整合性に、違和感がなかった。少なくとも私には気にならないレベルだったということではあるが。どのルートにも納得したし、楽しめた。こういうところに手を抜かないのが、こ~ちゃ氏以下ういんどみるを信用する拠り所。
あやりトゥルーは…他が安心感のある大型クルーザーで変化を楽しみながらゴールを目指していると比喩するならば、こちらは高速ホバーで豪快にすっとばすイメージ。他のルートとの距離感はとても気持ち良く、高く評価するが、下の「伏線~」でも書いたとおり少々乱暴だったかもしれない。

Hシーンは正直、ういんどみる作品にそれほど期待していなかったが、今回は相当な力の入れようを感じた。シチュ設定や声の熱演はもちろんだが、CG(見せ方、アングル)に大きな進歩を感じた。どのキャラもなかなか使えたが、一番の印象と言えばえくれあの尻(笑)。あやりの「舌が敏感」という設定も良かったですね。

…以下は2012.12.27記入分…
ストーリーは他の方も仰る通り、「伏線でないのに伏線に見える」「伏線なのに回収しきれていない」という、ライターの癖を気にすればいくらでも突っ込める点が垣間見えるが、本作の主眼がE-moteである以上、失礼とは思いつつも積極的に論じることを避ける。


E-mote、これは今後、エロゲの仕様の1つとして定着するのだろうか。

AVGを名乗る作品においてはいわゆる立ち絵のキャラを用いた紙芝居の形式が長年踏襲され、キャラを飛び跳ねさせたり、せりふ途中でその表情を切り替えたりするマイナーチェンジ(それでも相当の手間だろう)があったものの、閉塞感を否定できない状況であった。
特にフルプライスの作品は、攻略対象の人数を増やしたり、特殊な趣向に振ったりという工夫も煮詰まり、エロシーンのアニメーションに関してはロープライスメーカーの方が磨きをかけているくらいの印象もあった。
そこに出現したE-mote。ういんどみるは作品に、積極的に一工夫を入れてくるメーカーだと思うが、その大真面目すぎるところがもしかしたら独善的なように捉えられることもあったように思う。
今回は見事、記念作品の名にふさわしい話題性を獲得した。
「表情」と一言に言い表せない、目線・口もと・傾き。
「せりふに合わせる」という考え方とは次元が違う、「せりふがなくても動かす」発想。
その結果、予測できない、予想以上の画面が次々に展開され、どんなにいい話でもやむなく生じる退屈を、何十分の一にも減らした。

さてこのE-mote、余計なお世話だと思いつつも心配がよぎる。
おそらくは相当の手間と費用をかけて作ったのではないか。
これは間違いなく進化と評してよいだろうが、ういんどみるを含むメーカーは、ユーザーの反応をどのように感じているのか。
E-moteの採用は、時代がかった言い方をすれば「ルビコン川を渡った」。
ユーザーは分不相応なほどに貪欲だ。
これが来年以降の新作の当たり前の技術というわけには、ならないだろうし、できないだろう。
しかし、少なくとも私は、「E-mote入り」という作品を気にしてしまう。そしてきっと、そういう方は多い。
「手間と時間」という想像が当たっているならば、小さなメーカーは採用できない。
資金力のあるメーカーも、余裕があるわけではない。
すなわち、これをきっかけに、例えばいわゆる「フルプライス」「ミドルプライス」「ロープライス」のすみわけが、加速することがあるかもしれないと思う。
素晴らしいサジェスチョンであり、可能性を感じるからこそ、衝撃も大きい。

その可能性について一つ思うのは、この技術が他のメーカーにも輸出され、旧作のリメイクの大きな流れが生じるかもしれないということだ。
もちろん生じないかもしれないけれど。
リメイクされるとしたら、90年代、00年代の名作とか。ストーリーや声優はそのままに、CGをE-mote含みで作り直すというアイデアだろうか。
そう考えると、作ってもらいたい作品はいくつか思い浮かぶ。勝手な妄想ではあるが。

ただ、この技術は作品を選ぶとも想像する。
今回、ウィッチズガーデンにおけるE-moteがこれだけの評価を得ているのは、
こ~ちゃ氏の絵との相性がいいという面が結構大きいのではないか?
絵師さんによってはこの機能が生きてこないかもしれない。

そして強く感じるのは、このウィッチズガーデンという作品は、
E-moteありきで作ったゲームなのだろうということだ。
つまり、E-moteを使うから脚本や演出において表現の制約により苦心するというストレスが少ない。
さらに、E-moteという手法によってストーリーが輝く。
そういう相乗効果が明らかである。


いろいろな意味で、この作品を出してくれたことは大きい・・・
そんな理由で、私はこの点数をつけて評価したい。