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kiicho1492さんの隷妃双奏の長文感想

ユーザー
kiicho1492
ゲーム
隷妃双奏
ブランド
雨傘日傘事務所
得点
70
参照数
240

一言コメント

エロと叙情と燃えのアンサンブル

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

エログロと人間ドラマとアクションのそれぞれが、お互いにまったく遠慮することなく真正面からぶつかり合っているところがとても面白い。エロについては隷妃となったエミリア、リザリアに対して降りかかる凄まじい陵辱がこれでもかと描きつつ、一方でエミリア、そして息子ディールの極限状態における愛情が描写され、ディールが母を奪った怪人ディアボロスとの壮絶な戦いが描かれるのだが、このどれもに作者はまるで手を抜くことがない。

陵辱エログロと、切ないといって良い親子の別離と、ケレンに満ちたバトル。それぞれの品質と言うか読み物としての面白さについては、個別に見ればより優れた作品と言うのは、おそらくはいくつもあるに違いない(ただの印象)。しかし、これらについてまったく同じようなレベルで熱意を傾け、それぞれの要素が主従の関係になく、完全に同格の要素として並べられているところに、感心と言うか「よくもまあここまで…」と言う感じがある。おそらく、作者の中には”描きたい”という欲望が凄まじく充溢しているのだろう。想像ではあるが、作者にとってエログロも切ない叙情もバトルアクションも、それぞれ同じくらいに好きなものであって、そうした自分の描きたいものを直接叩き込んだように思える。作者の中では、それらは完全に等価なものであり、貴賎はないのだろう。エロも叙情も燃えも、どれもまた作者にとっては重要なものなのだろう。

追記。ここに作者の非常に独特なスタンスが垣間見えるのだが…このあたりは『隷妃双奏』という作品の話からは逸脱してしまうので、別の機会にしたい。ただ一つ言えることは、作者にとって世界は極めて多層的かつ多面的なものであり、ある一つの側面から描いただけでは”不完全”であるという認識があるらしい。これは、今作の姉妹編にあたる『黒曜鏡の魔獣』にて、はっきりと描かれることになる。