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kishi1さんのアトリの空と真鍮の月の長文感想

ユーザー
kishi1
ゲーム
アトリの空と真鍮の月
ブランド
TOPCAT
得点
87
参照数
3982

一言コメント

前作ファンならおそらく満足。是非とも最後まで。

長文感想

◆概要
廃校寸前の学校に転入するという田舎が舞台の時の王道(?)設定。
伝奇モノと呼ばれるジャンルらしいけど、伝奇モノの定義が自分には未だ良く分からない。。

前作はいい作品だということは覚えているが、実は細かい所はあまり覚えてなく、
その辺がちょっと不安ではあったが、体験版でクオリティの高さは確認出来たので購入。
舞台が田舎だったり、皆で山登りをしたり、堂島に嫌がらせを受けたり、
誰かさんの家が炎上したり、あるキャラがメイドになってみたりと前作を想起させるシーンが多い。

春・夏・秋・冬の4章から成るシナリオ構成も前作からのシステム。
季節が終わるごとにタイトル画面に戻るわけであるが、このシステムは、
ゲームのやめどころが分かりやすくて良い。
「今夜は夏まで読んだ、秋は明日やろう」と上手く区切れるので、
生活を壊さないという意味でユーザーに優しい気がする。

そんなわけで、春・夏やった感じでは前作と変わらないなーと思うのだが、
秋に入ってくると、"神"という超自然的な存在の話になってくる。
この話でいうところの"第三界"という世界からの存在に村が脅かされ、
それに主人公達が立ち向かうといった展開になっていく。
前作も超自然的な展開があったと思うけど、本作はかなりスケールアップされている。


◆1周目は本当にイミフ
1周目はいかにも本筋くさい神社の巫女さん『神室立花』ルートを選んだ。
春・夏は立花との甘く、素朴なシナリオに癒されていたが、
上記の"神"というものが現れ始めてから話についていけなくなってしまった。

テキストは相変わらずの緻密流なので、神の話が出てくると読むのがめんどくさくなり、
まあ、やって行くうちに分かるだろうと軽く読み飛ばしながら進めると、
ラストは、人々の設定やら目的とかがさっぱり分からずにそのままエンディングへ。
正直、詰め込みすぎて失敗作じゃね?と思った。


◆読書百篇意自ずから通ず
しかし、2周目以降、同じ説明を何回も聞くことで話がある程度理解できた。
全てのルートで、キャラや少し展開を変えつつ作品中のキーワードを教えてくれるので、
慣れてくると、こっちが主人公に"あとり"とは何かとか、教えたくなる。

本作はキャラによって少し展開が違うが、基本的な流れは全部同じ(文乃&月乃以外)。
これは手抜きでは無く、こういう作品の作り。
1本の大きなシナリオがあって、それぞれのキャラに既に役割が与えられており、
各キャラのルートに入る事によってそのキャラの動きが分かる。
こういうシナリオを上手く成立させている所が、このシリーズの魅力だと思う。

あとヒロインの設定のせいか、三葉ルートは立花ルートより読みやすい気がした。
もしかすると、最初にやるべきは三葉ルートかもしれない。


◆文乃&月乃ルートが特に面白い
4ヒロインのシナリオを終えると現れる、いわば裏ルート的な存在が文乃&月乃ルート。
大体話に慣れて、というか若干飽きも来ているところで、この話を最初の最初から反省
というのが、面白いシナリオだと思った。
シナリオも他の4人と大きく違うので、最後にして新鮮な感じで楽しめる。
是非とも、オールクリアを。


◆背景&BGMの素晴らしさ
山や海など自然の背景が多く、かなり綺麗。
また全体的にBGMも良く、特に冬シナリオの緊迫したシーンで流れる曲が良かった。
よって、全体的に質の高いゲームに仕上がっている。


◆エロ的には
実は、堀田さんですら良く覚えていなかった自分だが、前作のHシーンは結構覚えている。
前作は、堂島先生の大活躍により、エロ部分の仕上がりが凄かったw

本作の発売前に人物相関図を見て、

堂島→凌辱したい→湊八葉

がどうも気になっていた。

まきいづみ演じる八葉先生は、見た目年齢不詳の大人の女性(こういうキャラこそまきいづみの真骨頂)で、
体験版的には中々魅力的。
あと、前回の先生のHシーンが濃密だっただけに、今回も期待してみるのは致し方ないところ。

であるが、しかし、蓋を開けてみると、八葉先生のシーンはたった2つ。
1つは良かったが、もう1つは何かショボいw

今回の堂島は前作の兄であるが、しかし兄であるが故に年齢的なハンディがあり、
作中でも、「この年になると、1回出すと滅茶苦茶疲れるんじゃ」的なことを言い、
どうも、(精力的に)弟より劣る兄であった。

もう一人の年上キャラ、湊神那さんのシーンも2つ。
実は1つは八葉先生と重なっているので、二人合わせて3つ。
どうも、製作者側が年上キャラに冷たい感じがした。

また、メインのヒロイン達には前作のような凌辱は無い。
しかも、ヒロイン達は基本的に羞恥心が欠けていているので、
「わしは女子が恥ずかしがるのを見るのがすきなんじゃ!!」という堂島兄的な性癖を
持った方には少し、残念な事になっているかもしれない。

意図的に製作者側がエロは程々、シナリオの方に焦点を合わせようとしているのだと思う。


◆まとめ
スケールの大きな話ではあるが、そう胸が昂る展開にはならないし、
1枚絵は特に目を見張るものでもない、しかし、同じシナリオを別視点で観ながら、
1周ずつ面白くなっていく感じ、そして、BGMや背景などのクオリティの高さを売りにするところは、
相変わらずの玄人好みの感じ。
前作が面白かったので手に取ったという人は満足できるものだと思う。
自分も最初は余りの展開にあっけにとられてしまったたが、最後までやって満足だった。