学園設定がシナリオもキャラも薄っぺらにしている。複数ライターでのツギハギ感も強く、色々と惜しい。
ゲームの舞台は設定では国内最高のエリート校のはずが、話の展開上の都合もあるとはいえ学生はチンピラ率が非常に高い。
厳しい受験に耐え抜いた少年少女を、わずか6年間で集団リンチから強姦、誘拐、拉致等の犯罪行為に躊躇なく手を染めるゴロツキに育て上げているのだから、とんでもない学園である。
それでも卒業するだけで就職には有利らしい。
また生徒によっておこされる犯罪行為は実社会においても非常に悪質な類のものであるが、世界観的に放校処分=死罪なものだから、拉致監禁、強姦未遂を犯した人間でも処分は奉仕活動3ヶ月。
そういった負の部分で学園設定に引いてしまうと、メインシナリオの主権争いも非常に薄っぺらく感じる。
謀略と抗争(明確な描写はないが重傷者や死人も出ているだろう)の果てに権力を得たところで、お前ら後1年もしたら卒業だろうがと。
シナリオ的には群像劇としての出来は悪くなく、多少強引な詰め込み感はあるものの各キャラに見せ場も用意している。
悪役の配置も良く、各キャラを上手く使い切っている。(酉居に関しては改心して最後に仲間として登場、とかあっても良かった気はするが)
それだけに恋姫みたいに「とんでも女性化時代劇もの」として普通に作ってくれればと、惜しく思う。
また10周年記念作ということでよほど突貫で作ったのか、細かな荒も目立つ。
恋姫でも誰ともやらないうちに種馬扱いされていたりと、妙な点はあったが今回はより顕著である。
例えば、
目安箱の扱いが各シナリオライターごとに違っていて、統一されていない。奉行所よりも気軽に、というのが旨みのはずが、ただの奉行所直通の連絡ポストになっていたりする。
主人公宅の向かいのお店で開かれているはずの祝勝会の会場から、なぜか街中をのんびり歩いて帰宅する。これなんかは明らかに祝勝会を書いたライターとその直後の吉音とのシーンを書いたライターとの間での齟齬だろう。
ツギハギを間違えたのか、まだ登場もしていない敵キャラとの騒動が過去の事として描かれる。
などなど。
その他気になった点。
メインヒロインの吉音が、本当にただの大食いでお馬鹿な暴れん坊キャラから脱却できていない。
目安箱の活動を通して人望を得ていくわけだが、人助けよりも暴れ回りたいという欲求が先に立っている気がしてならない。
同様のキャラクター性の朱金や桃子の方が人物としては魅力的に感じられてしまう。
授業中その他寝まくるのは人に隠れてすごい努力をしているとか、そういった伏線かと思ったが、そんなことはなかった。
マイナス面ばかり書いたが、プレイ中は十分に楽しめたのも確か。
キャラクター的には水戸の3人組みとの絡みは良かった。
特に恋姫以来のキワモノ系男キャラは、恋姫にはなかった主人公以外の男との絡みもあって恋姫よりも個人的にはツボだった。