評価しにくい作品。感想は前半ネタバレなし、後半ネタバレありで書いたが、心配な人は回避推奨。
前作プレイ済み。
推敲らしい推敲はしていない雑記なので、誤字脱字は勘弁。
クリアタイムは45時間ほど。
私のプレイスタイルは以下の通り。
・アドベンチャーパートは基本的にオートモードには頼らず、手動ボタン押し。
・99%以上のボイスは最後まで聞いた。
・戦闘回想(シナリオ進行上、必要のない雑魚戦)は一回しかしなかった。
シナリオは思ったより短かった。
前作のプレイ時間は覚えていないが、少なくとも六十時間は掛かった覚えがある。
まだ次回作のボリュームが不明とはいえ、本作と次回作に分けず一作に纏めることもできたんじゃないかと思えてしまった。
【シナリオ】
前作の完成度を鑑みると、本作は前作を超えたとは言えない。
最大の理由としては、物語が一作で完結していないからだ。
本作は起承転結のうち、転の部分で終わっている。
伏線をこれでもかとばらまき、物語最大の山場を迎えたところで終了となる。
三部作エロゲで例えるのなら、時計仕掛けのレイラインの二作目みたいな感じ。
本作の主人公は前作のハクオロさんより格好良くはないし、少々大人げないというか頼りない。
仕方がなかったとはいえ服の着方を間抜けなまでに間違える、集落に行けば案外簡単に自分の素性が判明すると楽観する、雑魚魔物と聞いて調子に乗り憂さを晴らそうとするなど、ハクオロと比べると幾分も落ち着きがない。
序盤におけるハクは以下のようなことを言う。
「喰らえ、我が正義の鉄槌を――ぬおりゃゃゃ!!」「……なぬ?」「――って、オぉイ、そっちかよ!」「ああ、働きたくないでござるよ……」「ちょ、おま――!?」
これらから分かるとおり、ハクオロさんのような主人公を期待している人は要注意。
が、それでもハクという主人公は人間的で好感は持てるし共感もできて、やるときにはきちんとやってくれる男だから安心できる。
能ある鷹は爪を隠す……とは少し違うものの、主人公としては良い部類。
シナリオ的には主人公の成長物語という側面もあるので、少々情けないというか怠け者な感じの人格にも意味はあるので、むしろ主人公はあの性格でなければ盛り上がらない。
物語全体のしてのテンポは悪くない。
中盤の日常パートで少々中だるみはするものの、基本的に楽しくサクサク進めていけるので、苦には感じなかった。
前作同様、登場人物たちは魅力に溢れていて、敵も味方もギャグ要員もしっかりと人間味のある設定と描写で素晴らしい。
ヒロインたちも皆可愛らしく、ハズレキャラが一人もいない。
このあたりはさすがというべきだった。
前作プレイ済みの人でなくとも物語は楽しめるが、やはり前作はアニメでも良いから知っていないと、十分に楽しめないところがあった。
物語の展開やラストは賛否両論ありそうだったが、私的には十分にアリな出来だった。
笑えるところも泣けるところもあって、しかし全体的にはコメディより。
おそらく次回作がシリアスよりになると思われるので、そう考えればバランスが良いと思える。
ただ、事前に三部作と告知されてはいたものの、次回作ありきな構成はやはり不満感を覚えずにはいられない。
【システム】
戦闘システムは前作から大幅に進化している。
が、戦闘回数が十七回と少ないので、折角の面白さを堪能しきれないままに物語が終わってしまう点は頂けない。
基本的にティアーズトゥティアラ2と同様の戦闘システムで、巻き戻し機能も健在。
ただ、前後左右や段差からの攻撃によるダメージ増減がなく、防御や回避がスキル性なので命中率の%表示もなく、そのあたりは凡百のSRPGと異なるので好みが分かれる。
シミュレート機能という行動予測と巻き戻し機能のおかげで、SRPGが苦手な人でもストレスフリーに遊べる仕様は良い。
そのくせ行動順の常時表示非表示の設定が戦闘毎にリセットされるので、毎回設定し直すのが面倒だった。
アドベンチャーパートのシステム面で気になったのはオートモードの速度。
最低速度でも結構早い。
私が読むの遅いだけかのしれないが、ちょうど読み終わるギリギリのタイミングで改行される。
もう少し遅めの調節も出来るようにして欲しかった。
とはいえ、ボイスのない地の文章がボイス付き文章より圧倒的に少ないので、そこまで困りはしなかった。
システム全体としては良くできていて、さすがはアクアプラスな完成度。
戦闘回数の少なさはクリア後のオマケシナリオで一応は補完できる。
が、これにはボイスがない……
オマケシナリオの戦闘回数は十六回だったと思う(たぶん)。
【音楽】
BGMは相変らず良好。
きちんと作風に合っているし、場面場面の使い方にも文句はない。
声優さんの演技も全体的にレベルが高く、声もキャラに合っていた。
発売前は主人公の声が藤原啓治さんとか合ってないんじゃないかと心配だったが、良い具合にマッチしていた。
前作ほど挿入歌に恵まれてはいないが、OP曲とED曲は素晴らしい。
サントラとSuaraさんのアルバムを購入したい程度には気に入った。
効果音についても不満点はなく、むしろ凄いと思ってしまった。
ささいな一場面の効果音もきちんと再現されていて、丁寧さが窺えた。
クリア後には声優さんのボイスメッセージが解放されて、声優さんの感想なんかが聞ける。
【グラフィック】
CGは全部で47枚と少なめだが、そのクオリティはいつも通り業界最高峰。
作画が崩れているものもなく、塗りも素晴らしい。
立ち絵のあるキャラがかなり多いくせに、全て一定以上の出来映えで安定感がある。
背景の種類も豊富で、とても丁寧に描かれているため、CGは全体的に一切の手抜きを感じなかった。
もう少しCG枚数が欲しかったところだが、3Dキャラによる表現があるので差し引き零だろう。
ゲームパート時の3D描写は前作とは比較にならないほど進化している。
PS4版だからかは不明だが、キャラもステージも予想以上のクオリティだった。
特に影の描写が繊細で綺麗すぎて、各キャラの輪郭がかなり細部まで影として反映されていて驚いた。
演出面も頑張っていて、二年前にPS3で発売したティアーズトゥティアラ2とは比べものにならない。
カメラワークが秀逸で、アニメ的な構図と演出が効果的に用いられていた。
大軍勢が登場するシーンや戦闘描写も凝っていて、このあたりは十年以上前の前作とは雲泥の差。
【総評】
もし購入をしようかどうか迷っている方はよく考えた方が良い。
本作には結がないので、次回作が発売される頃に購入した方が良いかもしれない。
公式によれば次回作は一年半から二年以内に必ずリリースするとのことなので、三作目が発売する頃には本作の内容もうろ覚えになっているはず。
続きが気になるフラストレーションを溜め込みたくない方や三作目を十分に楽しみたい方は三作目の発売時期まで我慢するのが賢明かもしれない。
あるいは、本作の内容程度ならば放送予定のアニメでも十分シナリオは把握できると思うので、アニメで済ませるのもアリだと思う。
私的に本作は前作を超えなかったとはいえ、それは予想できていたことなので不満はない。
そこらのアドベンチャーゲームよりシナリオは良いし、SRPG部分もよくできていて、概ね期待は満たしてくれた。
次回の三作目が待ち遠しいが、一年半から二年というのは長いと言わざるを得ない。
システムは本作でほぼ完成しているはずなので、続編ありきな内容で発売したのであれば、せめて来年の同時期に発売して欲しい。
という不満点も込みで、この点数を付けた。
決してつまらない作品ではないので、前作を知らない人でも気軽に楽しめる良作だと思う。
尚、リモートプレイによりPSVitaでもプレイしてみたが、やはり迫力が全然違った。
大画面の方がCGや戦闘画面、各見せ場も見栄えするので、PS3かPS4でプレイすることをオススメする。
以上、ネタバレなし感想。
ネタバレありは↓
============以下からネタバレ==============
シナリオは概ね満足したものの、不満点はある。
特に一番気になったのはラストのオシュトルVSヴライ戦。
まさに漢同士の激しい戦いが命懸けで繰り広げられていたところに、ネコネという自己中少女が乱入。
結果、オシュトルの起死回生の一撃が外れて、結局は相打ちのような形で戦いは終わってしまう。
相打ちというか、ヴライは十中八九生きているはずなので、結果的にオシュトルは勝負に勝って戦いに負けた感じか。
とにかく私はそのシーンを見て、オシュトルの死やタイトルの意味やハクの今後を思う前に、まずネコネの愚昧っぷりに呆れた。
世間一般では、女性は男性よりも感情を大切にするというような事がしばしば言われる。
だがそれは「感情を大切にする」のではなく、「自分の感情を大切にする」のだと私は思っている。
上記のシーンのネコネ然り、あの場面はハクも言っていたとおりオシュトル以外は邪魔者にしかならないにもかかわらず、ネコネ自身もハクの理性的な言葉は分かっているはずなのに、ネコネはオシュトルのもとへ駆けつけようとした。
それはオシュトルのためではなく、自分のためなのだ。
自分が我慢できないから、自分の感情を抑えていられないから、オシュトルの邪魔になることが分かっているのに、突っ走った。
冷静に自重していたハクとは対照的だ。
大人と子供という立場を抜きにしても、男女の行動原理の差異がよく表れていたと思う。
ネコネが乱入しなければ物語として盛り上がらないという事情は理解できるが、それにしたってあのシーンはもっとどうにかして欲しかった。
ライターが巧妙にどうしようもない状況を作り出して、ネコネに非がないような展開にもできたはずなのに……ああなった。
無論、次回作におけるネコネが反省して自責して、それを物語に上手く織り込んでいくのであれば、何の問題もないどころか良く練られたシナリオだと賞賛できる。
しかし、もし何の反省も自責もしていなかったら、本作におけるライターのご都合主義を非難せざるを得ず、ネコネという愛らしい少女の将来がクソ女になることが確定する。
まあ、うたわれるものだったら、きちんと各キャラの心情を描いていくので大丈夫だとは思いたいが……
なにせラストの偽オシュトル=ハクが民衆を焚きつけるシーンで、ネコネは「そうです、演じてあげるです。それが兄さまの最後のお願いだから」とか上から目線な物言いをしていた。
どうにも反省しているようにも自責しているようにも思えない。
ぶっちゃけ、間接的とはいえオシュトルを殺したのはネコネだからね?
ネコネは可愛いから好きだったけど、次回作の心理描写如何では大嫌いなキャラになってしまうかもしれない。
同様に、ラストのハクがクオンに正体を明かさない点もご都合的だと思えてしまう。
クオンや仲間になら正体を明かしても良いだろうに、ハクは黙ってクオンが去るのを見送った。
いくらクオンがトゥスクルという他国のヒトだからって、ネコネは知っているんだし、恩人なんだから教えるべきだろうに。
物語としては明かさない方が盛り上がるとはいえ、やはりライターが上手に何かしらの絶対に明かせない理由を盛り込んであげるべきだった。
覚悟が鈍るとか、正体露見の可能性が高まるとか、そういう理由に劣るほどクオンという存在はハクにとって小さかったのか?
プロット上の都合が表出しないように物語を自然に動かしていくのも、シナリオライターの仕事だろう。
まあ、コンテンツ消費型オタクの自分がそんな偉そうなこと言えたもんじゃないんだがね……
本作のサブタイトルは「偽りの仮面」だが、発売前の私は全く見当違いな予測をしていた。
偽りの仮面とはOP冒頭にも登場する四つの仮面(アクルカ)のことを指していると思っていた。
前作主人公ハクオロのオリジナル仮面を複製して作られたが故の、偽りの仮面だ
しかしそれは間違いで、ハクがオシュトルに成り代わるという意味での、偽りの仮面だったわけだが……
その展開は序盤で完全に読めてしまった。
ハクが悪戯でオシュトルの真似をする以前に、ハクとオシュトルが二人で屋形船に潜入した後の如何にもな語らい(死亡フラグ)で、オシュトルは死ぬなと確信してしまったし、それより遙か以前にウコン=オシュトルだと分かったときにラストの展開とサブタイトルの意味が分かってしまった。
なにせ発売前の私はハクとオシュトルの関係を前作のハクオロとディーのような関係だと予想していたのだ。
オシュトルの外見はハクにそっくりだし、声も似ていた(生憎と私は利根さんの声を全然知らなかったので、公式のサンプルボイスを藤原さんの演技声だと思い込んでいた)。
つまり暗愚な私の目が曇っていたからそう勘違いしていただけで、たぶん普通に賢い紳士諸兄にはウコン=オシュトルだと発売前から予想できていたと思う。
しかし私は作中でウコン=オシュトルだと気付き、ならどうしてハクとオシュトルはあんなにも似ているんだと考えると、自然とサブタイトルの意味が察せられた。
これもたぶん、普通に賢い紳士諸兄には発売前から予想できていたと思う。
もしこんな私が陥ったようなミスリードを発売前から公式が狙ってやっているとしたら、凄い。
いや、ないと思うけどさ……
私は前作の内容を色々と忘れていたせいで、クオンの正体に気付くのが随分と遅れた。
発売前の情報から前作キャラ(あるいはトゥスクル)の関係者だとは思っていたし、鉄扇の件もあってそれは間違いないと踏んでいた。
しかし、前作の内容をきちんと覚えていれば、発売前からクオンの正体なんて一目瞭然だったのだ。
前作のユズハがハクオロの子を産んだ件を、私はすっかり失念していた。
作中でのオボロの発言でようやく思い出し、ググって確証を得なければならないほど、完全に忘れていた。
前作はもう十年も前のものだし、アニメ版ではユズハの描写は色々カットされていたしね。
まあ、忘れていたおかげで新鮮な驚きを味わえたとはいえ、どうせなら最初からユズハとハクオロの子だと認識した上でプレイしていきたかった。
クオンの素性を知っているかいないかで、クオンどころか物語全体の見方が随分と変わると思う。
ハクは作中で色々なヒトから好かれるが、その理由が複雑だった。
被造物である獣耳なヒトたちは創造主である人間に対し、無意識的に服従するように造られている。
だから作中でハクに向けられる好意が果たして本当に好意なのか否か……
その点を考えると、ヒロインたちは未だしも、オシュトルとの友情にも疑問が残ってしまう。
二人の関係はなかなか良かったし、それ故にラストでは感動的な場面となるが、人間とヒトという関係性を思うと本当に100%純粋な友情ではないのだと思ってしまった。
というか前作でも思ったが、あの世界では獣耳や尻尾のない奴がいても疑問に思われないかね?
などという思いは確かにあるものの、それを込みでやはりラストのオシュトルは良かった。
最後の最後はオシュトルとしてではなく、ウコンとしてハクに仮面や姫様など諸々を託したのは評価できる。
作中では結局、ハクの本名が伏せられたままだった。
それ自体はべつに構わないし、全く問題ないどころか本名なんて明かされない方が良いのだが……
帝がハクの兄だと明かして弟と初めて相対したとき、帝は最初ハクの本名をヒロシだと言った。
結局は記憶が曖昧になっているが故の間違いなのだが、なぜわざわざシナリオライターはヒロシと言わせたのか。
ハクの声優である藤原啓治さんといえば、まず思い浮かぶのがクレヨンしんちゃんの野原ひろしだ。
単なる偶然というには出来過ぎていて、もうあの場面は中の人繋がりのパロディだとしか思えない。
そういう演出というかおふざけは、うたわれるものという作品では止めて欲しかった……
面白かったのはデコポンポ。
まさかあの「にゃも」系のキャラが本作にも出てくるとは予想外すぎた。
しかも声優は変わらず大川透さんだし。
本当に大川さんは演技が上手いと感心してしまった。
デコポンポとボコイナンテとマロロはギャグ要員だが、次回作ではかなり重要な立ち位置になりそうな気がしてならない。
というか、ギャグ要員だからこそのギャップ効果が期待できるので、なって欲しい。
まだ色々と思うところはあるが、全て書くとなると莫大な量になるので自重しておく。
おそらく次回作において物語の鍵を握るのはエントゥア(CV:米澤円)だろう。
ラストではウマに乗ってオシュトルを追い掛けていったので、たぶんオシュトル死亡とハクの成り代わりを目撃しているはず。
元敵国の将の娘という立場もあり、次回作ではそれなりに活躍すると思う。
黒幕は十中八九ウォシスだとは思うが……うたわれるものという作品は良くも悪くも予想の斜め上をいくことがあるので、確信しきれない。
次回作が本当に楽しみだ。
最後にこれだけは述べておきたい。
ティアーズトゥティアラ2のことだ。
うん、クリアまで72時間半も掛かった、あの凡作のことね。
あの作品と本作のクオリティを鑑みるに、たぶんTTT2はうたわれ2の犠牲になった。
明らかに力の入れようが段違いなのだ。
CG枚数も十枚くらい違うし、3Dグラや演出面、シナリオの完成度などを比べても、本作の方がかなりレベルが高い。
おそらくはリソースをうたわれ2の方に多く割いていたからだろう。
私はTTT2のレビューで「うたわれ2が今後のアクアプラス(ひいてはLeaf)の試金石になる」というようなことを述べたのだが、うたわれ2は期待感を満たしてくれた良作だった。
しかし、それはTTT2という貴い犠牲のもとにあるということを、特にTTT2未プレイのユーザーさんたちは忘れてはならない。