やや荒削りでツッコミどころもあったものの、素直に面白かった。とりあえず個別ルートのある完全版を出してくれ、頼むから
ミィィィィィィィナァァァァァァァッッッ!
私が一言でシンクライアントという作品を表現するとこうなる。
以下はほとんど雑記のようなものです。推敲なんて高尚なことはしていません。
エロゲにしては珍しい諜報もの、サスペンスノベル、そしてシュタゲのライターということだったが、概ね期待感は満たされた。
シナリオは前半・後半と別れており、どちらも終始休みなく疾走しているようで一気にプレイできた。
イベントCGや立ち絵は特に作画が崩れているようなところはなく、それなりに塗りも綺麗だったので満足。
システムは不自由なくプレイできたので文句の付けようはない。各キャラごとの音量調節はなかったが、私はいつも弄っていないので問題はなかった。
音楽は特にチープな曲もないし、雰囲気にも合っていたのでこちらも文句はない。
文章がライトノベルかそれ以上にしっかりとしていて安心して読めた。
とはいえやや硬い地の文が物語の雰囲気をしっかりと形作っていたのは分かっているものの、逆に冗長で蛇足という感も否めなかった。
あと難解な漢字が多かった。全文をスラスラと読んで意味を十全に把握するには明らかに漢検二級以上のレベルが要求される。
明眸皓歯、夕餉、薫陶を受ける、通奏低音、波濤、陳情、旭日昇天、迷妄、瀬踏み、暗中模索、
無辜、通暁、廉潔、隘路、天祐、知悉、惹句、魁偉、峻別、喘鳴、十把一絡げに、切歯扼腕、透徹、などなど……
読めなくはないが意味をしっかりと拾えない熟語もあったりしたのでググりながらやっていた。
他にもコールド・ボア・ショット(説明はされないが、銃身が冷えた状態で放つスナイパーの最初の一発のこと……らしい)とかでてきて、なんだそれってなった。
意外だったのは記憶喪失が前半部で終わってしまったということ。
終盤へと近づくにつれて徐々に記憶が戻ってくる、というオーソドックスなパターンを予想していただけに少し驚いた。
あれだけ記憶喪失主人公と宣伝していたのに、これでどうやって後半やっていくのかと不安になりもしたが……それは杞憂に終わってくれて一安心。
後半はなんだか某海外ドラマ――というか24を彷彿とさせるようなシナリオで、終始に渡って緊張感が続き、素直に面白いと感じた。
主人公の命令無視、独断専行、冴えた頭脳と非凡な勘、時に短気で優れた身体能力は当然のように併せ持つ。これはもう完全にジャック・バウアーだろ常考……
他にも主人公の同僚、上司、大統領ならぬ総理大臣、守るべき大切な人、テロリストや暗殺者などなど、まさにもう海外ドラマの世界だった。
終盤は色々と胸にくるものがあった。雫と姉、主人公とミーナ、この二つは泣けた。
ヒロインとしては個人的に雫よりもミーナが好きだった。
彼女の人間不信っぷりというか不器用さは共感できるし、妙に人間らしくて個人的には一番魅力的なキャラ。それだけに個別ルートを用意して欲しかった。
だがミーナは死の間際に自らの人生の無意味さに気が付き、それでも幸せな時間があったことが自覚して、その救われたような救われないような最後があってこそなので、個別ルートはそれでそれは無粋かもしれない。
それでも清濁併せ持ったミーナとのIFがあるのなら見てみたかった。
あとは義妹のシャルをもっと掘り下げて欲しかった。せっかくの英国美少女の魅力が十全に発揮されていなかったのは不満といえば不満。おまけHも強引すぎた……
色々と納得いかないところがあったりもするが、楽しくプレイできたので良し。
伏線が多いのでシンクライアントは二週目からが本番なのかもしれない。